左右社 出版 山田航編著 「桜前線開架宣言 Born after 1970 現代短歌日本代表」 感想の注意書きです。
井上法子
本と順番はちょっと違うのですが、もうすぐ3月11日が来るので、先にいわき市出身の井上法子の記事を載せます。
すごく不思議な文体です。プロフィールに「福島県いわき市生まれ」とあり、解説に
「異なるもの」との対話を図るときの、「巫女」「シャーマン」の文体
とあったので、多分そういうジブリっぽいイメージと、震災のイメージを重ねて読んでしまっている気がします(私が勝手に)。以下解説の引用ですが、
「蜃気楼」や「航路」といったモチーフは現実のそれらを離れたファンタジーの香りもまとっている。だから、ここで描かれている「ふるさとの海」をいわきの海へと短絡することはできないかもしれない。しかし、埠頭に立って遠く海を見つめる、勇気に満ちた目の巫女というイメージをどうしても消し去ることができない。
引用終わり。とあって、すごく納得しました。なんかね、ビジュアルイメージ的には、もののけ姫とかナウシカとか、そういう感じなの。で、舞台は地震と津波と原発事故で壊されてしまったふるさとの海で。
魚たちこわくはないよひるがえす汚水をひかりだらけと云って
車窓から航路がみえる 青いから痛むんだろうこの蜃気楼
いつかこの形に慣れて霧雨を、きみを、せかいを羽織るのだろう
どれも、失われてしまったふるさとを痛みと共に思いながら、それでもそこを浄化しようとする、やっぱり巫女っぽいような、そんなイメージを受けました。
鬼子母神のように産んでは奪うのね盆提灯のかがり火は揺れ (yuifall)