講談社 穂村 弘著 「ぼくの短歌ノート」 感想の注意書きです。
高齢者を詠った歌
これは、やっぱり両親が老いていく、っていう歌が胸に刺さりました。
ゆるキャラのコバトンくんに戦ける(おののける)父よ 叩くな 中は人だぞ (藤島秀憲)
これ、解説に
笑ったのも、淋しいのも、悲しいのも全て本当
って書いてあって、私も心からそう思った。コバトンくんをこわがるお父さんも「中は人だぞ」もコミカルなのに、淋しいし悲しい。解説には
「中は人だぞ」とは、「父」の存在を照らし出す言葉のようでもある。
とあって、ああそうか、って納得してやっぱり悲しくなった。自分自身に、父は人だぞ、って言い聞かせてるみたいで。
この人、「賞味期限の歌」の「賞味期限の内に死ぬんだ父は」の人ですよね…。
ぼくの短歌ノート-「賞味期限の歌」 感想 - いろいろ感想を書いてみるブログ
お父さんは老いてボケて亡くなってしまったんだなぁ…。でもそういうお父さんを外に連れ出して一緒に「ゆるキャラ」に会いに行ったりしたっていう、そういう思い出があったっていうのはせめてよかったのかなと思いました。
頤(おとがひ)をささへて母の歯を磨き舌の黒子をはじめて見たり (安西洋子)
これも、胸がずきっとしました。解説では
「舌の黒子」に、張り詰めた衝撃が宿った。
とあり、これも、ああほんとうにそうだよな、って…。普通に暮らしててお母さんの舌なんて見たことないもんね。。母の歯を磨くなんてしたことないし…。ずっと知っていたはずの人のことを実は知らない、って思う時の衝撃ってありますよね。いつからあったんだろう、私は本当は母のことをどれだけ知っているのだろう、という思いが鮮やかに伝わってくる感じがしました。
親のことを本当はどれだけ知っているのだろう、って時々思います。もう届かないときになって初めて、こんな一面があったんだ、って驚くことがあるんだろうなって思う時があります。
知らぬ間に笑まひの速度さへ落ちて急須に茶葉は腐れてをりぬ (yuifall)