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「一首鑑賞」-50

「一首鑑賞」の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

50.きみはきみばかりを愛しぼくはぼくばかりのおもいに逢う星の夜

 (村木道彦)

 

 砂子屋書房「一首鑑賞」で吉田隼人が紹介していた歌です。

sunagoya.com

 うーん、そうかもなって思う気持ちと、愛ってそれほど捨てたもんじゃないんじゃない?って気持ちが交錯する歌ですね。なんか、大学生くらいの人にめちゃくちゃ刺さりそうな歌だなって思いました。でもおそらく子育てを終え、孫の成長を見守っている60代以降の人の心には刺さらないかもしれない。「愛を知らないね」って言われてしまいそう。ですが、逆にそう思う時もあるのかな…。結局人は一人だって。

 解説にも

 

 大学一年か二年のころ、すっかり村木道彦に参ってしまった時期が存在する。

(中略)

掲出歌は自己愛といってしまえばそれまでだが、他人への愛も結局は自己愛に回収されるのではないかとか、理屈っぽく考えたがる盛りの恋人たちにとって、どこまで行ってもぼくはぼくの、きみはきみの似姿にばかり会うことになるのではなかろうか。

 

とあり、そういう自意識の頃に出会っていたら多分すごく傾倒しただろうなと思わせる魅力があります。

 

 こういう歌と出会うと、文春新書の『新・百人一首 近現代短歌ベスト100』のあとがき対談で永田和宏が言っていた、若い頃に春日井建の暗黒の美学と出会っていたら人生が狂っていただろうみたいな発言を思い出します。私は、中澤系、飯田有子、正岡豊、村木道彦、岡崎裕美子みたいな歌と若い頃に出会っていたら多分のめり込んでいたんじゃないかなぁって思います。そうじゃなかったのが残念な気もするし、そうだったら変な風にこじらせていたような気もするし、どっちがよかったのかは分かりませんが…。

 

 でも一生全然知らないままでいるよりも、こうやって出会えてよかったのかなって思う気もします。この歌の内容を繰り返し繰り返し考えることはない今でも。

 

 

いいんだよ、きみはわたしの目の中に見たい愛だけ見ててよ、ずっと (yuifall)

 

 

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