百人一首現代語訳 感想の注意書きです。
三十八・忘らるる身をば思はず誓ひてし人の命の惜しくもあるかな
拾遺和歌集 巻一四・恋四・八七〇 詞書「題しらず」 右近
忘れられてゆく私のことはいい。心変わりしないと誓ったあなたの命が罰をうけるだろうことが惜しまれます。
あなたの心から消されて行く私
それはそれでいい だが
神かけて誓った誓いを
神はお忘れになりますまい
(さ・え・ら書房 『口語訳詩で味わう百人一首』 佐佐木幸綱)
忘れられることも思わず 誓ったわ
あなたが無事で いるといいわね
遠のけばきれいなきみの首すじに半月の刃の落つるをゆめむ (佐藤弓生)
この歌、佐藤弓生の解説に
「忘らるる身をば思はず/誓ひてし人の命の惜しくもあるかな」
だと、
「忘れられる私のことはいい。誓ったあなたの命が惜しい」
になるし、
「忘らるる身をば思はず誓ひてし/人の命の惜しくもあるかな」
だと、
「忘れられる身だとは思わずに誓った。今ではあなたの命が惜しい」
になり、解釈が分かれる、というように書いてあったのですが、「忘れられる身」はわたしで、「誓った人」はあなたではないの?やっぱり「忘らるる身をば思はず/誓ひてし人の命の惜しくもあるかな」ではないのかなぁ。
それにしても、本当は「忘れられる私のことはいいわ、罰を受けるあなたがかわいそう」なんてロジックはおかしいですよね。本当は忘れられたくないという空気が濃すぎます。佐藤弓生はそれを忖度なしに口語訳していて好感が持てました。まあ、当時はもっと「神罰」みたいなものが重くとらえられていたのかもしれず、その感覚は分かりませんが…。
どちらにしろ、恋を裏切られたからといって相手が罰を受けるはずもなく、多分のうのうと楽しく生きるんだろうなーという感が否めません。誓ったときのチャラい気持ちの歌作ってみた(笑)。あんまりひねりはありません。
人生が一度きりなら この夜が最後だったら きみといるのに (yuifall)
("Riptide" The Chainsmokers)