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02x06 - High Road 感想

 POI感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

 S1で「普通のパパ」が出て来た回はリースが感情移入し、「必ず助ける、“普通の人生”に戻してやる」と言っていましたが、今回はフィンチが感情移入するエピソードです。対象者は過去を隠し、他人になりすまして妻子と暮らしているマイホームパパ。でも過去が彼に迫り、人生の選択を迫られることになります。

 過去を隠し、偽名でグレースと付き合っていたフィンチ。自分のしてきたことのためにグレースを危険にさらすまいとして彼女との別れを選びました。その状況が重なってきます。

 

 フィンチのフラッシュバックシーンからはじまります。マシンに「人間」を教えた成果をネイサンと確認する様子。ここで「人づきあいの苦手な君にそんなことができるのか?」と聞かれてちょっとイラっとしたのか、フィンチはネイサンについてマシンに尋ねます。

 この時のネイサンのステータスはこんな感じ。

 

NAME: INGRAM NATHAN C

SSN: XXX-XX-1860

BOD: 1962/06/16

POD: FREEPORT, TX

ADDRESS: XXX M PR? ST NY NY 10018

OCUPATION: EXECTIVE IFT, INC.

                1983-PRESIDENT

POSITION: FOUNDER, CEO

EDUCATION: 1980-1983 BS

                COMPUTER SCIENCE

                (IMCOMPLETE)

               MASSACHUSETTS INSTITUTE OF TECHNOLOGY

 

 一部読み取れなかったので情報が不完全ですが、ネイサンはMITを中退してIFTを作ったことが分かります。ちなみにIFTのもともとの社名はIngram Technologiesだったそうで、じゃあFはなんなの?フィンチの本名もFから始まる名前なのかなぁ。

 あと、グレースの生年月日は1969年4月12日でした。

 

 本編の方は、今までなかった郊外のナンバーです。冒頭、ベアーがドーナツを舐めてリースがそのドーナツを食べちゃうシーン面白い。フィンチは「ああっ」みたいな顔するんですが特に止めるでもなく(てか、もう遅い)。リースは「この店はやめとけ」と。おいしくなかったようです。

 

 対象者は郊外に一軒家を持っていて、妻と娘がいて、仕事も家庭も順調で借金もなし。それを聞いたリースが

 

So we found the most boring man in New York.

ということは俺たちはNYで最も退屈な男を見つけたわけだ

 

って言うの笑ったわ。郊外って言ってもNYですよ?そんなド田舎じゃあるまいし。ファーロッカウェーはマンハッタン中心部からおよそ22マイル(35kmくらい)で、車で40分といったところです。ところが対象者の名前の人物は実は死んでいて、誰かが彼に成り代わっていることが分かり…、と不穏な空気が漂ったところで職質されるリース君。郊外で高級車で長時間停車は目立ちすぎました。てことで郊外に移住させられます(笑)。前回はデートさせられ、今回は所帯持ちにさせられて笑う。

 

Harder to tail someone in the suburbs than in the city.

郊外で誰かを尾行するのは街中よりも難しい

I heard.

聞いたよ

Your man-in-the-suit routine doesn't exactly play.

君のいつもの「スーツの男」スタイルは確かにうまくいっていない

As it happens, there's a quaint three-bedroom that's just gone on the market across from the Wyler's home.

折よく、ウィーラーの家の向かいの古風な3ベッドルームタイプの家がまさに売りに出されたところだ

You can move in tomorrow.

君は明日引っ越しだ

Move in?

引っ越し?

You're gonna be neighbors.

ご近所さんになるんだよ

I also procured a new vehicle, an appropriate wardrobe, and a set of golf clubs.

私はまた、新しい乗り物、適切な服装とゴルフセットも手配した

There is one element of your cover that you'll have to acquire on your own.

君の身分にもう一つ重要なものは、自分自身で手配すべきだね

 

 ちなみにこの家は559,000ドルです。日本円にすると2023年3月のレートで7600万円くらいか。フィンチの財力…。中華のデリ食べながら「家買ったよ!」って笑うわ。

 リースは「もう一つのもの」を手に入れるため、ゾーイを呼び出します。

 

John.

ジョン…

I'm sorry to hear that it didn't work out with that reporter Maxine.

記者のマキシンとうまくいかなかったと聞いて残念だわ

I'll get over it.

立ち直るさ

I was actually thinking...

俺は実際、考えてた…

we should spend a little more time together.

俺たちはもっと一緒に過ごすべきじゃないかって

Is that so?

そうかしら?

What is it this time?

今度は何なの?

More power players or cover-ups?

何かの悪事か隠蔽?

Not exactly.

そうじゃない

Zoe Morgan... will you be my wife?

ゾーイ・モーガン…、俺の妻になってくれないか?

 

 フィンチとリース、ゾーイとリースのやり取り面白すぎます。「郊外に住むんだからそれっぽい車とか服装とかゴルフセットとか準備したから、独身じゃ変だからね!」と言うフィンチと、ゾーイに「妻になってくれないか」と迫るリース(笑)。相手がゾーイ姐さんじゃなかったら酷い男ですよ。ゾーイは全く動じず偽装妻となり、「離婚の時には犬の親権で揉めそうね」とあっさり言ってのけます。どちらにせよこの2人、全く郊外に住む夫婦には見えないけどね…。怪しすぎるでしょ…。ちなみにフィンチが用意した車はジャガーXFらしく、郊外在住夫が乗る車として適切かどうかはよく分からん。

 引っ越し後フィンチから電話がかかってきます。

 

Miss me already, Harold?

もう俺が恋しいか、ハロルド?
Actually, I wanted to thank Ms. Morgan for offering her services.

実は、モーガンさんに仕事を引き受けてくれたお礼を言いたいんだ

Suburban dad with a mysterious secret?

不思議な秘密を持った郊外のパパ?

How could I resist?

断ったりできないわ

Plus, somebody had to see to it that John didn't burn down the block.

それに、ジョンが街を焼き尽くさないように誰かが見張らないと

 

 この回ほんと会話が面白いんだよなー。リースのMiss me? を常に華麗に無視するフィンチ。てかこの発言、ゾーイの目の前でもするわけ??ちょっとノリが分からん。で、ドアベルが鳴ると銃を構えるリース(笑)。「呼び鈴が鳴っただけよ。初日からガールスカウトを撃ったりしないで」とゾーイ。いかにもなBBQパーティーにお呼ばれしちゃったりして郊外ライフを満喫し、夜は2人でおしゃれにポーカーとかしちゃってます。「郊外も悪くないわね」とか言って。翌朝フィンチに「よく眠れたか?リース君」とか意味深なこと言われちゃってますね。

 

 対象者グレアムは実は昔窃盗集団の一員で、昔の仲間が出獄してまた仲間に引き入れようとしてきて、家を突き止められ車を燃やされ…、みたいな。家にセキュリティをつけることになり、セキュリティ会社経営をよそおうリースが社員をよそおうフィンチを呼び出して作業させるシーン笑った。「早くしろよ、ハロルド」「はい、ボス」とか言わせてさ(笑)。いつもの腹いせかよ。

 さて、正々堂々とグレアム宅の監視ができるようになったフィンチは、リースがグレアムの過去の仲間を探っている間、家を見張ります。中ではグレアムの妻コニーが苛立っていました。ゾーイが彼女の元へ向かい、話を聞き出します。(この時、もらったサラダ全部捨ててんの気になって仕方ない。まあゾーイは食べそうにもない感じのサラダでしたけどね…)

 2人はお茶を飲みながらガールズトーク。夫との出会いについて語り合います。「彼は特別だと感じた。他の人とは違うと」とコニー。ゾーイは「彼がいなかったら私はここにはいないわね」と…。まあ、それはそうかもしれませんが…。それを頬杖ついて聞いてるフィンチがかわいすぎじゃないですか??女子会か??フィンチは明らかに、グレースのことを考えています。彼女との奇跡的な出会い…。

 

 だがしかし、私はフィンチとグレースについて本当に物申したいんだけど、あれって「出会いの奇跡」でも何でもないじゃん…。マシンが2人を出会わせてるじゃん。

 フィンチが何度コードを修正しても、マシンはグレースをフィンチに示します。「彼女には何も変なところはない…。正直で礼儀正しく、後ろ暗い秘密もなく、誰にでも親切だ。…それこそが、彼女が他の人と違うところだ」しかもグレースは読書や絵画の趣味も合い、フィンチはマシンに導かれるように彼女と出会って夢中になります。

 S5E12の「マシンのない世界のシミュレーション」ではフィンチはグレースと出会ってはいなかった。フィンチのことを大好きなマシンが、「最高の相性」の相手を選んでグレースのもとに導いたことが分かります。

 

 グレースとフィンチの恋、ずっと美しいものとして描写され続けるのですが、グレースがあまりにも理想の女神すぎて…。生身の人間とは思えない。S5でフィンチがグレースの幻を見るシーンありましたが、もはや架空の存在なのではないかとすら思えます。フィンチの脳内恋人と言われた方がまだ納得できるよ…。IT分からない、フィンチの仕事に干渉しない、趣味が合う、「何があっても離れていかない」と嘘を許容する、いつまでも待っているなど、徹頭徹尾フィンチに都合のいい人すぎない??だからこそマシンが彼女を紹介したんでしょうが、恋ってそういうものだろうか…。

 正直フィンチとグレースの関係性には大いに疑問があるし、最後ああいう終わり方になったのも、フィンチのことはどれだけ傷つけても最後グレースがいてくれるからハピエンだよね?って無理やり納得させられた感じがしてずっとモヤモヤしてる。前にも書いたのですが、リースの内面を描いて彼の気持ちを救済するようなエピソードはいくつかあったし、リースは最後死んだけど救われて死んだんだと思えた。でも、フィンチは目の前でネイサンもルートもリースも殺されていて、しかも全部自分のせいです。それに対する救済ってほとんどないし、自分だったら一生幸せにはなれないと思う。グレースが待っててくれたらそれでいいの?理想の女神一人で全部ハッピーエンドになるのか?じゃあリースがあのままアイリスと付き合い続けていたとして、フィンチが死んでリースは生きてアイリスのところに戻ってたらハピエンなの?その終わり方だったら誰も納得しないのでは?

 とまあ色々思うところはありつつも、私がこの2人の関係性を否定できない最大の理由は、ぶっちゃけ、「中の人たちがリアル夫婦」っていう点ですね…。超メタな理由でほんとアレなんですが…。やっぱりこの2人を引き裂いたらまずいんじゃないかみたいな…まあ仕方ないよね、みたいな感が…。これは役者さんのプライベートが滲み出ているとかそういう批判じゃなくて、キャスティングの問題です。どうしてこういうキャスティングにした??聖域すぎん??神聖にして侵すべからざる感じがして、コメントしづらいです。こんなこと考えてしまうのは、中の人が誠実に「まったく見知らぬ2人が思いがけなく出会って惹かれ合う」演技してるのに失礼なのかもしれないのですが、やはりリアル妻をキャスティングするのはどうなんですかね。運命の2人感がメタに滲み出てきちゃってるじゃん…。

 

 でも、キャストインタビューでマイケル・エマーソンさんがたびたび「今までスクリーンの前でキスをしたことのある相手が自分の妻だけというのは残念だよ」「妻と演技をするのは大変だった。彼女がいつも自分と一緒のベッドで寝ている相手だということを忘れなくてはならないからね」とか言っていてとてもかわいかった♡

 

 グレアムは家族に全てを打ち明ける書置きを残し、強盗団に加わります。強盗団には家も家族も知られている。拒否する選択肢はありませんでした。リース、フィンチ、ゾーイはあの手この手で強盗の対象となる高級マンションに潜り込みます。この時ゾーイとカーターが顔を合わせ、ゾーイが「ジョンの妻です」とか言うシーン笑ったわ。

 リース、フィンチの2人はどうにかしてグレアムを「普通の生活」に戻してやろうとしますが、グレアムは最後自首の道を選び、出頭します。「もう家族には全てを打ち明けた。過去からは逃げない」と言って。

 

 たまに出てくる、平凡そうな男が家族に秘密を抱えているために事件に巻き込まれるパターン、かわいそうなんですけど今回はマジで過去窃盗してた人だからなー。なんとも言えん。最後は条件付きですが釈放されて家族と一緒に暮らせるようになります。コニーは全て受け入れグレアムのそばに残ってくれた。しかしながら私が妻の立場だったらちょっと、もう一緒に暮らしたくないような…。この辺、どう考えていいか分かりません。気持ちが本物だったら、他は嘘でもいいのか?他の人を愛しているとかそういう嘘でなかったら全て許せるのか?

 フィンチは最後この2人の写真を見て、グレースのことを思い出します。全て嘘だったけど、気持ちだけは本当だった。いやー、ほんとにそれでいいのかよって私は思っちゃうんだけどさぁ。。

 

 ゾーイとリースは離婚することになりますが、その前に「もう一晩泊まって勝負する?」ってシーンいいですね♡この2人のやり取り、色っぽくて好きだわ。

 

 グレースとフィンチについては色々書いたけど、グレースが嫌いってわけじゃないです。てか、嫌いになれるような人じゃないですよね…。むしろもっと嫌な感じに癖があるタイプの人だった方がリアリティあってよかったんじゃ、って気もする。誰もが好きになるタイプの人ではないけどフィンチは強烈に好きだったと。それだったら、最後彼女のところに戻っても、ガチでブチ切れられるかもしれないけど雨降って地固まるかもねって思えたのですが、ああいうタイプの人だとフィンチに都合よすぎて一方的に搾取しているようにしか見えんし。ネイサンに対してもそうだったじゃん?

 まあ、とりあえず真冬にアイス食べてるフィンチはかわいい。

 そして結局POIは魔性の男ハロルド・フィンチに皆が全てを捧げる話だから仕方ないのかもしれん。

 

POI:グレアム・ワイラー(被害者?でも加害者だった可能性も)

本編:2012年(日付はっきりせず)

フラッシュバック:

2004年5月8日、フィンチ(ネイサンと公園)

2005年、フィンチ(公園)

2006年1月、フィンチ(グレースと公園)