「一首鑑賞」の注意書きです。
38.「このシーン雨降らせよう」と監督(ディレクター)そんな感じだ結句の雨は
(川田一路)
砂子屋書房「一首鑑賞」で前田康子が紹介していた歌です。
これは一見して心惹かれる歌ですね。「結句の雨」なんだから、短歌を作っていて最後の七で雨を降らせていて、でもそれは現実の雨の情景を詠った歌ではなく、この心情には雨がぴったりだな、最後に雨を入れよう、と。もしくは短歌を読んでいて、この結句に出てくる雨は恣意的だな、と思ってるのかな。それを歌にしてしまうというメタな感じ、ぞくぞくします。
解説によると、作者は映画監督を目指していてなれなくて、CMやテレビ番組のプランナー、ディレクターを30年間勤めていたそうです。映画の代わりに歌を詠んでいるのだろうか。映画ではなくてCMやTVというある意味「定型」の中に自分を見出した、ということなんだろうか。
この「結句の雨」が登場する歌はどんな短歌なのか気になります。ググってみると意外にも与謝野晶子の詠む雨の歌がたくさん引っかかりました。
加茂川の石みな濡るるむつかしと人を呼ぶなり夏の日の雨 (与謝野晶子)
などです。ですが、近代短歌は「このシーン雨降らせよう」という恣意的な感じは薄いイメージがあるので、やっぱり現代短歌なのかなぁという気もしてます。土砂降りなのか、しとしとなのか、ざあざあなのか…。
それにしても、glee好きの私としてはやっぱりS2のUmbrella/ Singin’ In The Rain のマッシュアップのシーンを思い浮かべてしまいます。ステージに大量に雨を降らせて踊りまくる!まさに「このシーン雨降らせよう」のシーンです(笑)。
「雨だから秘密を一つ教えるね」僕はつま先ばかりを見てた (yuifall)