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「短歌と俳句の五十番勝負」感想28.古本屋

「短歌と俳句の五十番勝負」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

古本屋に入ったことがあるだろうか、朝青龍は、松田聖子 (穂村弘

 

 固有名詞の使い方が上手い人って憧れると同時に、自分は人間に無関心すぎるのだろうか、とちょっとへこんだりもします。この歌、朝青龍とか松田聖子ってすごく絶妙ですよね。巻末の対談にも、

 

穂村 白鵬山口百恵は入ったことあるんじゃないかみたいな感じは、ちょっとするんだよね

堀本 何だろう、この説得力は。確かにそうなんだよな。言われてみると、白鵬なんかは古本屋に入って、ちょっと物色しててもおかしくないなと思うんだけど、朝青龍はいないだろうなって(笑)。

穂村 ふふ。松田聖子さんは、古本屋というものを知らないかもしれないね。

 

とありました。短歌に添えられたエッセイには、

 

 人間の生息域とは、どうやって決まってくるんだろう。誰に禁じられたわけでもないのに、私は一度もキャバクラに入ったことがない。でも、古本屋には何千回入ったかわからない。その逆の人もいるだろう。

 

と書いてます。

 こう言われて、改めて「自分の生息域」を考えました。穂村弘は「キャバクラ行ったことない」と言いますが、私は「ホストクラブ行ったことない」ですね(それどころかホストクラブなんて異世界に思えます)。うーん、でも、そう考えると踏み入れたことのない領域ってたくさんあるな。外車のディーラーとか行ったことないし、パチンコ屋も行ったことないな。カジノならあるけど…。古本屋は行ったことありますけど、希少な古書に興味があるタイプじゃないのでどうしても欲しい絶版書以外はほとんど買ったことないです。

 

 古本屋に行ったことがなさそうな人、という視点で人を見たことがなかったので面白いなと思いました。そういえば一穂ミチの『ふったらどしゃぶり』(BL本です)の中で、主人公2人が「〇〇する女としない女」で分けるとしたらどう分けるか、みたいなやり取りしてたのを思い出した。「電車で化粧する女としない女」みたいな感じでしたが、「古本屋に入ったことのある人と入ったことのない人」って考えると面白いです。こういう発想力、自分には全然ないから触れるとちょっとびっくりします。

 

 ちなみに出題者は古書店主だそうなので、ちょっとくすっとしたんじゃないだろうか。

 

 

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