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短歌タイムカプセル-伊藤一彦 感想

書肆侃侃房 出版 東直子佐藤弓生・千葉聡編著 「短歌タイムカプセル」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

伊藤一彦

 

三割がPTSDといふ帰還兵 残る七割の「正常」思ふ

 

 これは考えさせられますね。二重の意味があるのかなと考えました。まず、本当に七割も「正常」なのかっていう統計的な事実への疑問と、もう一つは戦争を経験した後に「正常」でいられることが異常なのではないかという視点です。「正常」って何なんだろう。本当に、経験する前の日常と全く同じように過ごせるものなんだろうか。人間の心の強さって何なんだろう。

 

超人の哲学よりも生涯を病身のニーチェおもふ はるさむ

 

 ニーチェは生涯病身だったのか。知らなかった。調べてみると、脳梅毒説があるようですね。この時代の前後は日本でも江戸庶民の50%くらいは感染してたとか言われてたみたいですし、ヨーロッパもすごそうです…。

 

 この人の歌は、このアンソロジーには載ってないのですが、

 

妻とゐて妻恋ふるこころをぐらしや雨しぶき降るみなづきの夜

 

という歌がすごく好きです。長く連れ添った相手にどこか後ろめたい、底知れない恋心を抱えるというところに語りつくせないロマンを感じます。

 

 

ぶっしつでぼくはできてる肉体はくるしむためのうつわとおもう (yuifall)

存在は耐えられないほど重いからOをなくしたワーテルストフ (yuifall)

 

 

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