「一首鑑賞」の注意書きです。
260.口紅と座薬とジャムと練りからし冷ゆる冷蔵庫夏過ぎてより
(浜名理香)
砂子屋書房「一首鑑賞」コーナーで魚村晋太郎が紹介していました。
最初の口紅のインパクトがすごいなー。そして鑑賞文が面白かったです。
口紅はつけたところをひとに見せるもので、座薬はつかっているところをふつうはひとに見せない。
考えてみると、消化管の入り口と出口に関わるものでもある。
ジャムは甘く、からしは辛い。
たたみかけてならぶ名詞の、そんな取り合わせの面白さにまず目をひかれるが、読んだあとに、季節が過ぎてゆくときのなんともいえない気分がじんわりと伝わってきてこころをひかれる。
それから、「どれも夏とは関係がない」ことも書かれていました。
使いかけの口紅、処方されたけど使っていない座薬、中途半端に余ったジャムと練りからし。とりあえず冷蔵庫に放り込んで、そのまま冷えている。そして夏が過ぎていく。これらはいつからあるんでしょうね。夏に入れたものなのか、それとも夏が始まる前からずっとあったのか。「口紅」「夏過ぎて」という言葉から恋愛に関連付けて読むこともできますが、そこまでしなくても、という感じもします。あと、「夏過ぎて」から連想される「ひと夏の恋」みたいな刹那的なイメージは「座薬」「練りからし」とは合わないし。
かといって「掃除しなきゃ」みたいな切羽詰まった雰囲気もないのは、「夏過ぎて」だからかなぁって思いました。例えば「年末年始」とか「年明け」みたいなタイミングだと、「大掃除」との連想で「やるべきことをやってない」という余計な焦燥感が乗ってくる気がするし、あとは冬という季節も相まって「冷ゆる」がよけい寒々しく感じられます。だからそういう感じじゃない。
淡々と、秋になってなんとなく目についた、という風に受け止めてもいいのかもしれません。
口紅をつけないことにも思い出はある明け方のHCU (yuifall)