左右社 出版 山田航編著 「桜前線開架宣言 Born after 1970 現代短歌日本代表」 感想の注意書きです。
小原奈実
この人の作品は写実的ですね。こういう作品見ると、敵わないなって思います。いや、誰にも敵ってないんですけど(笑)、やっぱり自分の弱点は風景を見る目線だと思っていて、どうしても小綺麗な言葉で心理描写をしがちなので、心情を排除して風景を美しく描写する力量には圧倒されます。
雨の夜に渋滞あかく滲みおり無数の喉を漏るる低音
とかさぁ。情景が思い浮かぶし、渋滞中の車の中の人の心情にまで踏み込んでるのに湿っぽさないもん。すごいよなー。
仰向けに蝉さらされて六本の鉤爪ふかし天の心窩へ
なんかも、蝉が仰向けになって死んでるっていうだけなのに、その光景から天の心窩へ突き刺さるという情景へシフトしていく視線の鋭さが、すごいなと思います。さっきからすごいとしか言ってないな(笑)。語彙乏しすぎや。小並感や。
ゆく先をヒュドラのごとく別ちゐて歩道橋より見下ろす夏は (yuifall)