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短歌タイムカプセル-内山晶太 感想

書肆侃侃房 出版 東直子佐藤弓生・千葉聡編著 「短歌タイムカプセル」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

 内山晶太

 

湯船ふかくに身をしずめおりこのからだハバロフスクにゆくこともなし

 

 これは、ハバロフスクという地名を意味のある固有名詞として使っているのでしょうか。それとも、単純に自分とは離れた地球上のどこかの一地点の象徴として使っているのでしょうか。ハバロフスクはロシアの都市で古くから日本とは交流があり、第二次世界大戦前後の因縁もある土地のようですね。近年ウラジオストクが観光地として注目されつつあるし、ハバロフスクも決して遠くはないので行くことは決して非現実的ではないですが、この地名を挙げて「いくこともなし」って言ってるのは、シベリア抑留か何かと関係があるのか、それともただ単に、肉体の持つ寿命は限られてるし、一生行かない場所も多いだろうなぁみたいなしみじみした感じなのかな。単純に、お風呂に入りながらふとハバロフスクって場所もあるっぽいけど多分一生行かねーだろうなー、みたいな感じかしら。

 

降る雨の夜の路面にうつりたる信号の赤を踏みたくて踏む

 

 これは情景が目に浮かびますね。信号だから多分横断歩道で、路面に滲んだ赤の光が落ちてて、踏むんだけど光は足の上に移動しちゃうんだよね。こういう瞬間ってスルーしてしまうことが多いけど立ち止まることもあって、その目に留まった一瞬がこうやって歌になってるのがいいなって思います。

 

 

ハンカチに異国の薫り匂い立ち一拍置いて恋うブダペスト (yuifall)

ビニール傘開けば落ちるはじめからぼくのものではなかった鍵が (yuifall)

 

 

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