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04x09 - The Devil You Know 感想

 POI感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

 ショウ離脱に向けてルート&ショウのラブが加速してくる一方で、イライアスとアンソニーが熱いです。

 

 この回最初見た時、BL漫画『CANIS THE SPEAKER』(Zakk) の世界かよ!って戦慄したわ。孤独な少年3人が親友になり、一人はマフィアのボス、一人はその腹心、もう一人は会計士になって、裏と表からNYを牛耳る、という…。すごいブロマンス…。

 POI公式は男女の恋愛を描くのはマジで下手くそだとしか思えないが、男同士、女同士の絆や、性別を超えた仲間の絆を描くのはうまいなって思う。カーターとリース、カーターとファスコ、ルートとフィンチ、ショウとファスコ、リースとカーラなど、男女の魅力的な組み合わせはいくつもあります。

 今回はルートとショウ、イライアスとアンソニー、イライアスとリース&フィンチ、という同性同士の熱い絆が描かれました。

 

 冒頭、サマリタンのエージェントに見つかって追われる身となったショウをルートが確保します。うまく死角を移動しながら、引っ越しトラック内へ避難。薄暗がりで後ろから抱きしめてくるルートを冷たくあしらうショウ。「確保したわ、ハリー」「ショウさん、大丈夫か?」「その大丈夫っていうのが、ケツを蹴っ飛ばす準備ができてるかってことならね」っていうショウの台詞、字幕ではセクハラ中のルートのことを言っているように見えたのですが、吹替では「あの金髪女をぶっ飛ばせるほど大丈夫」になってたので、マルティーヌのこと?

 ちなみに原文では

 

If by "Okay," you mean, "Ready to kick some righteous ass."

もしあなたが言う「大丈夫」って言うのが「正しいケツを蹴っ飛ばす準備ができてる」って意味ならね

 

になってて、どっちのことかはよく分かりません。

 

 2人はファスコの手助けで無事トラックを脱出し、カメラを避けて地下鉄に戻ろうとします。

 

Look, I get that you're frustrated, angry, and probably a little bit scared--

ねえ、あなたは不満だし、怒ってるし、多分ちょっと怖いっていうのは分かるわ…

Oh, please. I'm not scared.

ねえ、あたしは怖くなんてないよ

Well, maybe you should be.

そう?だったら怖がってよ

Because you almost died back there.

あなたはあの時死ぬところだった

And Samaritan's operatives are just getting smarter and faster.

サマリタンの活動はもっと速く、賢くなるわ

So while you may not be scared about what could happen to you the next time, other people are.

あなたに次に起こることがあなたは怖くないかもしれないけど、他の人は怖いの

People who care for you.

あなたを大切に思ってるから

Try to remember that.

それを分かってよ

 

 ルートはショウを守りたくて必死です。この2人の関係くらい、他の恋愛も丁寧に描いてくれていたら…(しつこいけど…)。ルートは思い込み激しいタイプだし、初対面からショウのこと気に入ってたのが分かる。運命を感じてたんだと思う。何度も一緒に戦って、どんどん思いは募っていきます。一方ショウはもともとルートのことをただの得体の知れない女としか思ってなかった。でもS3を通じて、ルートを頼ったり、彼女の危機に駆けつけたり、どこか「私がついてなきゃ」みたいに感じる言動が増えてきた。S2後半からS4半ばまで、長い時間をかけて2人の距離が近付いていく様子がしっかり描かれてたと思う。

 その一方でS3前半の急なリース→カーターのメロドラマ感、S4での唐突なアイリスとの恋愛、マシンが「相性がいい」って判断しただけでフィンチの永遠の女神となってしまうグレース、と、何で男女の恋愛の描き方は適当なの??男女だからまあほっといても恋くらいするだろうみたいに、正常化バイアスにあぐらをかいているとしか思えん…。

 

 リースは番号対象者、イライアスを守るために向かいますが、すでにイライアスの手下や商売相手はブラザーフッドに抱き込まれていた。イライアスとスカーフェイスは「ブルースまで裏切ったのか?」とブルースのオフィスに向かいます。最上階の金庫を守ろうとするイライアス、そこにブラザーフッドが追いつき、スカーフェイスが撃たれて捕まります。リースはイライアスと2人で廃墟を逃げ回ることに。

 いくつも部屋のあるぼろぼろの建物をギャングに追われながら逃げ回る、という、リースとイライアスの最初の出会いを思い出させる演出です。フィンチはファスコにバックアップを頼もうとするのですが、ファスコのところにサマリタンのエージェントがやってきたことに気づき、ファスコとリースの2人を危険から遠ざけるためにファスコに手助けを頼むことを諦めます。自ら現場へ向かうフィンチ。その間に、ショウから通信が入ります。

「新しい番号が出たのね?あたしも行くわ」「問題外だ、ショウさん」「ハロルド!」「通話を切るよ」

 仕事から外されたショウは激昂します。

「フィンチ!あいつなんなの?」「あなたを守ろうとしてるのよ」「守る?守られる必要なんてない。あたしが守る方だよ!」

 この時の台詞かっこよかったけど、今まで何度も「一人バレれば全員が危険」と言われているのになー。ルートはショウを騙し、リースの援護に連れて行くと見せかけて睡眠薬で眠らせます。

「あんたを殺す」「好きにしてもいいのよ…、お昼寝の後でね」

って会話よかった♡

 

 一方、フィンチはリースの援護に向かいます。「ファスコはどうなった?」と聞かれ、

 

The detective is unavailable.

刑事さんは来られない

You have me. I'm down the street.

私がいる。通りの向こうにいる。

 

 この時のYou have me. にときめく(笑)。一般的な英語表現なんだということは分かるけどさぁ。「出口が知りたい」というリースに、「ペントハウスWifiをレーダー代わりに…」なんたらかんたら、と説明するフィンチ。この説明長いとこいつも大好き。で、「どの出口もお勧めできない」と。

 

Just give me your best bad option then.

それなら一番いい「悪い選択肢」を教えてくれればいい

 

ってリースの台詞笑った。笑えるシーンじゃないけど。

 

 イライアスとリースはそこへ向かいながら、ぽつぽつと会話を交わします。イライアスがアンソニーと更生施設で育ったこと。アンソニーは母親に暴力を振るう父親を殺して少年院に入っていたこと。傷はその時に負ったものだということ。「すぐに気が合った」とイライアスは笑います。自分も、父親に母親を殺されているから。そしてアンソニーと一緒に、自分自身も父親を殺している。「私とアンソニーのためにありがとう」というイライアスに、リースは「アンソニーという名前さえ初めて聞いた。俺はずっと彼をスカーフェイスと思っていた」と返します。

 フィンチの待つ出口から出たところで、イライアスはリースに銃を突きつけます。

 

John, I'm so sorry.

ジョン、すまないね

Damn it, Elias.

この野郎、イライアス

I'd prefer not to shoot you, John.

私は君を撃たない方が好きだね、ジョン

We had a plan.

計画があった

Two plans, actually.

2つの計画がね、実のところ

Yours, where you save my life.

君の計画は、私の命を救うこと

And mine, where I save yours.

そして私の計画は、君の命を救うこと

Can't let you back in there.

君をこの中に戻すことはできない

Not even you can survive a building full of guns.

君でさえ、銃に満ちたこの建物では生き延びられない

Though I know you'd try.

君ならやると知っていたからな

Do you really think Dominic's gonna let Anthony go?

ドミニクがアンソニーを解放すると本当に思っているのか?

We'll find out soon enough.

すぐに分かる

 

 自分を助けた後、次はアンソニーを助けるためにリースが建物に戻ることをイライアスは予期していた。だから、リースを出口から締め出して自分だけ戻ります。アンソニーのために。アンソニーは金庫の暗証番号を聞き出すために拷問を受けながら、ドミニクのNo.2であるリンクと会話します。

「俺には命を投げ出してもいいと思うボスがいる」

「本当にそれでいいのか?」

「それはお前が自分自身に聞いたらどうだ?いつかお前もこうなる。椅子に縛り付けられて、忠誠心を問われるんだ」

 

 フィンチが必死で止めようとしますがイライアスはドミニクに捕らえられ、金庫の暗証番号を聞かれます。「まずはアンソニーと話させろ」と言うイライアス。

 

Boss?

ボス?

How you doing, Anthony?

大丈夫か、アンソニー

I've seen worse.

もっと悪いこともありました

They want inside the vault.

彼らは金庫を開けたがってる

Well, and I want them to release you.

私は君を解放したい

Boss, I think we should just give them the code.

ボス、彼らに番号を教えるべきだ

I want them to let you go first.

君が解放されてからだ

I don't think that's gonna happen.

そんなことにはならないでしょう

Please, boss.

お願いだ、ボス

I just want it to be done.

終わらせてください

Okay, Anthony.

分かった、アンソニー

That's enough.

十分だ

You've gone far enough.

君は十分よくやった

 

 この会話の間、アンソニーとイライアスの顔が泣き出しそうに歪みます。暗証番号を話すイライアス、今にも涙がこぼれそうで…。そのやり取りを見ていて分かりました。金庫の中にあるのは爆薬だと。そもそも、イライアスを裏切った商売相手のところで、絶対に裏切るはずのないブルースの名前を出したこと自体がここにおびき寄せる罠だった。アンソニーが捕まったのは想定外だったでしょうが、イライアスは初めからブラザーフッドペントハウスに集めて吹き飛ばすつもりだった。でも、今この状況で暗証番号を教えればアンソニーも死ぬ。それを2人とも分かっていて、「番号を教えましょう」と淡々と話すアンソニーと、「分かった、もう十分だ」と話すイライアス。

 

 この2人のやり取り見ててすっごい苦しかったです。これはいずれリースとフィンチの2人にも起きることだと思ってしまった。「俺には命を投げ出してもいいと思うボスがいる」。この回初めて見た時すでにPOIの結末を知っていたけど、もし知らなくても、いつかリースはフィンチのために死ぬと感じたと思う。

 仲間を吹き飛ばされたドミニクは激昂します。「だから何だ!勝ったのは俺だ!」イライアスは笑います。「じゃあなぜ笑わない?」イライアス、格が違いすぎるでしょ…。そこへリースが現れてイライアスを奪還します。

 

 金庫の暗証番号、10-30-74 は1974年10月30日のことで、モハメド・アリジョージ・フォアマンの試合があった日だとか。ボクシング詳しくないのですが、アリはrope-a-dope という戦略を使ったんだそうで、この回の最後、リースとイライアスが

 

I hope you understand why I didn't tell you about the bomb.

なぜ君に爆弾のことを話さなかったか、理解してくれることを願うよ

You were playing the rope-a-dope on Dominic. You drew him in.

あんたはドミニクにrope-a-dopeの戦略を使ったんだ(劣勢のふりをした)。あんたは奴をおびき寄せたんだな

That building was a failsafe. In the inevitable event one of my enemies would move on me.

あの建物はフェールセーフだった。敵がやってくることは避けられなかったんだ

 

と会話します。

 

 最後、イライアスとアンソニー、ブルースの3人が幼馴染であることが明かされます。ブルースもアンソニーと同様、イライアスを裏切るはずのない部下だったことも。そしてリースとフィンチにかかってくる電話。「アンソニーの死を無駄にはできない。その日が来たら、邪魔をしないでくれ」と言われ、黙って視線を交わす2人。

 

 タイトルのThe Devil You Know は、"better the devil you know than the devil you don't" (見知らぬ悪魔より知り合いの悪魔の方がまし)という英語のことわざから。日本語では「知らぬ仏より馴染みの鬼」と言うそうです。最初、フィンチの指示でリースがイライアスを尾行しているシーンで、

 

He's the devil we know.

彼は俺たちの馴染みの悪魔だ

 

と言ってます。

 

 イライアスといつの間にかずぶずぶになってんの、いいのかなぁって思う面もありつつ、でもこの回で、ああそっか、「馴染みの悪魔」なんだ、って思いました。S1見返すと愛おしく感じちゃうもんね。。

 しかしこの回ではイライアスの味方がアンソニーとブルースしかいないように見えるので、いくら何でも他にも手足となって働くギャングいるやろ、って思っちゃってちょっと微妙でした。あの3人だけだったらドミニク的にもう狙う必要そのものがなくない??確かに「戦争は数じゃねえ」って言ってましたが、さすがに3人ではさ…。

 

 最後、リンクは生きていたことが分かります。ドミニクは、「イライアスは守られていた。あの刑事、俺を連れまわした女、それに資金提供者がいるはずだ」これ絶対フラグだよねー。イライアスが電話口に向かって「ハロルド」って言うとこ聞かれてるしね。またフィンチ追い回されるのか?そしてドミニクの高校教師は本当にスウィフト先生だったのか??

 そういう伏線って回収されんのかなー、サマリタンとの戦いメインになっちゃってんのに…。って思いながら最初見てました。ギャングの抗争編、あんま興味も湧かないし(結果的に)伏線回収も適当だったしドミニクのキャラいまいちだしS4の売りがいまいち分からん。。

 まあこの回に関してはイライアスとアンソニー、ブルースのあれこれが見られたんでそれくらいかな…。

 

POI:カール・イライアス(被害者)

本編:2014年

E7が11月11日でE14が12月15日あたりなので、E8~E13はこの1か月の間

E9はE8の直後ですね。

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