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01x22 - No Good Deed 感想

 POI感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

 タイトルはNo good deed gose unpunished (罰されない善い行いはない)から。つまり、「正直者が馬鹿を見る」という意味合いだそうです。No good deedというサイコスリラー映画もあるんだとか。

 「善い行い」をしようとして自分の命以上のものを奪われたフィンチと、真実を追求しようとして命を狙われることになったペックの話です。

 

 冒頭のリースとファスコの会話。

 

Then call me next week. I'm busy with research.

じゃあ来週電話しろ。俺は調査で忙しい

Research?

調査?

You mean following your boss again.

またボスを尾行してるのか

You tailed him for weeks.

もう数週間やってるぞ

You couldn't even find out where he lives.

お前は彼の住所すら探し出せなかった

Yeah, well, unless you got an address, I'd say that we're both striking out, huh?

もしあんたも住所を探れなかったら、俺たちは両方ともやられたってことだな

 

 フィンチはアリシアにも尾行されているし次回ルートにも狙われるので、やたら色んな人につけまわされてますね。

 フィンチは出先で「番号」を受け取るのですが、S2以降の公衆電話が鳴るパターンじゃないです。携帯電話に通知があって、公衆電話でメッセージを受け取る方式です。“緊急プラン”以降受け取り方を変えたのか?

 

 さて、対象者は33歳の証券アナリスト、ヘンリー・ペック。リース君、明らかに興味なさそうです。なんなのこの態度(笑)。まあ、フィンチの謎を解明中でしたからね…。他の男に興味は持てないようですね。フィンチは「赤ちゃんとかマフィアのドンじゃなくて残念だな」と皮肉を言ってて笑える。「美女」じゃないとこもまた笑えます。しかしペックが秘密主義で孤独な男だと分かった途端嬉しそうにするリース君。この人どんだけボスが好きなの??

 ヘンリー・ペック同様、リース君もマシンの秘密に近づこうとします。

 

And it's time I knew how the machine communicates with you.

そしてマシンがあんたとどうコミュニケーションを取っているのか俺が知るべき時じゃないか?

Not to be blunt, but wouldn't you want me to keep doing this if something ever happened to you?

はっきり言えば、もしあんたに万が一のことがあった時、あんたは俺にこれを続けてほしいと思わないのか?

If something ever happens, I have...

もし私に何かがあれば…

A contingency.

“緊急プラン”がある

Well, sooner or later, you're gonna need to let the cat out of the bag, Finch.

なあ、遅かれ早かれあんたは秘密を打ち明ける時が来るんだぞ、フィンチ

Curiosity kills cats, Mr. Reese.

好奇心は猫をも殺すよ、リース君

 

 フィンチのCuriosity kills catsは、リースのlet the cat out of the bagを受けての発言だったのか。で、実際この後フィンチが誘拐されて「緊急プラン」が作動することになります。いやー、ほんとS1S2の面白さは何度見てもヤバいですね。

 

 さて、ペックはただの証券アナリストではなく、妙にセキュリティが強い職場にいて、全く情報を得られません。潜り込もうとしたリースが「俺の魅力を使うか」って言うシーン好き。魅力が通用する自覚があんのね。ところが受付嬢が通してくれず、

 

I'm surprised, Mr. Reese.

驚いたなリース君

That nice young lady seemed somehow impervious to your charms.

あの素敵な若い女性にはなぜか君の魅力が通用しないようだ

That nice young lady had a .45 pointed at me under her desk.

あの素敵な若い女性は45口径の銃をデスクの下で俺に向けてたよ

 

って会話面白すぎます。リースの「俺の魅力」が通用しないことにリースよりフィンチが驚いてて笑える。分かるよー、魅力的な部下だもんね♡

 でまあ、ペックの勤め先はSCIF(機密情報隔離施設)で、ペックはNSAアメリカ国家安全保障局)で働く一種のスパイであることが分かります。“古き良き”有線カメラを使って諜報行為を行う2人。ペックが「何か」を知ろうとしているために殺されそうになっていることが分かる…。

 

 フラッシュバックは2009年のフィンチとネイサン。2人はIFTにいて、「明日政府に正式にマシンを引き渡す」と言っています。ネイサンはアリシアに会い最終的な手順を確認するのですが、そこで「マシンを知るものは8人」と話してしまう。アリシアは「7人よ」と。ネイサンはうっかりフィンチ(ハロルド・レン)を人数に含めてしまっていた…。

 フィンチを除く7人のうち、これまでに登場するのはネイサン、アリシア・コーウィン、デントン・ウィークスの3人です。残り4人のうち1人が今回登場します。“Special Counsel”という肩書で登場する人物ですが、本名は最後まで出てこないっぽい。残り3人はコントロールとS2ラストで出てくるローレンス・シラード、S3終盤で出てくるロス・ギャリソン議員ですね。ギャリソン議員はマシンへの関与は2008年頃からで最初期は知らないらしいんですが、このシーン2009年ですからね。ちなみにRelevanceの回でウィルソンとダニエル・アキノの2人が“リサーチ”を知る人物として登場するけど2人ともそれぞれSpecial Counselとローレンスの部下っぽいし、ハーシュはコントロールの部下だし、最初の「7人」には入ってないと思う。

 

 アリシアはかなり不安げな様子。マシンがどうなるのか、マシンを知ったものがどうなるのか不安に思っていることが分かります。後日アリシアを殺そうとしたフィンチに「薄々こうなる(ネイサンが殺される)気がしていたのに無視していた。私のせいよ」というのはこのためなんだろうな。あと、この時にマシンを知る人がもう一人いる、とアリシアは多分感じていたんだと思う。だからネイサンの息子ウィルに「父の親友のハロルドおじさんを知らないの?」と言われてかなり焦った様子だったし、今回ヘンリー・ペックを尾行してついにフィンチに辿り着きます。

 フラッシュバックに戻ると、ネイサンはアリシアの不安げな様子が気になっていました。マシンは本当に正しく使われるのか?とフィンチに懸念を打ち明けますが、フィンチは聞き入れません。「だから私はマシンを暗号化し、誰もアクセスできないようにしたんだ」。しかし、ネイサンはフィンチがいなくなってからこっそりバックドア、“緊急プラン”モードを作成します。

 

 ネイサンとフィンチのフラッシュバックはいつもマシン絡みの緊迫したシーンがメインなので、フィンチがかなり自分勝手な人物に見えます。でも、「無用」リストを無視しているフィンチにネイサンが「君も大切な人ができれば分かる」と言うのですが、フィンチにはこの時すでにグレースがいた。その上、フィンチはネイサンだって大切に思っていたはずです。後で分かるのですが、フィンチはマシンに自分自身ですら守らないよう教えていました。ていうかむしろ、「大切な人がいる」からこそ「無用」番号なんて受け取れないと思ったんじゃないかなぁ…。私だったらそうだけどな。。大切な人と普通に暮らしたかったらそんなことは知りたくないですよね。

 ただ、フィンチが「有用」と「無用」に線引きをしたのは「大切な人がどうこう」っていう気持ちの問題とは無関係なんじゃないかなとも思います。単に、「テロから国家を守る」という目的以外で一切マシンを使用してはならない、という原理主義に基づく厳しさ故では?マシンには超強力な権限があり、アクセスする人間は何でもできるようになってしまう。だからフィンチは自分にすらアクセスを禁じ、マシンの私的利用を一切封印した。後にS5E10で分かるのですが、フィンチは「正しい」生き方というルールを自分自身に科しています。マシンの私的利用をしないこともその一つだろう。しかしそのルールのためにネイサンとルートを失い、ついにマシンの力を自分のために使うことを決意する。その力はたった一言で市民生活を破壊できるほど強力なものだった…。

 なのでその回でフィンチの真意が分かるようになっているのですが、でもそこまで見なくてもフィンチが何をしたくて、何をしてはならないと思っていたのか分かるよ。フィンチはネイサンに「君以外にマシンを託せる人はいない」と言います。どんなに意見が合わなくて緊迫した状況にいても、フィンチは究極的にはネイサンに心を許して信用しきっていることも、このシーンでは分かるようになっています。

 

 さて、ペックを尾行するうち、ペックが辿り着いた「謎」はマシンであることが分かる。フィンチは「彼が殺されそうになっているのは私のせいだ」とリースに打ち明けます。「彼が探っているのはマシンだ」と。そのため、「なるべく彼と接触せずに助ける」という高度任務に従事することになるのですが、ペックを狙っているのはISA(Intelligence Support Activity)のプロであることが分かる…。NSAだのISAだのなんのこっちゃですよ。「彼に接触するな」とフィンチがリースに言った直後に「危ない!」って物理的に接触して助けることになったシーンとか笑ったけどね。ペックは頭がいいのでリースのことも出し抜いて逃げまくり、しかも絶対に諦めようとしません。

 最後はフィンチが直接彼と話すことになります。

「君の質問の答えはYesだ。もう答えたのだからこれ以上追求するな」

 そして新たなIDを与えて逃がします。「なぜ知っている」と聞かれ、「私が作ったからだ」と答えるフィンチ。マシンの存在を知った途端、ペックの顔認識が黄枠に変わります。

 

 さて、前回リースの報われなかったラブロマンスが描かれ、今回はフィンチの番です。あと、リースのストーキングが一定の成果を得る回でもありますね。ゴミ箱から飲んでいるお茶を探り、その紙コップの出どころの会社を探り、買っている雑誌を探り、と些細な手掛かりからある家に辿り着きます。

 リース君、カーターと電話しながらゴミ漁りしてるんで会話の内容が全然頭に入ってこないよ…。しかもその後フィンチのデスクに足のっけてて、フィンチが戻ってきて「どいてー」のポーズするんで(身体傾ける)かわいすぎて会話が全然頭に入ってこない。どうしてフィンチをこんな萌えキャラにしたん??

 まあとにかくリースはついにフィンチの家を見つけた!と思い、その家を訪ねます。ところが現れたのは見知らぬ女性だった…。

 

I'll call you as soon as I'm done here.

俺がこれを済ませ次第お前に電話する

Yeah, right.

ああ、だろうな

Like you'll ever be done spying on Mr. Glasses.

あんたがメガネ氏をスパイし終えることができないみたいにね

Next time I see you, I just might have his address.

次お前に合う時は彼の住所くらい掴んでるさ

John, your order's ready.

ジョン、注文のものが仕上がったよ

And you're here every day?

きみはここに毎日来てるのか?

Hello, Finch.

見つけたぞ、フィンチ

 

Can I help you?

どなたかしら?

Sorry to bother you. Detective Stills.

煩わせてすみません。スティルス刑事です

Someone reported a disturbance at this address.

この住所で騒いでいると誰かが通報したものですから

Really? I'm the only one here.

本当に?私一人しかいないのよ

Probably just an old lady who saw a shadow or a kid playing a joke.

おそらく幽霊を見た老婦人か子供のジョークでしょう

We just have to check everything out.

たた、確認しなくてはならないんです

Do you want help with these?

これらを運びましょうか?

Uh, sure. Thanks.

そうね、ありがとう

There must be about 50 copies here. You a collector?

50冊はありそうだ。収集家ですか?

Uh, kind of. They send me extras when it's one of mine.

そんなものね。私のものが載ると余分に送ってくれるの

You draw the covers.

表紙を描いているんですね

Yeah. A bit old-fashioned, I know. Everything's going digital. Print is dying.

そう、古臭いわよね、分かってる。なんでもデジタル化して、手書きは死にかけてる

But, uh, every time I think I'll never work again, another magazine or newspaper calls, so...

でも、いつももう仕事なんてなくなると思うたびに、他の雑誌や新聞から声がかかるの

Guess I have a guardian angel.

守護天使がいるみたい

Who's this?

これは誰ですか?

Um, that's Harold, my fiance.

ああ、これは、ハロルドよ。私の婚約者

Looks like a nice guy.

素敵な人のようだ

Yeah. He's a very nice guy.

そう、彼はとっても素敵な人なの

I never really thought that I'd meet anyone who got me.

私を好きになってくれる人と出会うことが出来るなんて思ってもみなかった

You know, spending all your time alone, drawing, isn't exactly the best way to find someone.

だって、たった一人で絵を描くのにすべての時間を使うっていうのは、誰かと出会うのに最適な方法とは言えないわよね

But Harold found me.

でもハロルドが私を見つけてくれた

I was painting in the park one day, and... There was this man, eating an ice cream cone in January.

私はある日公園で絵を描いていて、そして彼がいたの。1月にコーンのアイスクリーム食べてた

And he smiled at me. He asked me if I wanted one.

彼は私に微笑んで、一つ欲しい?って聞いたの

Does he live here with you?

彼はあなたとここで暮らしているんですか?

No, he doesn't. Um, he used to.

いいえ。昔はそうだったんだけど

I lost him two years ago. There was an accident.

2年前に亡くなったのよ。事故だったの

I'm sorry.

残念です

 

 グレースがハロルドのことを現在形で語るの、すごく切なくなりました。「私の婚約者よ」「彼、とっても素敵な人なの」だからリースは「一緒に暮らしているのか」と聞いたんだろう。でも「2年前に事故で亡くなった」と。マシンのためにフィンチが何を捨てなくてはならなかったのか、ネイサンに加えてグレースのこともリースはここで知ることになります。

 グレースの「守護天使」ってフィンチのことなんだろうな。裏から色々手をまわしてグレースの仕事が途切れないようにしてたんだろう。こうやって彼女の絵が表紙になれば、本を何十冊も買って。

 

 グレースの家から出てきたリースにフィンチが接触します。フィンチは明らかに、リースが探っているのを知っていて手掛かりを与えていたことが分かります。雑誌を何十冊も図書館に置きっぱなしにしていたことも、同じスタンドのお茶を買い続けていたことも。

 グレースと話したリースはかなり気まずそうだし、辛そうでもあります。多分、フィンチの家を探ることは、単に「秘密主義」のボスとの一種の駆け引き、ゲームみたいに思ってたんだと思う。E2で職場の一つを突き止めたみたいに。でもフィンチがリースに教えたのは自分の家ではなかった。もっと大切なものだった。リースの表情は、まさかあんたのここまで踏み込むつもりじゃなかったんだ、っていう罪悪感にも似た気持ちに見えます。前回リースのsensitivitiesが描かれましたが、今回はフィンチが自分のsensitivitiesをリースに開示する回でもありました。

 

Good location.

いいところだ

Clear line of sight, but enough obstructions and distance to avoid being seen.

視界はクリアだが十分な障害物と距離があって見つけられるのを避けられる

I built an app that alerts me if I ever get within 100 meters of her.

彼女の100m以内に近づけば警告してくれるアプリを作った

I've never regretted building the machine.

マシンを開発したことを後悔したことはない

But I didn't fully realize the personal cost.

しかし、それがどれだけ個人の犠牲を払わなくてはならないものなのか、完全には認識していなかった

I'm good with computers.

私はコンピューターが得意だ

People-- Well, people other than Grace-- have always been a mystery to me.

人々は…、グレース以外の人々は、私にとって常に謎だ

I failed to recognize the lengths to which they would go to protect the machine, to control it.

私は彼らがマシンを守るために、支配するために、どれだけのことをするか見誤った

By the time I realized it, it was too late...

それが分かった時にはもう遅すぎた

For me. But not for her.

私にとっては。しかし、彼女にとっては違う

You see, Mr. Reese, if knowing about the machine is like a virus, that makes me patient zero.

リース君、マシンを知っていることをウイルスに喩えるならば、私は最初の感染者だ

Simply being near me was putting her life in danger.

私のそばにいるだけで彼女の命が危険にさらされる

I'm sorry.

残念だよ

I was lucky.

私は幸運だった

I had four years of...Happiness.

私には4年間の…、幸福があった

Some people only get four days.

4日間しかそれを得られない人もいる

 

 フィンチはペックに「私は自分の命以上のものを奪われた」と話します。それはネイサンの命と、グレースと生きる未来だった。愛する人を2人も奪われたことになります。

 

 リースがジェシカを愛したように、フィンチもグレースを愛した。2人とも、自分が生きている世界から最も遠い女性を女神のように愛したんですね。リースは自分の抱える過剰と欠落のためにジェシカを手放してしまい、彼女は亡くなった。フィンチは自分の業でグレースを危険にさらすことになり、彼女を守るために手放した。愛する人には汚れなくいてほしい、純粋なままで守りたい、という気持ちも分かる。せめて遠くで幸せに過ごしてほしいという気持ちも。でも2人とも、彼女を自分の人生に真に巻き込むことができなかったために一緒にはいられなくなってしまったんだなあと。

 フィンチは言います。マシンを知るものは殺される。この後S2冒頭にかけて政府関係者も何人か死にますからね…。そして、「私には4年間の幸せがあった。4日間の人もいる」と。前も書いたんですが、これ聞いて、リースがジェシカとメキシコで過ごした休日は4日間だったんじゃないか、と思ってます。そのたったの4日間がリースにとって人生で一番いい時間だったんじゃないか、って。

 まあ、これはロバート・ジェームス・ウォラーの『マディソン郡の橋』のことを言っているのかもしれませんが。。

 

 最後、アリシアについに存在が気づかれるところで終わります。S1ラストに向かってる感じでぞくぞくしますね!

yuifall.hatenablog.com

 ところでWikiには「リースがフィンチをつけまわすのはこれで正式に終わった」とあるのですが、さすがに思いもよらないものを見せられてリース君もびびったのか?まあこの後フィンチが誘拐されてからは眼鏡にGPSになりますから、もう尾行どころじゃ済まさないって感じですかね…。

 

POI:ヘンリー・ペック(被害者)

本編:2012年5月7日~10日

フラッシュバック:2009年(6月10日~12日のようです)、フィンチ(ネイサンとIFT)