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「短歌と俳句の五十番勝負」感想25.罪

「短歌と俳句の五十番勝負」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

有罪を告げて陪審員たちは歯医者と助手と患者にもどる (穂村弘

 

 この歌はいいですね。映画っぽいです。それでいて穂村弘っぽくもあります。退勤前に職場の勤怠管理システムに入力していて、休暇の申請欄の「特別休暇」に「裁判員」ってあるのを見て、誰か取った経験ある人いるのかなって思ったところだったので、なんか身近に感じました。ここでは「陪審員」という言葉が使われているので、日本の裁判員というよりも実際に外国映画のイメージなんでしょうか。

 

 全然関係ないのかもしれないのですが、この歌を読んで

 

外科医から君がひらりと休日の青年になる青い自転車 (久山倫代)

 

を思い出しました。「君」が誰かの生き死にに関わる立場からふっとプライベートに戻る瞬間が軽やかに描かれていますが、その裏にはうっすらと罪悪感とかもあるんじゃないのかなって思ったり。病棟に置いてきた、「自転車」にも乗れないような患者さんのことを、青い自転車に乗りながら考えているのかもしれないなあ、って。

 一方、「陪審員」の歌にはそういう「罪悪感」みたいなものはあんまり感じません。プライベートに戻るわけじゃなくて職場に戻る状況だからかな。Aという仮面からBという仮面に付け替えました、みたいな。AではAの仕事をして(有罪を告げて)、BではBの仕事をして(それぞれ歯医者、助手、患者の立場をこなして)、っていう感じです。

 

 何度か「罪悪感」という言葉を使いましたが、「罪」というテーマで「罪悪感」を感じさせない歌で面白かったです。ちなみにこの出題者は牧師の方だそうで、実はド直球のお題でした。

 

 

指先は罪悪感に惑いつつプレイリストを組み替えていく (yuifall)