「一首鑑賞」の注意書きです。
210.キッチンは逆立ちしてもいいところ君もケチャップ我もケチャップ
(大谷ゆかり)
砂子屋書房「一首鑑賞」コーナーで門脇篤史が紹介していました。
ああ皐月仏蘭西の野は火の色す君も雛罌粟われも雛罌粟
ですよね。「火の色」が「ケチャップ」になってるのかな。「キッチン」にも「火」のイメージがあります。どちらの歌もとても楽しそうです。
この「逆立ち」は、ケチャップとかマヨネーズとかをさかさまに収納するアレですね。ケチャップはかなり少なくなってからやらないと液体が漏れてきて残念なことになりますが…。「キッチンは逆立ちしてもいいところ」が好きです。自由な感じ。鑑賞文にはこうあります。
「キッチンは逆立ちしてもいいところ」の裏側には、〈逆立ちしてはいけないところ〉の存在を感じる。例えば、事務職の職場では、実際にも比喩としても、〈逆立ち〉はできないだろう。だからこそ、逆立ちができるキッチンは主体にとって大切は場所といえるのかも知れない。
これ読んで、なんだかパトリシア・コーンウェルの小説を思い出しました。ケイ・スカーペッタという検視官が主人公のミステリーものなのですが、主人公の趣味が料理なんですよね。検視官という厳しい仕事場を少し離れた時に、料理をするのを楽しみにしている姿をとっさに連想しました。個人的には料理がそんなに好きでないので、好きな人がとてもとても羨ましいです。キッチンは逆立ちしてもいいところかぁ…。生ものがあったり火や刃物があったり、清潔感を求められたり、あんまり自由なイメージがなかったので、こういう発想ができること自体めちゃくちゃ羨ましいと思った。
繰り返しますが、こういう楽しそうな本歌取りがとても好きです。何でだろうな。多分パロディという形式にオタク心をくすぐられるからかもしれない。
We hope that you choke
Give me my sin again, Juliet(そのキスをせめて返してジュリエット)君も罪びと我も罪びと (yuifall)