いろいろ感想を書いてみるブログ

短歌と洋楽和訳メインのブログで、海外ドラマ感想もあります

「一首鑑賞」-161

「一首鑑賞」の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

161.業務用コーンフレーク買って食べ切れなかったの良かったなって

 (川村有史)

 

砂子屋書房「一首鑑賞」で永井祐が取り上げていました。

sunagoya.com

 この歌を自分がなぜピックアップしようと思ったのか正直思い出せません…。実は前回記事から半年くらい間が空いてます。でも、面白いのでそのまま行こうと思います。

 

 永井祐の感想が全体的にとても面白いです。「良かったな」に重点を置いてそれを突き詰めて色々と書いています。

 歌の事実としては、何らかの理由で業務用のコーンフレークを買ったんだけど結局食べきれなくて、それを「良かった」って思ってる。ってことだと思います。多分食べきるの無理って思いながらも買ってみたいという気持ちを我慢しなかったことも、やっぱり食べきるの無理って思った時に無理して食べきらなかったことも、良かったなって振り返っているように感じます。

 

 これは生き様の話なんですかね。初めから「あんなの食べきれないよ」って思って買わないのとか、単調な味だししけってきておいしくなくなっても「もったいない」って食べきろうとするのとは違うと。そういう自分のこと分かってて衒いなく肯定する姿勢が、いいなって思いました。

 

 「そういう自分」って書いたけど、この「そういう」も色んな受け止め方がありそうです。「やってみよう」と感じたことに素直ともいえるし、「失敗すると分かっていて失敗することを確かめただけの結果になってもやってよかった」と言っているだけにも思えるし、逆に「失敗を恐れて何もしないなんてことはない」とも思えるし。こういうカジュアルな挑戦をたくさんしていて、モノによっては「業務用コーンフレーク買って意外に簡単に全部食べきれちゃった」っていうこともあるのかもしれない。

 こういう人にとって、「良くなかった」ことってあるのかな。もしかしたら「やらなかった」ことが「良くなかった」ということなのかもしれない。でもやらなかったらやらなかったで、やらなかったこと自体を忘れてそうでもあります。

 

 だけど、誰にとってもこの「業務用コーンフレーク」的なものはあって、実はみんなそれを肯定して生きているような気もします。自己正当化というか。この歌はそういう捉え方もできます。誰だって買ってしまったものを「失敗」とは受け止めたくないし、「これはこれでまあよかった」って思うこと、よくあるのでは。

 

 まあ色々書きましたが、全ての野暮な説明を超えてフラットなノリで存在するこの感じが今どきっぽいです。

 

 

履歴書に載せない分かりやすい長所(例)舌ピアスみたいなやつね (yuifall)