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「短歌と俳句の五十番勝負」感想4.信じられない

「短歌と俳句の五十番勝負」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

街師走信じられない多情の日 (堀本裕樹)

 

 「信じられない」という題は斬新だなあ、と思って出題者を見たら、藤野可織という作家の方でした。七音が決まってしまうので、俳句だとけっこう縛りがきついですね。

 

 この句は、ある日立て続けに昔の恋人に似た女性と遭遇し…、という「奇妙に混戦した一日」(解説より)の句のようです。セミロングの髪や香水の匂いといったディテールが語られ、

 

「不意のエロスだけが、風景を異化する」という言葉が苦虫を嚙み潰したような村上龍の顔と一緒に浮かんできた。なぜ、こんな寸言を覚えているのだろう。

 

と書かれています。

 

 この一文、どこからの引用なのかなあ、と思ってググってみたのですが、この本(『短歌と俳句の五十番勝負』)の口コミばっかりひっかかってしまって、村上龍のどの小説の言葉なのか分かりません。昔の恋人(に似た人?)のセミロングの髪や香水の匂いを「不意のエロス」と捉えるあたり、男の人っぽいなって思いました。それが「信じられない多情の日」なんですね。ここに「情」という言葉が出てくるのも男の人って感じがする。

 この「信じられない」は「多情」にかかるのかな、それとも「日」にかかるのかな。「俺ってこんな多情な奴だった?」ってことなのか、「これってどういう日なの?」ってことなのか。「奇妙に混戦した一日」という言葉からは、「日」にかかるような気がします。

 

 自分を振り返ると、今でもあれは「風景の異化」だったな、って思う出来事があるのですが、かつて高層ビルに日常的に出入りしていたことがあり(タワマンに住んでたとか、勤め先もしくは取引先が高層ビルに入ってたとかそういう感じ)、ある日高層階から一階に降りるときに、私しか乗っていないエレベーターが全ての階に止まったことがあったんですよね。最初の何回かは「あれ?」って思って、途中から「システム障害?」って思って、それから「これ、一旦降りて別機に乗り換えた方早いんじゃ?」って思って、「でももし誰かが乗ってきたらこの異世界な感じを分かち合えるかも」「ていうか誰かが乗ったら普通に動きだしたりして」って思って結局一階までずっと乗っていたのですが、その間誰も乗ってきませんでした(エレベーターホールも全ての階で無人でした)。いわゆるシースルーエレベーターだったので、普通に明るい平日の日中だったことも覚えています。普段からしょっちゅう乗っていたエレベーターだったんですが、そんなことは後にも先にも一度もなく、その日は完全に異世界でした。明るかったし、一回一回扉が開くので閉じ込められた感はゼロで全く怖くはなかったのですが。

 まあー、何が言いたいかっていうと、別に「風景を異化する」のは「不意のエロス」だけじゃないなーと。それだけです。

 

 

ハザードの黄色ブレーキ色の赤信じられないオトナのブルー (yuifall)