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百人一首現代語訳 感想6

百人一首現代語訳 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

三十三・ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ

古今和歌集 巻二・春下・八四 詞書「桜の花の散るをよめる」 紀友則

 

のどかな春の日の光の中を、落ち着いた心もなく、

桜の花は散っていくのだなあ。

 

はるのひの ひかり のどかに

はるのひの ひかり ゆたかに

はるのひの ひかり さすなか

 さくら はな はら ひら

   はな さくら ひら はらり

     ちる ちる ちり ちる ひらり

 

さ・え・ら書房 『口語訳詩で味わう百人一首』 佐佐木幸綱

 

ひさかたの 光しずかな 春の日に

 落ち着かなくて 花は散るのさ

 

講談社 『百人一首がよくわかる』 橋本治

 

ひかりというひかりのどかにあるものをせわしなく散るはなびらの春 (内山晶太)

 

幻戯書房 『トリビュート×百人一首』)

 

 百人一首の中には、別に現代語にわざわざ直さなくてもそのままで意味分かるし変えなくてもいいだろうと感じる歌がいくつかあって、これもその一つです。あとは「いづこも同じ秋の夕ぐれ」とかね。そういう歌をどうアレンジしているのかな、っていうのに興味があって取り上げてみました。

 

 佐佐木幸綱版では、「ひ」「は」という音に重点を置きつつ散っていく花びらの様子を「散らし書き」で表現していて、ヴィジュアル的にも美しくて面白いなと思いました。橋本治版は、まあこうなるよね、という感じです(笑)。内山晶太版は、元の歌のニュアンスを大事にしている感じが伝わってくる訳でした。やっぱりこの歌、大きくは変えにくいって思いますよね。。「ひさかたのひかり」を「ひかりというひかり」に、「春の日に」を最後の「はなびらの春」に持ってきていて、雰囲気を壊さずに言葉が現代語に置き換られていていいなと思いました。

 

 

のんびりのひかりひらひらはるのはなひかりのはやさではらはらちるの (yuifall)