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01x18 - Identity Crisis 感想

 POI感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

 この回はフィンチがかわいすぎるのですが、最後の最後にでっかい爆弾落としてきます。

 

Good night, Harold.

Good night, Nathan.

 

 な、何事ー!!!???この一言、「ネイサン」ってたった一言にどれだけの腐女子が衝撃を受けたか…。分かっててやってんのかな…。怖すぎるわ…。

 

 ストーリー的にはIDを盗まれた方のジョーダン・へスターがかわいそうな回なんですけど、IDを盗んだ方のジョーダン・へスターも魅力的で困ります。身分乗っ取りが起きているためにどちらが脅威の対象者で、しかも加害者なのか被害者なのかも分からないという二重に分からない状態で話が進んで面白いです。

 

 冒頭、Good morning, Mr. Reese. というフィンチの挨拶に対しリースが If you say so. と返すのですが、字幕では「おはよう、リース君」「もう昼だが」、吹替では「いい日だな」「あんたがそう言うなら」になってました。カメラの時刻によれば朝の6時50分頃で、別に昼でも何でもないです。一体なぜ普通に「おはよう」ではなく If you say so. って返した??

 リース君は素直じゃない挨拶しながらも、こんな朝っぱらからクロッカンを買ってきてくれてます。

 そして今気づいたんですが、この回、 Good morning, Mr. Reese. で始まって Good night, Nathan. で終わるんですね…。

 

 対象者のジョーダン・へスターにはほとんど情報がなく、写真すら手に入りません。「SNSにもデータがない」「あんなのに個人情報をさらす奴らの気が知れない」「あれは私が作ったんだ」って会話笑える。フィンチはPOI世界ではネットの支配者みたいな存在ですね。へスターは二重生活者である可能性が浮上し、2か所の住所をそれぞれ抑えるために2人別々に行動することになります。

 

 リースの調べているへスターのブルックリンのアパートは質素で、床に直にマットレスが置いてあり、トレーニング用品くらいしか物がありません。「スパルタニアンだな」ってリースの発言が笑える。こちらのへスターはブルックリンのバーに勤めている男性でした。

 一方フィンチの調べているジョーダンの方はグリニッジ・ビレッジの高そうなマンションに住んでいて、おしゃれな家具にハードカバーの本がたくさん、クローゼットには高そうな靴やコートがぎっしり。いかにもインテリ風の女性です。

 さらにどちらかのジョーダン・へスターがアッパー・ウエストサイドに高級マンションを持っていることが分かるのですが、ここはMDMAの製造工場だった…。どちらかのへスターがIDを乗っ取って麻薬を製造していることが分かります。しかしマシンが検知するのは死の脅威。一体どちらのへスターが本物で、どちらに脅威が迫っているのか?

 

Two people, one social security number, only one can be Hester, so someone is an imposter.

2人の人物、1つの社会保障番号。へスターは一人だけだ。どちらかは偽物だ

 

 このフィンチの発言、number, Hester, imposterで韻を踏んでいてなんか笑えた。あと、

 

Will the real Jordan Hester please stand up.

本物のジョーダン・へスターはどちらなんだ

 

という発言は、1950年代のアメリカのテレビ番組To Tell The Truthのパロディなんだとか…。日本で言うと、あれかな。『まほろ駅前多田便利軒』で「なんじゃこりゃあー!」って『太陽にほえろ!』のパロディしてるみたいな感覚?こういうの海外ドラマでやられると元ネタが分からんので困る…。

 

 さてこの回は完全に腐女子サービス回ですね。そうとしか思えん。フィンチはどんどんジョーダンのことが気に入ってしまい、しかも尾行がへたくそ過ぎてかわいすぎます。最初正体不明の偉そうな金持ちとして登場したのに、S1の時点ですでにかわいすぎて化けの皮剥がれまくりだよね…。

 尾行がおそまつなのでジョーダンの方から接触され、うっかり会話しちゃったりするフィンチ。ジョーダンとフィンチが親しくなるたびに介入してくるリースが束縛彼氏みたいで笑えます。

 

Jordan's emails indicate that she works in antiques, maybe as a buyer or a dealer.

ジョーダンのメールは彼女がアンティークの仕事をしていることを示唆している、おそらくバイヤーかディーラーだろうな

"Jordan"?

“ジョーダン”?

Are you on a first name basis already?

もうファーストネームで呼び合う仲か?

No, I'm just... Tired of using pronouns.

そうではない。私はただ…、代名詞を使うのに疲れたんだ

 

 on a first name basisで「親しい間柄」だそうです。

 

I'm Harold.

ハロルドだ

Jordan.

ジョーダンよ

Excuse me a moment.

失礼

Why are you calling me?

なぜ電話を掛けてきた?

Why are you talking to her?

なぜ彼女と話してる?

Because I haven't your gift for avoiding people.

なぜなら私は君のように人々を避ける才能に恵まれていないし

Besides, she seems nice, and she has excellent taste in literature.

それに、彼女は素敵な人に思えるし、文学の趣味もとてもいい

Or she knows you're tailing her, and she circled back for a closer look.

もしくはあんたが彼女を尾けていることに気づいて、反対に近づいてきたのかもしれない

 

 接触するや否やイヤホンではなく直電で妨害(笑)。

Why are you calling me?

Why are you talking to her?

このやり取りも笑えます。

 その後もジョーダンとお茶しているフィンチに「お茶はおいしいか」と嫌味ったらしく絡んでくるし。

 

 あとはリースとへスターの会話も面白いです。「ヤクの売人っぽい服だと思ったのか、それ」「最悪の計画だな。だが、気に入った」とかって。へスターが「俺は内気で、一人が好きなだけだ」って言った時「そういう奴を知ってる」って。リース、何かと対象者とフィンチの話したがるよね。なんかちょっとでも共通点があると「知り合いにもそういう奴いるよ」ってさ。

 リースがへスターのバンに侵入したときの独り言?フィンチとの会話?も笑えます。「いつもPCを持ち歩いているらしい。あんたと同じく用心深いな」「パスワードを破らなくては…いや忘れてくれ。パスワードはかかってない。思ったより用心深くないな」って。

 

 さて、前回カーターに嫌われてしまったので今回はファスコを働かせるリース君。今までファスコはHRに潜入させて「悪い警官」役をやらせていたのに、カーターを頼れないことでファスコに「いい警官」役もお願いすることになります。ファスコは文句を言いながらも働いてくれるいい子だよ…。

 一方カーターは17歳の少年が殺された殺人現場で(これは突発的な事件のようでした)「俺を止めなかった警察が悪い」という犯人の発言をターニー刑事から聞き、複雑な顔をします。事件を事前に防ぐことができたら…。でもリースの電話に応答する気にはまだなれない様子。

 ところがそこに接触してきたのはドネリー捜査官でした。おお、ここからドネリーさんがリースを追い始めるのか。ドネリーの的外れ推理楽しすぎて好きです。リースはイライアスに雇われて汚れ仕事をしてる、とか言ってます。まあ、E7で実際イライアスを助けたしね…。E3では強盗もしたし、E8ではスパイを殺したし、E13ではFBIから容疑者を奪い取ったし、E15では麻薬組織に潜入したし、前回も人身売買組織に絡んで撃ち殺した挙句にイライアスにモレッティの居場所教えてるからね…。ドネリーから見たらそう見えるわ。私もFBIだったらそう思うかもなーって思っちゃうので憎めない人なんですよね。真面目だし。

 

 その他細かい感想としては、

・冤罪で捕まった人の演技が迫真で、何気にすごかったです。

・フィンチの偽ID、私立探偵のハロルド・クロウでした。

・フィンチが「どちらかは偽物だ」って言った時リースが「どっちが本物か賭けるか」って言うシーンがあります。ここ最初聞いた時は特に引っかからなかったのですが、S3でショウが「賭けよう」って言ってフィンチが「対象者を賭けの対象にするなど、そんな下劣なことはしない」と返し、ショウが「今まで賭けたことないわけ?」って言うシーンがあったので、S1に戻ってみてあれ?って思った。で、原文ではリースはGood luck telling who's who. (どっちがどっちか見分けられたらラッキーだな、みたいな?)って言ってて、別に「賭ける」とは言ってなかったです。多分そんな深い意味なく和訳したんだと思うんですが、細かい点で後で食い違っちゃうことあるんだなーと、邦訳の大変さを思いました。。

 まあでもこの回「どっちが先に見つけられるか昼食を賭けるか?」って会話もあったし「賭け」をそんなに問題視するのは深読みすぎるとも思うのですが、対象者を賭けの対象にするのはやっぱ違うかも。

 

 なんだかんだでへスター(男)の方が本物でジョーダン(女、本名はタラ)がID乗っ取りの犯人かつMDMAの売人ということが分かるのですが、リースがへスターを守っている間、フィンチはジョーダンにMDMA(エクスタシー)を盛られちゃいます。楽しすぎる。フィンチがラリってる!!まさにアイデンティティ・クライシスですね。

 

Finch, are you there?

フィンチ、聞いてるか?

I most certainly am.

概ね確かに聞いてるよ

You need to get out of there.

そこからすぐに出ろ

He wasn't planning to kill her, so she must still be planning to kill him.

彼が彼女を殺そうとしてたんじゃない。彼女が彼を殺そうとしてるんだ

Why, I never...

なぜ?絶対にお断りだ

Harold? You all right?

ハロルド?大丈夫?

I believe you've drugged me.

私にクスリを盛ったな

Ecstasy. I told you you'd feel better.

エクスタシーよ。気分がよくなるって言ったでしょう

My dopamine and norepinephrine levels are...Whoosh.

私のドーパミンとノルエピネフリンのレベルが、ああー、

But if I understand this process, I can counter the ef--

でもこの作用が分かれば、それに対抗することも…

Well, hello there.

やあ、こんにちは

Well, it was either this or shoot you.

こうするか撃つか悩んだんだけど

I find chemistry...So much more efficient.

ケミストリーがあった…、クスリの方が有効だわ

Finch, I've got this end under control.

フィンチ、こっちはどうにかした

We're preparing a surprise for our mutual friend.

俺たちの共通の友人を驚かせる準備をしよう

Our Mutual Friend, Charles Dickens, published... 1864, '65.

チャールズ・ディケンズの『互いの友』は1864年~1865年に出版された

The plot turns on a case of concealed identity!

それは身元を隠した人間についての話だった

How ironic.

なんて皮肉だ

Hey, do you have a copy?

一冊持っているか?

What?

何?

What?

何だ?

Finch, are you all right?

フィンチ、大丈夫か?

Never been all right-er.

これ以上大丈夫なことはない

But I might have been outfoxed. Finch outfoxed.

でも私は騙された。フィンチはハメられた

Finch, what's going on?

フィンチ、何が起きてる?

What the hell are you doing?

あんた一体どうなってるんだ?

Finch?

フィンチ?

Hey, hey, hey, hey, hey, that is my very good friend.

何だよ、これは私のとてもいい友達なんだ

Who was it? Who is he? Where is he?

誰なの?彼は誰?彼はどこにいるの?

Nowhere that matters, and not in the lab.

どこだっていいだろう、それに、工場じゃない

Oh, no.

あーあ

Joseph, it's me. You need to get to the lab. No, now.

ジョセフ、私よ。早く工場に行って。ダメ、今よ

We've got bigger problems than I thought.

思ってたよりも大ごとになってる

I'm taking care of things here. I'll meet you there.

こっちをどうにかしてるところ。そちらで会いましょう

I like your face sideways.

きみの横顔も好きだ

I'm sorry, Harold.

ごめんなさいね、ハロルド

Fast as you can, Fusco. 851 12th street, The Village. Finch is in trouble.

できるだけ早く行け、ファスコ。フィンチが危険だ

All right, I'm on it.

分かった、すぐに向かう

 

 ジョーダンのI find chemistryって言い方は、「薬品」のchemistryであると同時に「あなたと私の間にはケミストリーがあったから、射殺せずにドラッグを盛ったのよ」みたいなニュアンスかなって感じました。

 

 POI、基本的に字幕版(本人の声)が好きなんですが、時々吹替版のリースの喋りがめっちゃ面白い時あるので聞き逃せない…。この会話で「What?(はあ?)」って言ってる時のリースがめっちゃかわいかった(笑)。なんか、素が出た!みたいな。

 そして何よりラリってるのに紳士的でインテリゲンチャなフィンチがすっごく好きです。「この角度から見ても綺麗だ」って♡あと電話を壊されて「ああー、とっても大事なお友達なのに~」っていうシーンときめくわ。リースには聞こえてないんだよねー、残念。

 リースは珍しく焦ってファスコに「すぐに行ってくれ。フィンチが危ない」って萌える…。でファスコが確保してくれると、すごいほっとした顔で「よかった。ありがとう、ライオネル」って珍しく素直です。ファスコに優しいやん…。フィンチを助けてくれたら優しくなんの??しかしフィンチはファスコのパトカーの助手席でサイレン鳴らしたり変な笑い声上げてたり「ペンタゴンにハッキング?」とか言い出してます。笑える。ファスコはずっと「こいつやべえ」みたいな顔してるんですが、明らかにラリってるフィンチにマジな話すんなよ…。

 リースとファスコの会話、「いい警官と悪い警官、どっちをやりたい」「あんた次第だ」も好き。

 

 それにしても、リースはフィンチがエクスタシー盛られたあたりからへスターと薬品工場にいて、ジョーダンが駆けつけるまでずっといるんですが、Google mapによればグリニッジ・ビレッジからアッパー・ウエストサイドまで車で20分くらいかかります。てことは30分くらいずっとそこにいたわけ?一体そこで何してた?

 

 で、ラストシーン。

 

Whoa, why didn't you tell me I had so many books?

わーお、どうして私がこんなに本を持ってるって教えてくれなかったんだ?

It'll be out of your system in a few hours.

何時間かでそれはあんたの身体から抜けるだろう

But you should really drink this, so you don't get dehydrated.

でも本当にこれを飲むべきだ、脱水症にならないために

You're leaving?

行ってしまうのか?

No, I'll stick around, keep an eye on you.

いや、この辺にいてあんたを見張ってるよ

You should really get some sleep.

眠った方がいい

You don't want to talk?

話したくないのか?

You might regret it in the morning.

朝に後悔するだろうよ

You're a very private person, remember?

あんたはとても秘密主義だろう、忘れたのか?

Come on. Ask me anything.

なあ、何でも聞いてくれよ

Good night, Harold.

おやすみ、ハロルド

Good night, Nathan.

おやすみ、ネイサン

 

 まずラリってるのに本かよ。本読めるの??なのにリースが行っちゃうってなったら「行かないで、おしゃべりしよう」って…。この回ほんと何なの??私たちは何を見せられているの??ここで戸惑ったようにまばたきするリースもかわいい。リースはあれほどストーキングしてたのにあくまで紳士的にお断りします。尾行はいいけどクスリ盛って話聞き出すのはダメなんだ…。なんかすでに2人の間に信頼関係ができてる感じがさあ…。ボスの信頼を裏切りたくないんだよね…。

 そしてこのシーンだけで心臓に負担がかかるくらいときめいているのに、最後の最後に爆弾が。

「おやすみ、ネイサン」

 ネイサンかよ!!なんでそこで出てくる??元カレか??普通ラリってる時に友達の名前呼びますかね??グレースだったらまだ分かる。4年も付き合ってたんですよ(まだストーリー上出てきてないけど…、逆に女性の影の匂わせ全然アリじゃないですか)。なのになぜネイサン??「ジョン」じゃないのかよ。ネイサン。もう、複雑な人間模様が垣間見えてマックス萌えました。てか、E16でフィンチのかっこよさにまいってるところでE17に2人の夫夫喧嘩?を見せつけられ、E18では元カレ交えた三角関係です(笑)。POIこわいー、でも好き。めっちゃ好き。

 

 これ、リースには聞こえてたのかなあ。聞こえてるかどうか微妙な感じですよね(Wikiでは「聞こえてない」って書いてますが、その証拠もないし)。もし聞こえてたとしたらどう思ったんだろう。ネイサンのことは(ウィルのネットストーキングで)どんな人物か知ってるはずだし(というよりも、超大手IT企業のCEOでスティーブ・ジョブズがモデルなんだから普通に誰だって知ってる系の人なんだろう)、ネイサンとフィンチが写った若い頃の写真も見てる。多分、大学時代に出会ってからネイサンが死ぬまでずっとパートナーだったんだろうということは薄々察していたはず。E1で「大事な人を失ったのは君だけじゃない」って言ったその本意にも気づいていたのではないかな。だから、リース的には「人生の長い時間を仕事のパートナーとして一緒に過ごした相手の名前を無意識に呼んだ」という認識なのかも。

 でも、フィンチがここで「ネイサン」って言うのはなー。やっぱり、罪悪感なのかな…。この廃図書館はネイサンが遺した場所だということも後で分かるし、ある意味では「自分が殺した」という痛みとしてフィンチの心に残り続けているのかも、ってかなり切ない気持ちになった。やっぱりこの時点ではフィンチ的には「パートナー」、理性を失った時に心の奥で一番頼りたい相手はまだネイサンなんだろうなと。というより、リースは持ちつ持たれつのパートナーだけどネイサンは一方的に守ってくれた人に思えるので、そういう意味で完全に心を許せる相手はまだネイサンしかいないんだろうなあと思います。グレースにも打ち明けていない本名や来歴をネイサンは全て知っているわけだし。

 ちなみにWikiによるとネイサンがフラッシュバックで登場する予定の回だったらしい。

 

 この時の2人の気持ちを完全に推し量るのは無理なんですが、萌えに萌えますね。S2ラストまでの流れを見ると、もしかしたらS3、特にローマのあれ以降だったら「ジョン」って呼んでくれたかもなって気もするよね。

 

 それにしてもフィンチがジョーダンと親しくなるたびに牽制し続け、「危ない、そこを出ろ」と警告し、ファスコをやって助け出させ…とフィンチに尽くしまくりなのに最後に他の男の名前呼ばれちゃうリースがかわいそうで好き(笑)。多分「ハロルド」って呼んじゃったからだよね。「ネイサン」って返されちゃったのはさ…。

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POI:ジョーダン・へスター(被害者)/タラ・ヴァーランダー(加害者)

本編:2012年3月頃

フラッシュバック:なし