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「短歌と俳句の五十番勝負」感想3.たまゆら

「短歌と俳句の五十番勝負」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

百葉箱の闇に張られし一筋の金なる髪を思うたまゆら (穂村弘

 

 これ、解説が面白かったです。百葉箱には人間の髪が入っている、という噂が子供の頃あって、「百葉箱」という名前とも相まって不気味なイメージを抱いていたが、実は百葉箱は「毛髪式湿度計」と言って<フランス女性の金髪が細く均質で最も適している>のだそうだ、というエピソードが紹介されています。それを受けてのこの歌ということのようです。

 闇の中に一筋の金髪、って想像するだけで絵になるし、それが小学校の裏とかに置かれているという状況も面白いです。「百葉箱」を思い出すのは確かに「たまゆら」って感じもするし。

 本物の人間の髪の毛ということになると、一体誰のものなんだろう、っていうのはやっぱり気になりますよね。いつの時代にどこに生きていたどんな人なんだろう、って。その人は自分の髪が百葉箱に張られると知っていて提供したのだろうか。

 

 このエピソードを読んで、HeLa細胞のことを思い出しました。これはin vitro実験に用いられるヒト由来細胞の最初の細胞株なのですが、もともとの由来は子宮頸癌の患者さんから無断で採取された細胞で、この患者さんはこの細胞のことを知らないまま亡くなったそうです。

 今では医療倫理が厳しくなり、患者さんの細胞やありとあらゆるデータが無断で使用されることはなくなりました(おそらく)。細胞一つ、髪の毛一本と言えども、そこには多くのゲノム情報が含まれている場合があります(状態がよければ)。

 かつては医療や研究ですら生体材料の提供に同意が不要であったことを考えると、昔は、百葉箱の毛髪の持ち主も百葉箱に使われることを知らないままだったのではないかという気がする。今でも「毛髪式湿度計」には毛髪が使われているとのことなのでさすがに同意を得ているのだろうと思うのですが、どうなんだろうなあ。髪は毛根がないと情報も少ないからまあいっかみたいな扱いのままなのかな。髪とか爪ってその辺微妙ですよね。

 

 しかし、「フランス人女性」はともかく「若いフランス人の処女」説もあり、「若い」はともかく「処女」になんか意味あんのかと思ってしまった。セックスで髪質って変わるの??

 

 

マッチ擦るほどのたまゆら触れる指そこから燃える私を見てて (yuifall)