「一首鑑賞」の注意書きです。
120.満月はかさぶたみたいな色をして(あれが地球の影なんだね)
(浅川洋)
砂子屋書房「一首鑑賞」で都築直子が取り上げていました。
選ばれた言葉の一つ一つは全く難しくないのに、切なくなるほど鮮やかに光景を思い浮かべてしまい、胸がぎゅっとしました。ロードムービー的な漫画を読み終えたみたいな感じです。
これは浅川 洋歌集『空洞ノ洞DOU』に収められている歌だそうなんですが、黒沢 忍歌集『空洞ノ空KUU』と浅川 洋歌集『空洞ノ洞DOU』は合体して一つの歌集になるそうで、それについて鑑賞文で詳しく語られます。そういう前提で読んだせいか、小野塚カホリの『LOGOS』みたいな、若い男の子が二人であてもなく旅する光景が浮かんだ。
家が荒れてるとかとにかく流血沙汰があって傷つけられた少年Aとその友達Bが家を捨ててあてもなく旅に出て、野宿とかしてて、ある晩外で皆既月食が起きてるの。自分の生傷を覆うかさぶたを見ながらAは「かさぶたみたいな色だな」って思ってて、それを知ってか知らずかBがAに「あれが地球の影なんだね」ってささやく、みたいな。
作者は絵を描く人だそうです。だからこんなに光景が鮮やかなのかもしれません。自分の歌ってすごいファジーなので、こういう歌にめちゃくちゃ憧れます。あといいなって思うのが最後の字足らずです。「かさぶたみたいな」が八音で字余りだから、「影なんだね」の字足らずでちょうど31音になっているのも好き。
他にも何首か引用されます。
爪でつけたにちがいない。縄文の土くれにある三日月模様
は、そういえばそうだよなぁ、って何か納得してしまって、
「約束をまた破ったな」「六千年たったのですから許してください」
はどういうことだろうな、って思った。神話の世界なのか、それとも戦争の賠償的な何かなのか。
浅川洋 黒沢忍 でググってみると、2009年の「風卵」展―共犯― という記事にあたるのですが、
上の句と下の句が書かれた紙をそれぞれ釣り竿で釣り上げて一首作っちゃおう!みたいな企画あって面白かったです。5W1Hゲーム面白くて好きだったなって思い出しました。
ほら見てよ、月が消えてく(つまり、そう、僕がしたのは月の話だ) (yuifall)