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「一首鑑賞」-337

「一首鑑賞」の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

337.父われを見むと来たれる東京の子もうれしみて席に加はる

 (窪田空穂)

 

 砂子屋書房「一首鑑賞」コーナーで石川美南が紹介していました。

sunagoya.com

 これ、一読した時は意味がよく分かりませんでした。でも何となく気になって鑑賞文を読みました。前半は、石川美南とタクシー運転手さんの会話が描写されています。そして後半に歌の意味が解説されています。

 最初、「父」「見むと来たれる」「子」という字面から、とっさに授業参観的なシーンを想像したんですよね。でも「父われを」というのは、父である私を、という意味です。つまり「東京にいる子」が、「父である私を」見に来て、喜んで席に加わるシーンだと。解説によると、

 

窪田空穂は1945年3月、東京から長野県の生家に疎開した。この日は、空穂69歳の誕生日祝いを兼ねて歌会が催された。疎開先ではなかなか手に入らない頭つきの魚を持ってきてくれる人もいて、皆で赤飯を食べ、歌のことや空穂のことを大いに語り合う、賑やかな会だったようだ。

 

ということだったそうです。疎開の最中でした。詳しい事情はよく分かりませんが、1945年の3月といえば東京大空襲で東京が焼け野原になった頃です。この歌が詠まれた日は「窪田空穂の誕生日」ということで、調べたら6月8日でした。「東京の子」に会えた喜びは父の方が大きかったかもしれないなぁと思います。

 

友の訃報に際して作った歌や、離れて暮らす家族を思う歌、疎開してきてしまった悔しさの滲む歌などが並ぶ中、この歌会の一連は、掛け値なしに明るい。

 

とあります。

 

 鑑賞文の前半では、タクシー運転手さんの実家が福島から鹿児島になった事情が書かれています。記事の日付は2012年の3月7日でした。

 

 

動画には蝉の鳴き声 僕たちは餓死するだろう清潔な都市で (yuifall)