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「一首鑑賞」-323

「一首鑑賞」の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

323.シルクロード展を出できて見る青葉嬰児のミイラ永遠(とわ)に乾ける

 (東洋)

 

 砂子屋書房「一首鑑賞」コーナーで棚木恒寿が紹介していました。

sunagoya.com

 斉藤斎藤『人の道、死ぬと町』に載っていた、「人体の不思議展」の歌を思い出しました。胎児の展示があった記憶があるのに再度行ってみたらどこにもなくて…みたいなエピソードがあった気がする。

 ここでは、シルクロード展から出て青葉が見えて、そして嬰児のミイラを思い出すということが詠われています。青葉は若い葉っぱという感じがするし、その瑞々しさと赤ちゃんのミイラとの対比にどきっとさせられます。しかし青葉はいずれ朽ちるけど、嬰児のミイラは永遠に乾いたまま残り続けるんですよね。

 そういえば私はドライフラワーとか造花とかプリザーブドフラワーが好きじゃなくて、埃をかぶって打ち捨てられるよりは萎れて枯れて捨てられた方がいいと思う派なのですが、ミイラはもっと手間をかけられて大事にされてるからなぁ。こういうの分かんなくなりますよね。ミイラになった嬰児は別にそうなることを望んだわけじゃないだろうけど、多分私が普通に生きて死ぬよりもずっと多くの人に感銘を与えている。でもそう思うこと自体がこっちのエゴだって気もする。

 

 しかし、鑑賞文読んでて、そんな風に陰鬱と読まなくてもいいんじゃないかと思いました。同作者の、他に引用されている歌はこんな感じです。

 

水族館に太く醜き紐を見て生きる喜びを忘れそうな日暮れ

 

憂鬱の漱石が書斎とび出してテニスをしたらと思わせる秋

 

なんていうか面白すぎてとても好きになりました。小説とか詩歌とかで笑える作品書ける人本当にすごいと思う。この水族館の歌なんて、見るたびニヤニヤしてしまいます。

 

 

ボルドーのペンで静脈なぞってた 行きつく先はすでに知ってた (yuifall)