左右社 出版 山田航編著 「桜前線開架宣言 Born after 1970 現代短歌日本代表」 感想の注意書きです。
内山晶太②
解説文にもあったのですが、この人の歌には身近な食べ物がよく出てきます。「エクレア」「小籠包」「ショートケーキ」「パン」「ポテトチップ」など。でもどれも全然おいしそうに食べてないんだよね。全体的にどうでもよさそうなの。栄養とか全く気を使ってないし、一日にこなさなきゃないタスクの一つに食事も含まれてるって感じです。
一日中眼を開けながら仕事してつめたいパンの袋をひらく
とかさぁ。多分コンビニで買った栄養皆無の菓子パンなんだろうな、という虚しい感じが。つめたいし、袋入りだし。
あと、ほとんど気持ちが語られないです。淡々と目に入ったものとか自分の行動とかを書いてるだけで、自分の感情と距離がある感じです。
ペイズリー柄のネクタイひとつもなく三十代は中盤に入る
っていうのも、ネクタイを締めるような仕事に就いたこともないまま三十代半ばになったな、っていう事実だけが淡々と語られていて、そこに悲しいとか虚しいとか自由だとかそういった感情が入ってない。この静かな諦念はある意味凄みだよなーと思いました。なんていうか、すごいリアルなんですよね。その浮き沈みのない感じを短歌にできるのってすごいなって思います。
短歌って、青春の文学とも言われているらしいのですが、やっぱり俳句や川柳なんかと比較すると気持ちの浮き沈み、例えば恋愛とかそういうことと相性がいい詩形なんだろうなーと思っていて、その中でこういう淡々とした日常を語り続けられるっていうことに凄みを感じました。
満員のバスの車内に立つ人と窓を隔てて目を見交わせり (yuifall)
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