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現代歌人ファイル その25-松平修文 感想

山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

松平修文 

bokutachi.hatenadiary.jp

黒きバス森に着き窓をいつせいに開けて夥しき鴉を放つ

 

 この歌、多分普通に読めば不気味系なんでしょうけど、『いろいろバス』というtupera tuperaの絵本をとっさに思いだしてしまい、ちょっとなごんだ。黒いバスからはくじらが降りてかげが「ひっそり」乗るんだよ。蝙蝠、ピアノ、ペンギン、カブトムシ、魔法使い、シルクハットとかも黒のバスに乗ってました。

 絵本って何気にちょっと怖いですよね。子供のころ『おしいれのぼうけん』(古田足日田畑精一)という絵本が怖くて、最後の「あせもができていた」というシーンから、「あせも」ってずっとやばい病気だと思ってたわ(笑)。真実を知った時は拍子抜けしました…。そして「からす」に「鴉」という漢字を使われると『幽☆遊☆白書 』(冨樫義博)を連想してしまう。オタクだから。

 

眼のない鳥や眼のない魚や眼のない少女が棲むその街は、夜だけの街

 

 こういうのって何からの連想なのかなー。あまり怪奇系の本って読まないので馴染みがない世界ですね。本業日本画家の人みたいで、江戸時代とかの幽霊の絵みたいなやつを想像しました。あの、京極夏彦の本の表紙みたいな…。あれは妖怪か…。というより、あれかも。人が腐ってく絵のやつ。九相図だな。あとは地獄絵図かな。

 その頃って普通に道端に死体とかあったんだろうなー。梅毒とか皮膚病とかすごそうだし、ああいう絵ってリアルだったんじゃないかなという気がします。

 

 こういう「暗黒の美学」(解説より)みたいな歌がある一方で、

 

街灯が暗すぎるよね いつまでも佇つてゐてまた「さやうなら」と言ふ

 

なんてちょっとかわいいです。先入観があるからか、「さやうなら」と言うのは地縛霊なんじゃないかなという気さえするよね(笑)。暗い街灯の下にずっといて、通り過ぎるたびに「さやうなら」って言ってくれるの。柳の下みたいな。

 

 

眼の昏き人魚を檻に腐らせて街はいつでも泥濘んでいる (yuifall)