百人一首現代語訳 感想の注意書きです。
五十四・忘れじのゆく末まではかたければ今日を限りの命ともがな
新古今和歌集 巻一三・恋三・一一四九 詞書「中関白通ひそめ侍りけるころ」 儀同三司母
「忘れまい」と言ったあなたの言葉が、将来までも確実だとは思えないので、満たされた今日一日の命であってほしい。
今日ここで
私は死んでしまいたい
「忘れじ」というあなたの言葉に抱かれて
明日もあさっても
私はいらない
(さ・え・ら書房 『口語訳詩で味わう百人一首』 佐佐木幸綱)
「忘れない いついつまでも」は うそだから
今日で終わりの 命にしたいの
忘れないと言ったのは僕ついてくる声撒きながら曇る岬へ (米川千壽子)
これは米川千壽子の解説文が面白かったです。女性の立場から「通い婚」のつらさを詠った歌としては元歌が完璧だから、男性の立場から詠んだ、という内容なのですが、
だが、どんなに愛していても、女の捨て身の言葉に男が一瞬怯むことはなかったか。自分が女に囁いた言葉がその夜の香りとともにずっと自分にまつわりついてくるのを振り切って逃げたいと思ったことはなかったか。
とあり、その厳しくも鋭い目線とそこから生まれた歌に慄きました。
この「ついてくる声」は、「忘れないって言ったでしょ」なのか、「今あなたの腕の中で死にたい」なのか…。そして、「忘れない」というのはどういうことなんだろう。「きみを忘れない」じゃなくて、「今、この思いを忘れはしない」という誓いという意味かな。
しかしながら、「いつまでもきみを愛してる」などと言ったとして、年月が経ってから「きみは変わってしまったよ」と、愛が終わったのを相手のせいにするということもままあるわけです。特に女性はさー、(当時はどうか知らんけど)結婚、妊娠、出産で変わるでしょ。いつまでも、出会った頃の可愛い私じゃないでしょ。そこでのうのうと浮気をしたあげく、「変わってしまったのはきみだから」とか「きみは強いから一人で生きていける」などと言うむかつく男風な歌とか作ってみました。
あのころと違って きみは 強いからひとりでだって生きられるだろ (yuifall)
Live like it doesn’t exist
一本の矢になって飛ぶ明日とか愛は載せられないスピードで (yuifall)