左右社 出版 山田航編著 「桜前線開架宣言 Born after 1970 現代短歌日本代表」 感想の注意書きです。
井上法子②
しかし、みんなそうなんですけど、自分のスタイルがあってすごいよなって思います。この人も、解説に
こういう文体は、これまでの口語短歌ではありそうで意外となかった。
と書かれていて、本当にユニークだな、と。
かえろうか(帰るわけには)そこは森、そして知らない花の花畠(はなばた)
こころをみぞおちの舟に乗せひとはなぜ唄おうとする 悲しみばかり
こころに酔ってわすれないでふるさとの湿度を あの風景の死を
全体的に、なんかすごいありがたい感じしませんか…。ご神託みたいな…。世界を救ってくれる少女みたいな…。しつこいけどジブリっぽいよね…。この世界観を短歌で作り上げる能力ってすごいなと思います。映画で2時間かけてやることですよ、これはさ(笑)。短歌って気軽に読めるのにスケール大きくて好きだ。
でも、どうしても震災というモチーフに重ねて読んでしまう部分があるので、汚染された地で戦うナウシカっぽいイメージが重なるのですが、この人は戦おうとしてるんだろうか。解説には「巫女」のイメージ、とあります。ただ「あの風景の死」を詠うことで残していこう、という意思なのかもしれません。
一つの出来事に対する誰かのスタンスを推し量るのは得意ではなくて、もしかしたら的外れなことを受け取ってしまうかもしれないとも思うのですが、歌集を読んでみたいなって思いました。この人の世界との向き合い方を知りたいなって。
大漁旗のみ還りきて海は凪ぎ おいで、泣いてもいいんだからね (yuifall)