いろいろ感想を書いてみるブログ

短歌と洋楽和訳メインのブログで、海外ドラマ感想もあります

現代短歌最前線-梅内美華子 感想2

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

梅内美華子②

 

空をゆく鳥の上には何がある 横断歩道(ゼブラ・ゾーン)に立ち止まる夏

 

 末尾のエッセイには、「二十歳のときのうた」とあります。夏の入り口に立って空を見上げている様子と、大人になっていく自分を重ねていたのかな。ふっと鳥の影が差して空を見上げる瞬間ってありますよね。何がってわけじゃないのですが、なんだか懐かしくなってしまいました。

 

赤き傘の内より見ゆる世の中の暗きウィンドーにわれは映れり

 

 一転してちょっと暗い印象です。「赤き傘」と「暗きウィンドー」なので、窓に映る影の中で自分だけ浮き上がっているような映像が浮かびますね。うーん、自分だけ浮かび上がるというより、自分も影なのかな。赤い傘だけが浮かんでいるのかも。なんかのドラマでそういう映像あったような…。ショーウィンドーに赤いドレスみたいな…。火村英生の推理かな。

 この歌の「赤い傘」は何のメタファーなんだろう。暗い世の中の雨から自分を守ってくれる何かなんでしょうか。だけど、暗い中の「赤」ってあんまり「守ってくれるもの」のイメージじゃないですね。

 

バケツの中に水着洗えば匂いたつ塩素 もっと苦しめという

 

 前半は、プールで泳いだ後に水着を洗っている、という情景で、すんなり目に浮かぶのですが、その後「もっと苦しめという」が急に現れてどきっとして胸に残ります。多分、これからプールの後水着を洗うたびにこの歌のことを思う気がする。

 これはこの人の個人的な何かの苦しみについての歌なんだろうか。それとも単に、こんなにしんどいのにもっと泳げって!みたいな(笑)、選手コースで水泳習ってるみたいな感じなのでしょうか。そしてもっと苦しんでもがんばりたい(タイム縮めたい!)のか、もう嫌…、なのか、どっちかなぁって思います。何となくですけど、この時はやだなーって思ってるけど次泳いだらまたがんばっちゃいそうな感じがします。

 

 

サイレンの来る方角が分からない 横断歩道(ゼブラ・ゾーン)に立ち尽くす冬 (yuifall)

苦しみはまだ足らぬのか 心臓に曳かるるごとく歩を進めゆく (yuifall)

 

 

現代短歌最前線-梅内美華子 感想1 - いろいろ感想を書いてみるブログ

現代短歌最前線-梅内美華子 感想3 - いろいろ感想を書いてみるブログ

現代短歌最前線-梅内美華子 感想4 - いろいろ感想を書いてみるブログ

短歌タイムカプセル-梅内美華子 感想 - いろいろ感想を書いてみるブログ