2025年4月16-22日
・マウリツィオ・デ・ジョバンニ(直良和美訳)『P分署捜査班 鼓動』
・アンソニー・ホロヴィッツ(駒月雅子訳)『シャーロック・ホームズ 絹の家』
・切江真琴『恋だってできる』
・塩田武士『盤上のアルファ』
以下コメント・ネタバレあり
・マウリツィオ・デ・ジョバンニ(直良和美訳)『P分署捜査班 鼓動』
これ、アラゴーナが好きになっちゃうでしょ…。ウザい3枚目だと思ってたのですが、「TVのヒーローみたいな警官なんじゃないの?」などと煽られるとなんでもやっちゃうとこちょろくてかわいいです。ロマーノも奥さんへの執着心が薄れ他の対象に目を向けるきっかけができてよかったですね。一方アレックスはちょっとかわいそうだけどロザリアだって待ってられないよね。アレックスより年上だし、そもそも「あなたがそんな風に煮え切らないのは勝手だけど私は待つことはできない」ってはっきり言ってあるしね。あとはロヤコーノの恋の行方が気になります。私は完全にラウラのタイプだけど、自分が男ならレティツィアを選ぶな…。ロヤコーノ、プライド高そうなキャリアウーマンを転がせそうなタイプに見えないし。ピザネッリの件は最終話近くなったら片付くのだろうと思い静観しているが、親友が犯人と知ったらどうなってしまうのか…。あとオッタヴィアに関してはもうどうしようもないというか、正直この人の運命をどうするつもりなのか一番気になります。全てを捨てて自由になれんのか?息子が死ぬ展開だけはちょっと勘弁してほしい(お涙頂戴+ご都合主義でどうしようもなくなる)。
本国ではもう11作目まで出ているのだそうです。手放しに大好きってわけでもないけど、続きも読みたいシリーズです。
・アンソニー・ホロヴィッツ(駒月雅子訳)『シャーロック・ホームズ 絹の家』
これは“公式”続編という扱いで、通常のパスティーシュとは一線を画す作品のようです。ホームズものって短編のイメージがあったのですが、長編で読み応えがあります。残念なのは、いずれも翻訳しか読んだことがないので文体をどのくらいパロディしてるのか分からないとこ…。ちょうどこないだ青崎有吾の有栖川作品完コピミステリ読んだばかりなので、ネイティブなら文体や言葉選びのパロディの加減も楽しめるんだろうなぁと羨ましくなりました。“当時は発表できなかった”という体の作品でオチも確かにそうだなと納得できる内容でとても面白かったです。以前からアンソニー・ホロヴィッツの作品は出たら読んでいたのですがパスティーシュものは何となく避けてました。。でもこれを機に『モリアーティ』も読もうかなと…。『007』の方は、本家を知らないのでどうしようかまだ悩んどく。
というわけで『モリアーティ』。ですが、これ、読みたい方は絶対に事前情報なしで読んだ方がいいと思うので、今後読むご予定がある場合はこの感想読まないことをお勧めします。以下、重大なネタバレはしませんがそれでもミステリファンなら何となく察してしまうと思うので…。
私は事前に「この小説にはフェアかアンフェアかの論争がある」という情報を知ってしまったので、この小説に仕掛けられたトリックに薄々気づいた状態で読み始めてしまいました。。この事前情報だけでもミステリファンなら絶対“あること”を意識しますよね。まあ実際そういうことだったのですが、それでもオチにはちょっとへこんだ。えー、マジで殺しちゃうんだ…、と思ってかなり悲しくなりました。そんな容赦ないキャラクターを描ける作者はすごいと思いましたが…。
まあ、タイトルもタイトルですし、作者的にも「どこまでいけるかなー」みたいなギリギリを楽しんで書いたのではないかという気がします。面白かったです。
・切江真琴『恋だってできる』
BL小説のランキングがほとんど異世界、転生、嫁入り、溺愛、オメガバース等の特殊設定で埋め尽くされており、わずかに残っていた現代ものを買ってみた。とはいえこれは予定調和甚だしい小説であまり面白くなかったです。まぁBLってほぼ予定調和といえばそうなのですが…。キャラがまだるっこしいとこが微妙だったのかなぁ。2人とも浮世離れしすぎてるし。
・塩田武士『盤上のアルファ』
久しぶりに塩田武士作品読みたくなり再読。これがデビュー作と後で知ってびっくりしました。めちゃくちゃ面白いです。おっさんの描写が秀逸すぎる。あと男性の内面が明け透けに描かれていて身も蓋もなくて笑う。BL小説の後に読むとギャップがすごいです。まーでもなんやかんや2人のおっさんがそれぞれ魅力的な女性に愛されてたりするのは漫画っぽいですが、そこはご愛敬ですかね。ギャグ部分とシリアス部分の書き込みが絶妙でとても好きです。
ところで最後の解説に「静が秋葉と真田のどちらを選ぶのか知りたい」と書かれててびっくりしたよ。作中で完膚なきまで決着ついてるやん。30年終わらないダブルヒロイン論争がなぜ起こるのかその理由の一端を垣間見た気がしました…。文庫解説を引き受けるレベルの読解力高い人でさえ、作中にあからさまに描かれてても見えない(あるいは受け入れられない)場合があるのか…。解説の人はおそらく秋葉ファンなんですかね。