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「一首鑑賞」-194

「一首鑑賞」の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

194.画像認証で燃えている森があり自転車としてそれを選んだ

 (池田輔)

 

砂子屋書房「一首鑑賞」で井上法子が取り上げていました。

sunagoya.com

 ああー、これは、分からないけど分かる系の歌ですね。画像認証で「自転車を選んでください」って指示されて、燃えている森を選んだ、っていうことですよね。自転車じゃないのは明らかなのですが、もしこんな画像認証に燃えている森の画像が含まれていたらそれを選ばざるを得ないような…、そんな分かるけど分からなさです。

 

 皮肉だなと思うのは、ここで「燃えている森」の画像を選んじゃうのが人間っぽいんだけど、「燃えている森」の画像を選ぶことで画像認証先のサイトには「botである」と認識されるだろうなということです。だがしかしAIが「燃えている森」の画像を選んだら、人間っぽい!ってビビるかなぁ。いや自転車じゃないだろ、ってなって終わる気がする。

 というよりも、実際は「燃えている森」の画像なんて映し出されていないんだろうと思うんですよね。架空のものですよね。そういう発想が出てくることがすごいんだよね。あの画像認証、私はめちゃくちゃ好きじゃないんですが(好きな人いるのか?)、その好きじゃなさを言い表してもらったような感じすらして説明しづらい感謝の気持ちをおぼえました。この歌を読んだ時。自転車を選べってなんだよ、ほんと。

 

 しかし一体どうしたら機械と人間を区別できるんですかね?かつて1960年代にチャットボットELIZAを開発したMITのジョセフ・ワイゼンバウム博士は、ELIZAが画期的だと言ったのは誤解している人々だけだった、と言ったそうです。今人工知能ChatGPTがすごく注目されていますが(2023年2月に書きました)、かつて人間が書いた(あるいは話した)ことをかき集めて会話が成り立つように応答すれば、知能があり、心があるってことになるんだろうか。そうなっちゃうとChatGPTは赤ちゃんよりも心があるってことになっちゃいますね。

 

 画像認証で「自転車を選んでください」という指示に対して燃えている森を選ぶ時、それがエラーなのか意志なのか外からは区別がつきません。しかしAIが燃えている森の画像を選んだら、人間を超えた!って感じるかなぁ。少なくとも現時点では感じないと思う。非合理的で非論理的であるほどに、まだ、人間にしか選べない選択肢があるような気がします。そんなことを考えさせられた歌でした。

 

 

蜂蜜に沈む言葉を欲しがってきみは安易に愛を信じる (yuifall)