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「短歌と俳句の五十番勝負」感想38.腹

「短歌と俳句の五十番勝負」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

蟷螂の鋭き眼に腹を見抜かるる (堀本裕樹)

 

 蟷螂、という単語から、「交尾の後雌が雄を食い殺す」というよく知られた(実はそれほど高い確率ではない)習性について言及され、この蟷螂も「魔性の雌かもしれない」と締めくくられます。エッセイにあるように擬人化としてとらえると、「魔性の女の人に全て見透かされたい(そして交尾の後食われたい)」という感じなのかな。

 題は「腹」なので、この時「見抜かれた」のはどんな「腹」なんだろうと思います。どんなまなざしで蟷螂を見ていて、そして鋭く見返されたのだろうか。「腹を見抜かるる」という言い方からは、少し後ろめたいようなニュアンスがあります。やっぱり相手が女性だったら下心かもしれないけど、蟷螂だったらどうなんだろうな。エッセイがなくても、やっぱり擬人化というか、「魔性の女」の暗喩として読むのがいいのでしょうか。

 

 それにしても

 

蟷螂のをりをり人に似たりけり (相生垣瓜人)

 

など2首を引用して「蟷螂はどこか人間臭い」というように語られますが、それって通説なんだろうか。私はあまりそういう風に思ったことがなかったので不思議でした。あんまり蟷螂に興味がないからかな…。「かまきり夫人」がどうこうとかいうポルノ映画もあるらしく、やっぱり男性の、女に食い殺されたいという欲望のあらわれですかね?ここで引用されている俳句は全部男性のものだし、ポルノ映画もおそらくは男性が作ったものでしょう。「蟷螂は人間っぽい」って言ってる女性の作品ってあるのかな。

 

 なんか、交尾のあとで雌が雄を食い殺すのを「恐ろしい習性」っていうけど、卵産んだら雌も死ぬんじゃん?って思うので(虫の種類によっては、母親の身体は産まれた子どもに生きたまま食われたりしますし)、女の立場からすると男って好き勝手言うなって感じしますね。何も考えずに「女ってこわーい♡」とか言ってんじゃねえと。

 

 

「腹癒せ」と漢字を嵌めて仕返しでしか癒せないたましいなのか (yuifall)