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04x17 - Karma 感想

 POI感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

 この回、泣いたよ。フィンチの過去の辛さを思って。

 今回の対象者は犯罪被害者専門のカウンセラーで、フィンチは患者として通いながら、限りなく事実に近いエピソードを打ち明けます。親友の死について…。しかしその直後にフィンチの偽装をおちょくるファスコとリースのシーンが入るので、シリアスなんだかギャグなんだか分からん。

 

Hey, glasses, tell him about all your nut ball friends.

なあメガネ、彼にあんたのイカレた仲間のこと話せよ

Maybe he can give you guys a group therapy discount.

多分彼はあんたたちに団体割引してくれるだろうな

I think by now, you count as one of Harold's nut ball friends, Lionel.

あのなあ、今じゃお前もハロルドのイカレた仲間の一人だぞ、ライオネル

With you people, there's no other kind.

あんたたちのことだよ、俺は入らない

 

 笑えたけどね。でもフィンチはあんな風に2人が聞いてるとこでネイサンの話なんか(多少嘘でも)できるのかなあ。後のシーンでリースにカウンセリングについて尋ねて「守秘義務が」って断られてるのもあって、フィンチの辛い話だって誰かに聞かせるもんじゃないのでは、って思ったけど。

 

 話はそれほど込み入ってはいないです。対象者のエドワーズは自分の患者に加害した相手をハメて刑務所にぶち込むという自警団的行為をずっと続けていることが分かります。今までは誰も殺してはいないのですが、番号が出たということは死者が出るということ。監視している間に、彼の奥さんを殺した罪で服役中のモリスが仮釈放になっていることが分かります。

 しかし、モリスが奥さんを殺した犯人なのかははっきりしない。状況証拠しかなく、しかもモリスが犯行現場から立ち去るのを見たと証言したのはエドワーズ本人だった。更に、モリスは一貫して犯行を否認していて、懲役7年の刑を受けたことでエドワーズを恨んでいる。この2人のどちらかが加害者でどちらかが被害者になると考え、監視を強めます。

 エドワーズがモリスを殺すのだろうと考えたフィンチ、ファスコ、リースですが、ここで3人のスタンスの違いが明らかになる。フィンチは絶対に止めるべきと主張します。そもそもモリスの犯行かどうかはっきりしないし、そうであったとしても私刑は論外であると。ファスコは「放っておけばいい」と言います。エドワーズは復讐を遂げられて、殺人犯のモリスが死ぬならそれでいいと。リースはファスコ寄り。自分自身がかつて私刑を行ったことがあるからです。しかも、明らかに状況証拠だけで人を(多分)殺している。

 今回ファスコのスタンスにちょっと違和感がある。S3E10でシモンズを殺さず逮捕したファスコが「殺せばいい」って言うかなぁ。

 

 まあですがファスコのことはとりあえずよくて、今回はフィンチ、リース、エドワーズの3人の話です。3人の、かつて愛した人を失った男が、その死とどう向き合ったかという話。エドワーズと妻の状況にリースは自分とジェシカを重ねてるし、フィンチはネイサンにまつわる出来事を重ねている。

*ところで、以下、私はリースがジェシカの夫ピーターを「殺した」こと前提で記載してるので、殺していないと思っている方はそのあたりを脳内で修飾してお読みください。

 

 エドワーズが何をするつもりなのか確かめるため追うリースと、インカム越しに会話するフィンチ。

 

Edwards has been planning this for years.

エドワーズはこれを何年も計画してきている

He can't move on. He needs closure.

彼は前に進むことができない。気持ちの区切りが必要なんだ

Vengeance will not bring closure.

復讐は心の区切りをもたらしはしない

You should know that by now.

君はそれを知っているべきだろう

It didn't for Carter, it didn't for Shaw, and it won't bring Edwards any peace if he's targeted the wrong man.

カーターについても、ショウについても、それにエドワーズにも、彼が間違った相手をターゲットにしていたら何の救いにもならない

Finch, the law doesn't always work.

フィンチ、法律は万能じゃない

Edwards is correcting an injustice.

彼は不正を正そうとしているんだ

If we deny him this, it will destroy him.

もしこれを否定したら、彼は壊れてしまう

Don't make the mistake of assuming that you're the only person that's been down this path, Mr. Reese.

君がその道を通ってきたたった一人の人間だと思う間違いは犯さないでくれ、リース君

So tell me, Finch, where did that path take you?

それじゃあフィンチ、あんたの道はどこへ続いていたんだ?

 

 S4のリースはほんと分かってないよ。一体何なのほんと。カーターやショウのことだけじゃない、ジェシカのことだって。ジェシカの夫を殺して自分がどうなったかなぜ思い出せないの?あれが救いだったのか?絶対に違う。あれをやったからこそリースは壊れてしまって、壊れたリースを拾い上げて助け出してくれたのはフィンチと、「人助け」の仕事だったはず。どうしてS1の時に分かっていたことを忘れてしまうの?カーターの時、クインの目の前でフィンチに何を言われたのか覚えていないの?

 私、リースのことが分からないです。S4に入って、どうしてこんなにフィンチと心の距離が遠くなってしまったんだろう。You should know that by now. と私も言いたいです。バディからチームになっても、ストーリーがどんなに壮大になって辻褄が合わなくなっても、リースが誰と恋愛してても、この2人の心が通じ合っていないことに比べたら全然耐えられるのに。S4半ばからラストあたりまでずっと、リースがフィンチの心情を顧みないので観ていて心えぐられます。

 

 この後リースは心の迷いからエドワーズに撒かれてしまい、フィンチはモリスの携帯を追跡。送られてきたメールから、NY植物園で会うことを突き止めます。「街の反対側だ」と言うリースに、「私が近い」とフィンチ。「危険だぞ」とリースは警告するのですが、「だから止めるべきだったんだ」とフィンチは苛立って返します。ほんと、これが原因でフィンチが撃たれたりなんだりしたらどうするつもりだったわけ?

 

 合間にフィンチのフラッシュバックが挟まります。ネイサンを失った後、関わった政府関係者を殺そうと決意していたフィンチ。かつてS3E10で「実は大それたことを計画している」とカウンセラーに打ち明けているシーンがあり、「大それたこと」って何だろうとずっと考えていたのですが(最初は自殺、もしくは「番号」の仕事のことかと思ってた)、この計画だったことが分かります。

 それにしてもフィンチがアリシアを(多分成功すればその後デントン・ウィークスも)殺そうとしていた設定っていつから決まってたのだろう。少なくともS3時点では決まってたと思うのですが、S1から構想はあったのかなあ。そう思うとアリシアがS1ラストで「ネイサンはマシンのせいで殺された」とフィンチを殺そうとするのは皮肉だし、ルートがこの2人をフィンチの目の前で殺したのも皮肉な巡りあわせです。

 フィンチはネイサンの死は自分のせいだと思う一方で、誰かのせいにしたいとも思ってる。そして、政府に責任があることを知っている。フィンチがマシンの関係者として掴んでいるのは、S1で分かる限りではアリシアとデントンです。特にアリシアは直接ネイサンと関わる機会が多かった。だから最初のターゲットに選んだのだと推定できる。ただ、ネイサンとアリシアの会話で「マシンについて知っているのは7人(フィンチも入れて8人)」とあったので、フィンチもそのことは知っていたと思われます。だから残り4人も全員見つけて殺すつもりだったのかもしれません。

 フィンチがアリシアに最初の脅しをかけた後、マシンがフィンチの番号を出します。この時通知された名前は「ハロルド・マーティン」だった。死んだはずのこの名前をマシンが出したのはなぜだろう。生きていてしかもネイサンと縁があるハロルド・レンではなく。グレースの恋人であるあなたが人を殺すなんてやめて、というメッセージだったのだろうか。

 フィンチが計画を実行しようと進める間に、何度も携帯電話や公衆電話が鳴り、フィンチは「君だろう」とカメラに呼びかけます。「声を持たない君には何もできない」と。

 

 彼の計画を止めたのはマシンではなく、アリシアの言葉だった。

 

You have to understand, Nathan, he was a dear friend.

あなたは分かってない。ネイサンは、彼は親しい友達だった

I didn't know anything about his murder.

彼の死について何も知らなかったの

Do you even believe yourself?

お前は自分自身のことさえ信じているのか?

You work in intelligence? How can you not know?

お前は諜報機関で働いている。知らなかったなどということはあり得ない

No. I--

知らなかった…

The second it happened, I knew it, but I didn't know they were gonna do it.

それが起きた後知ったわ。でも彼らがそうするだなんてことは知らなかった

I had no idea.

思いもしなかった

You're a trained liar.

お前は訓練された嘘つきだ

How will I ever know if you're telling the truth?

お前が真実を話していると私がどうやって知りうるのだ?

You won't.

あなたが知ることはない

But I am.

でも私は知っている

Everything we did was to make the world a safer place, but we strayed from the path. I admit it.

私たちのしたことはすべて世界を平和な場所にしようとしてしたことだった。でも道を逸れていた。認めるわ

I have so many regrets, but it's grown so big, and we're so... so small.

たくさんの後悔はある。でもそれは大きくなりすぎて、私たちはとても…とても無力なの

I don't know who you are or how you know all this, but maybe you're right.

あなたが誰なのか、どうやって知ったのかは分からない。でも、多分あなたは正しいのね

Maybe Nathan's death, it is my fault.

ネイサンが死んだのは、私のせいかもしれない

I saw the signs. I ignored them.

徴候はあったのに無視していたの

Maybe I deserve this.

死に値するわ

 

 多分、アリシアはネイサンが好きだったんだと思う。S1からそんな感じしてたよね。

 フィンチはアリシアの言葉を聞いて、復讐を思いとどまります。友人として深くネイサンを愛していたこと、マシンのために政府がどこまでするか知りえなかったこと、マシンに関わる事態が大きくなりすぎたこと、ネイサンの死の兆候を無視していたこと、これらは全て自分自身に重なってくる。

 フィンチはこの時、アリシアの言葉を信じたというよりも、彼女が本当のことを言っているのか嘘をついているのかどちらでもいいと思ったんだと思う。どちらにせよ、自分はこの女性を殺すことなどできない。アリシアを殺すことは救済にはなり得ないし、心の区切りにもならない。彼女を殺すことは自分を殺すことと同じです。「それは私の過ちだったかもしれない、私は死に値する」。

 ネイサンの死だけじゃなく、アリシアの言葉がきっかけでフィンチは人助けを始めたのかなって思いました。

 そして後から考えると、アリシアがウィルの「ハロルドおじさん。父さんの親友です。本当に会ったことない?」の一言でフィンチの存在に気付いたのは、この件があったからかもしれないって思いました。

 

 NY植物園はエドワーズと奥さんとの出会いの場所です。エドワーズはまさにその場所で、モリスの犯行に見せかけて自殺しようとしていました。フィンチが止めに入ります。

 

Harold, what are you doing here?

ハロルド、ここで何をしている?

I may not have been completely honest with you in our session, but you were right.

私はあなたとのセッションで完全には正直でなかったかもしれませんが、あなたは正しかった

We've both been down the same road, but if there's one thing I've learned, it's that revenge will never bring you closure.

私たちは同じ道を歩んできていました、でも私がそこで一つ学んだことがあるとすれば、復讐はあなたの心の区切りには決してならないということです

This is where you met. Where you proposed.

ここはあなたたちが出会った場所、あなたが奥さんにプロポーズした場所だ

Why would you desecrate her memory by committing murder in the place where you were happiest?

なぜあなたは、あなたが最も幸福だったこの場所で殺人を犯すことで彼女の思い出を汚そうとするのですか?

Who said anything about murder?

誰が殺人をすると言った?

When they search his apartment, they'll find evidence he's been plotting to kill me.

彼のアパートを調べれば、彼が私を殺そうとして付け回していた証拠が見つかるだろう

With the gunshot residue on his hands, there won't be any doubt he pulled the trigger.

彼の手には銃撃の証拠が残っているし、彼が引き金を引いたことに間違いない

They'll put you away for the rest of your life, and there won't be anything you can do to stop it.

あんたの人生はこれで終わりだ、もう決して止められない

After I pull the trigger, tell them he shot me.

私が引き金を引いたら、彼が私を撃ったと言ってくれ

Do that, and then everything will fall into place.

そうすれば全ては丸く収まるんだ

Harold, whoever you are, I'm begging you, let me have this.

ハロルド、君が誰であれお願いするよ、私の願いを叶えてくれ

Harold.

ハロルド

Move away.

離れろ

John, don't shoot.

ジョン、撃たないでくれ

Shane, listen to me.

シェーン、聞いてほしい

I watched someone close to me die before my eyes.

私は自分の目の前で親しい人が死ぬのを見た

Like you, I thought I needed to make sure that everyone responsible for that murder paid with their life, and that almost did it.

あなたのように、その殺人に責任のある全員が命で償うべきだと考え、ほとんど実行するところだった

I had my target, I had my finger on the trigger, but I realized that as certain as I was that these people deserved retribution, that life was infinitely more complicated than that.

ターゲットを捉え、引き金に指をかけた、しかしそれらの人々が罰を受けるにふさわしいと思うと同じくらい確かに、人生は無限に複雑であることを悟った

You may never know what happened on that day, but if you do this, if you condemn his life, there will be no doubt what you did to him.

その日何が起きたのかあなたは決して知ることはない、でももしあなたがこれをすれば、あなたが彼の人生に有罪を宣告すれば、あなたが彼にしたことは疑いようがなくなる

Even when your world stops, the world around you keeps moving forward, and you will too, but if you die here, that bright, beautiful, lively woman that fell in love with you here will forever die with you.

あなたの世界が終わっても、あなたの周りの世界は前に進み続ける。そしてあなたもそうだ。しかしもしあなたがここで死ねば、あなたのことを愛した、輝く、美しい、陽気な女性さえもあなたと一緒にここで死ぬことになる

I know you don't want that.

あなたはそんなことは望まないはずだ

 

 ネイサンはIFTの仕事を投げうってまで、マシンの出してくる「無用」番号の人たちの命を救おうとしていた。ネイサンとは大学時代から(30年くらい?)の絆があり、きっと数えきれないほど多くの思い出があっただろう。アリシアを殺すことで彼の思い出を汚すのか、グレースを愛し彼女に愛されたハロルド・マーティンがそれをするのか、フィンチは犯行の前も自問自答したはず。そして実行を諦めます。復讐は何にもならない。ネイサンが死んだのはアリシア一人だけの責任でも、政府の人間だけの責任でもない。でもここでアリシアを殺せばそれは自分の責任になる。

 会話の途中でリースが植物園に入ってきます。緊迫した状況を読み取り、フィンチを守ろうとして銃を構えるリースに「ジョン、撃たないで」と呼びかけます。そして「自分も人を殺すところだった、まさに引き金に指をかけた」と語るフィンチ。これはリースへ向けた言葉でもあるはず。リースはそれを聞いてわずかに表情を変えます。今まで一貫してカーターの時もショウの時も復讐を否定してきたフィンチにそんな過去があったことを初めて知ったから。

 リースだってそうだったはず。彼女のためと自分に言い訳をしてジェシカを手放し、婚約した彼女に「待っててほしいと言ってくれたら待つ」とまで言われたのにその一言を口にできず、電話でのSOSにも駆けつけられなかった。彼女が死んだのは自分のせいでもあるとずっと思い続けてきたはず。ピーターを殺したことで救われはしなかったし、ジェシカのことで、更にはピーターを殺したことそのものによって今でも苦しみ続けているのもリースです。彼を殺すことは自分を殺すことと同じではなかったのか。「それは私の過ちだったかもしれない、私は死に値する」。

 それなのになぜエドワーズを止めることを躊躇ったのか、復讐しないと先には進めないなどと言ったのか。

 

 別に2人で向き合って打ち明け話をして分かり合ってほしいなんて思わない。でも今までずっとこうやって、対象者を救うことでお互いの人生を分け合って分かり合って救われてきたはず。それがS1からS3までは描かれてきた。なのにS4になってどうして、リースはフィンチのことを思いやらず、カウンセリングで自分の気持ちを打ち明けるなんてことになっているんだろうか。ほんとやりきれないです。

 

 最後、エドワーズが自殺を諦めて前に進もうとする様子が描かれます。一方、モリスが本当に犯人だったのかは最後まで分からない。現実は複雑で、物事の原因が単一であることの方が少ないのだろう。その現実と折り合っていかなくてはいけない。

 フィンチはリースに、「でももし彼がこれから何かをしようとしたら、我々が止めよう」と言います。リースが納得したかどうかは分からない。フィンチの「人を殺しそうになった」発言についてのコメントもありません。

 これほどのエピソードを描いておきながらリースとフィンチの会話が少なすぎて何とも…。

 

 一方、リースはこのエピソードを通じてアイリスと距離を詰めているようなそうでもないような…。これ、全然分かんないんだよね。セラピーで会ってること自体は描写されるけど内容はほとんど語られないし、ジェシカのことも「悲しみ方が分からない」としか言わないし、その後幻のカーターに心を打ち明ける形でこの辺が描写されるので、カウンセリングの意味…ってなる。特にこの回、フィンチがリースにかなり重大な打ち明け話をした回だったから、それに対してリースが何の反応もないのがちょっとよく分からない。恋愛ネタ全然いらないけど、ここまでのことを描くならせめて、それをきっかけにアイリスに心のうちを打ち明ける、くらいの進展はあってもよかったような…。

 結局アイリスにフィンチのことを話せないから進展しようがないのかなって気もします。過去に愛していたジェシカやカーターのことは話せても、今現在大切にしているフィンチやショウについては語れないわけだし。

 

POI:シェーン・エドワース(加害者?)

本編:メールの履歴によると2015年3月2日頃

フラッシュバック:2010年、フィンチ(ネイサンが死んだ後)