「一首鑑賞」の注意書きです。
207.十人殺せば深まるみどり百人殺せばしたたるみどり安土のみどり
(永井陽子)
砂子屋書房「一首鑑賞」コーナーで江戸雪が紹介していました。
途中までは、チャップリン『殺人狂時代』の「一人を殺せば殺人者だが、百万人を殺せば英雄だ。殺人は数によって神聖化させられる」という言葉からの連想で世界大戦をイメージしていたのですが、「安土のみどり」で時代も場所も全然違っていたことが分かりました。安土城の安土です。
ちょっと前に『博士ちゃん』というTV番組を見ていて、織田信長はお城を作る時に墓石や石仏なども石段に使ったと知りました。安土城ではまさにそういう構造物が観察されるそうです。この歌の「殺せば」と関係があるのかどうかは分かりませんが、そういう、神も仏も信じないただ己あるのみという孤高の境地が「したたるみどり」なのかもしれないと思ったりもしました。
誰かの血で手が汚れる、あるいは地が洗われる、そこで一般的に想像される情景は「赤」だと思います。でもここでは「深まるみどり」「したたるみどり」と「みどり」が詠われます。その死こそが安土を豊穣にするということだろうか。例えば多くの屍の上に「日本統一」、平和が築かれるという読み方もあるのかもしれない。国の礎になるのだと。
本意は分かりません。でも、もしかしてこの「みどり」は今現在みている「安土のみどり」なのかもしれないと思いました。今目のまえにある「みどり」。過去に何百人が殺されたことで深まり、したたるみどり。
あとはこれは超余談ですが、もしかしたら日本語的に考えると、「あお」が「みどり」で(「青信号」「青菜」みたいな)、「みどり」は「くろ」なので(「みどりの黒髪」みたいな)、この「みどり」は「黒」かもしれない、とも思いました。
安土城行ってみたくなりました。実際に墓石やお地蔵様を使った石畳を歩いて、安土のみどりを見てみたいです。
ホメロスの蜂蜜色をしたたらせあなたが見上げる黒色の空 (yuifall)