百人一首現代語訳 感想の注意書きです。
十九・難波潟短き葦のふしの間も逢はでこの世を過ぐしてよとや
新古今和歌集 巻一一・恋一・一〇四九 詞書「題しらず」 伊勢
難波潟に生えている芦の節と節の間のように、短いわずかな間もあなたに逢うことなしに、一生を終えよというのですか。
難波の海の 短い芦の
その芦の 短い節の
一瞬さえも逢えないで
一生を過ごせと
あなたはおっしゃるの?
(さ・え・ら書房 『口語訳詩で味わう百人一首』 佐佐木幸綱)
難波潟 短い葦の 節の間も
逢わずにこのまま いろって言うの?
醒ヶ井の梅花藻の白い花ほども
ふれず
こころに
さわったひとよ (今橋愛)
この『トリビュート×百人一首』で一番感銘を受けたのが今橋愛の口語歌でした。歌もですが、本人による「読み」と解説も面白くて、元の歌と真摯に向き合う姿勢が見えてときめきました。この歌については、「あわでこのよをすぐしてよとや」という下の句をすごくすごく突き詰めていて、
そうか。これはうつくしい呪文なんやね。
だったらわたしも同じくらいうつくしいもので歌をつくろう。
と、「醒ヶ井の梅花藻」に辿り着くまでの思考を丁寧に辿っており、さらに
こころにさわったひとよ。は、「人よ」と、愛する人への呼びかけでもあるけれど。人をすきになるのは一瞬が永遠になってしまうことやから「一夜」、「一世」も掛けた。こころからすきだったこと。伝わりますように。
とあって、考え抜いた一首であることが分かります。元の歌の「葦」は消えているのですが、「難波潟」という地名が「醒ヶ井」に、「葦」が「梅花藻」にアレンジされていて、「逢はでこの世を過ぐしてよとや」が「ふれずこころにさわったひとよ」と変わっていて、これはすごいなと思いました。
これ読んでて考えたのが、今、2次元とか2.5次元とか、アイドルの推しとか、別に「会って」はいないし多分一生「会う」ことはなくても「こころにさわる」あるいは「生きる力を貰える」ということってあるよなーと。『腐女子のつづ井さん』(つづ井)というコミックエッセイを読んでいて、「アイドルは2.8次元。実際に生きている人ではあるけど、0.2次元分越えられない壁がある」みたいに言っていたつづ井さんの友達の台詞がけっこう心に響いたんですよね(笑)。同じ次元を生きている人でなくても生きる力を貰える!逢はでこの世を過ごせるのです。
あなたとは次元の高い壁があり逢はでこの世を生きてゆけるわ (yuifall)