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「一首鑑賞」-149

「一首鑑賞」の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

149.弱いもの順に腐ってゆくことの正しさ 夏はあまりにも夏

 (上坂あゆ美)

 

砂子屋書房「一首鑑賞」で井上法子が取り上げていました。

sunagoya.com

 これはいわゆる「弱肉強食」的な歌と受け取りました。弱いものから死に、腐っていくことの「正しさ」。それが自然の法則で、夏の容赦ない厳しさはそれを眼前に突き付けてくる、と。

 

 この歌を読んでとっさに山川方夫の『夏の葬列』という小説のことが頭に浮かびました。あの話では、亡くなったのは2学年年上の、自分を守ってくれていた少女でした。彼女を突き飛ばして結果的に銃撃の対象としたのが主人公です。この場合、どちらが「弱いもの」だったんでしょうね。亡くなったヒロ子さんか、生き延びた主人公か。

 

 人間の世界では、弱いもの順に腐ってゆくわけではないようにも思えます。それこそが進化なのかもしれないし、逆に、自然の摂理「正しさ」に逆らう行為なのかもしれない。でも、夏のあまりの暑さ(とは言ってないけど)に晒されていると、一人の生き物としての無力感みたいなものを感じるのは分かる気がする。冬の寒さは防寒着とかそういうもので防げるけど、夏の暑さには電力でないと対抗できないもん。夏の日差しのもとでは、小手先の能力とかでなくて圧倒的な「強さ」を試されているような感じはします。

 

 でも「弱いもの順に腐る」なら、自分は結構早めに腐る方だなって思うので、そうじゃないことに感謝するしかないですかね…。多分戦争とかあったら真っ先に死ぬタイプだと思う。情弱だし。

 

 祖母の家に畑があって(超田舎)、そこには生ごみを捨てるスペースがあって、収穫しながら同時にトウモロコシの皮とかキャベツの外の葉っぱとか虫食いの野菜とかをそこに放り投げるのですが、近所の野良猫が食べに来たり、そこで腐っていく野菜に虫がたくさん集まって来たりします。人間にとって有害な発酵を「腐敗」というけど、生物によってはそれは「腐敗」ではない場合もある。そうやって有機物がかたちを変えていくこと、それが「正しさ」なのかもしれません。「弱いもの順」かどうかはともかく。

 

 

夏過ぎて過去を改竄することのジョージ・オーウェルディストピア (yuifall)