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01x03 - Mission Creep 感想

POI感想の注意書きはこちらです。

yuifall.hatenablog.com

 日本語タイトルは『償い』、英語タイトルはMission Creepでした。ググってみると、(アルクによれば)

 

〈米〉ミッション・クリープ、終わりの見えない展開◆本来は米軍事用語で任務を遂行する上で目標設定が明確でなく当初対象としていた範囲を拡大したり、いつ終わるか見通しが立たないまま人や物の投入を続けていかなくてはならなくなった政策を意味し批判的に使われる言葉

 

だそうです。

 

 前回は対象者とフィンチの内面が重ね合わされましたが、今度はリース編です。フラッシュバックでは、ジェシカとの空港の別れが描かれます。

 対象者のジョーイも、愛する女性ピアを待たせたままで“秘密の仕事”をしている人物でした。

 

 冒頭、フィンチが机に突っ伏して寝ててかわいい!!リースはフィンチに飲み物を買ってきて「おはよう、フィンチ」とかのたまいます。この時の「ノックしないのか?」「避けられるならしない」って会話笑える。

 POIに関しては吹替よりも圧倒的に字幕、というか、本人の喋り方が好きなんですよね…。特にマイケル・エマーソンさんが好きすぎて…。この時の

Don't you knock?

って言い方めっちゃ嫌そうで超かわいい。吹替は淡々としすぎててなんか…。リースもあの囁き声が好きだからなぁ。

 そういえばこの時リースは何を買ってきたんだろうか。最後まで分からなかったし、フィンチがそれを飲んだかどうかもよく分からなかった。

 で、「仕事をやめさせてすまなかった。新しい仕事はどうだ? 犬の散歩とか、ピアニストとか」「仕事はあるよ、リース君。君にもだ」って会話も超好きです。POI初期の冒頭の2人の会話いつも好きだな…。

 

 新しい番号が出たこと、対象者ジョーイ・ダーバンは腕のいい帰還兵であること、今はドアマンをしていることが分かり、リースは仕事へ出かけます。「徹夜で働くつもりならもっと鍛えた方がいい」と言われて憮然とするフィンチ。かわいい。

 ところでWikiを見ると、前回Ghostsの最終日(フィンチがIFT辞めた日)とこのMission Creepの初日が同じ日になってるんですが、時系列おかしくないか?

 

 ジョーイを追うリースですが、ジョーイはずっとドアマンしていてつまらない…。で、フィンチに電話(笑)。この会話も好き。

 

Hey, Finch. Finch, are you there?

なあ、フィンチ。フィンチ、聞いてるのか?

Yes. Is there a problem?

ああ。何か問題か?

What are you doing?

あんた何してる?

Nothing.

何も

Thought you said you'd never lie to me.

あんたは俺に決して嘘をつかないと言ったと思うが

What's the problem, Mr. Reese?

何が問題なんだ、リース君?

Our guy, Joe Durban...

対象者、ジョーイ・ダーバンだが…

I've been on him for eight hours, and all he's done is open doors for old ladies, and now he's going window shopping.

俺は彼を8時間監視したが、彼のしたことと言えば老婦人にドアを開けてやることだけだ。そして今ウインドウショッピングをしてる

If the machine's given us his number, he must be caught up in something.

もしマシンが番号を出したなら、彼には必ず何かが起こるんだ

He got a text, it's a bit garbled. Sending it over.

彼はテキストを受け取った。意味が分からない。送ったぞ

"Anchor D-0." This supposed to mean something?

アンカーD-0。これは何を意味してるんだ?

I don't know. You're the genius.

分からない。天才はあんたの方だろ

 

 Are you there? はこの回からでしたね。今回はAlwaysとは言ってくれなかったなぁ(笑)。

 フィンチは電話しながら腕立てしてて、リースは「何してる?」って。この会話面白いんですが文字にすると伝わりにくいわ…。「嘘はつかないと言っただろう」だってさ。フィンチってリースに嘘ついたことなかったんでしたっけ。今後気をつけて見てみよー。

 この直後にジョーイは銀行強盗して、フィンチが「解読できたぞ。銀行だ」と言った時にはもう遅く…。リースは「やられたよ」と憎々し気に言って銀行を出て行きます。よく考えたらフィンチは5分以内に暗号解読してくれてるんですけどね。ジーニアス。

 

 この後ジョーイは他の女性とも会っていることが分かります。危険な裏稼業に二人の女性…。加害者であっても被害者であってもおかしくない状況に、フィンチは「何かが起こる前に警察に通報しよう」と言いますが、リースは「元軍人がどうしてこんなことに手を染めているのか知りたい」と通報を躊躇います。リースはジョーイに自分を重ねてる。待ってくれている女性もいるのに、危険な仕事に手を染めるのはなぜなのか。

 

 フラッシュバックは2006年2月12日の空港のシーン。ジェシカが「戻ってきているとは知らなかった」「婚約者と東部に戻るの」と言っていたので、アメリカ国内の東部以外のどこかの空港です。ここで、2001年から2006年のどこかでリースがジェシカのもとを去ったことが分かります。「待っていたのに」と言うジェシカに、「待てとは頼んでいない」と答えるリース。

 

No, you didn't. You just...Left.

そう、言わなかったわ。あなたはただ…去ったの

Because you thought you'd get killed over there, and that that would hurt me.

戦地で死んだら私が悲しむと思ったからそうしたのよね

But I think the truth is that it was easier for you to be alone.

でも本当は、一人でいる方が楽なんでしょう

That's one of the things you learn over there--

戦地で学んだことがある

In the end, we're all alone.

結局は、人は皆一人だ

And no one's coming to save you.

誰も助けには来ない

Be happy with Peter.

ピーターと幸せになれ

 

 リースとジョーイの生き方が対比されます。リースには待っていてくれる女性がいたのに、彼女を捨てて去った。それは、一人でいる方が楽だから。そういう生き方しか選べなかったからです。これをリースが初めて自分に認めるのはS4E20ですが、ジェシカは分かってたんですね。後から見直すと余計にやり切れないです。彼女は別の男性と婚約しており、この1年後には「番号」が出ることが分かります。

 ジョーイにも待ってくれている女性がいる。リースはジョーイに感情移入し、彼を何とか危険から救い出そうとします。「人は一人だ、助けは来ない」と言っていたリースは、ジョーイを救うことで過去の自分を救いたかったのかもしれない。

 

 フィンチの策略でリースは強盗団に潜り込むことに成功し、ジョーイに接触します。

 

Killing in battle, in combat, is one thing.

戦場で、戦闘の中で人を殺すことはある

Killing someone up close...

だが、至近距離で…

Someone who can't fight back, that takes a different sort of killer.

無抵抗の人間を殺すことは、全く違う種類の殺しだ

And Joey's not one of them.

ジョーイはそんなことはしない

So you think Joey's the target.

つまり君は、ジョーイは被害者だと考えている

Then who's gunning for him?

その場合、誰が彼を殺す?

One of the gang? One of the women?

ギャングの一人か?女性のどちらかか?

Do we even know why he's such a mess?

そもそも一体なぜ彼はこんなことに手を染めたんだ?

He's got a job, pretty girlfriend, good service record--

彼には仕事があり、美しい恋人がいて、素晴らしい軍歴もある…

He's throwing it all away. He's going to end up in prison. Or dead.

その全てを投げ捨てて、刑務所に入ろうとしている。あるいは、死ぬか

You're right, but, not every ex-soldier meets a reclusive billionaire.

確かにそうだ。だが、全ての元軍人が引きこもりの大富豪と出会うわけじゃない

Okay.

そうだな

But if Joey's bad choices mean he's about to walk into a bullet, we have to find out who's firing it.

しかしジョーイの悪い選択は彼の死を意味する。我々は誰が彼を害しようとしているのか確かめなくては

 

 「戦場で人を殺すことと、人殺しは違う」と言うリース。こういう発言もあって、私はリースはピーターを殺したんだと思ってるんですが、まあそれは置いておいて…。

 

 ジョーイとリースの会話から、退役軍人のやり切れない現状が語られます。戦地では国を守るために戦い、国に戻ることを夢見たが、戻ってみると金も仕事もなかった。裕福な暮らしをしているのは金融業の人間たち。だから銀行がターゲットなのか、と思わせるやり取りですが、その後ジョーイには更に事情があることが分かります。彼は戦地で友人を亡くしていた。自分が乗るはずだった車に乗った友人が、地雷を踏んで亡くなったんです。友人には妻と生まれたばかりの娘がいた。彼が会っていた「もう一人の女性」は亡くなった友人の妻でした。ジョーイはその娘のために、学資を稼ごうとしている。そのために大金が必要だったんですね。

 

 一方で、「スーツの男」を追うカーターの調査で、強盗団には元締めがおり、元兵士をどんどん入れ替え、必要がなくなったら殺して新しいメンバーに変えているということが分かります。「スーツの男」が強盗団の一員かもしれないと疑ったカーターは彼らを捕まえるために強盗団の捜査に加わりますが、すんでのところで取り逃してしまいます。

 ところでこの、過去に殺された強盗団の2人は番号出てなかったのかよ、とか考えてしまうのですが…。リースと組む前だから助けられなかった、というのはあり得るけど、強盗団の存在そのものを掴めていなかったということあり得る??計画的殺人は「番号」出ちゃう設定なんだから、過去の殺しの扱いももっと気を遣ってくれ…(シナリオ的な意味で)、と思ってしまいました。

 

 リースはジョーイを説得しようとしますが、彼の決心は固く、金が用意できるまでは仕事を辞める気はないと言います。次にジョーイの婚約者、ピアに接触するリース。このシーンとても好きでした。

 

It's Pia, right?

ピアだね?

Yeah.

そうよ

You're even prettier than Joey said.

君はジョーイが言っていたより美人だ

You're a friend of Joey's?

あなたはジョーイの友達なの?

Army. Just in New York for a few days.

軍でね。NYには数日いるだけだ

He's crazy about you, you know that?

奴は君に夢中だよ。知ってるだろ?

It's funny how his friends know more about what he's feeling than I do.

私よりも彼の友達の方が彼の気持ちについて知ってるなんておかしいわね

Well, you know, Joey's a...Bit of a closed book.

ああ、彼はちょっと、自分の本心を見せないところがあるからな

You're telling me. Starting to wonder if he's ever going to let me in.

そうね。彼が私と人生を歩んでくれる気があるのかどうか分からなくなっていたところだった

Waited six years for him to come home, and it's like he's still over there.

戻ってくるのを6年待っていたけど、彼はまだ戦場にいるみたい

Sorry. Shouldn't go crying all over the customers.

ごめんなさい。お客さんの前で泣くべきじゃなかった

No, no, no, no, no, no. It's all right.

いや、いいんだ

Look, you're a beautiful woman. If Joey doesn't come to his senses, plenty more fish in the sea.

なあ、あんたは美しい女性だ。もしジョーイが目を覚まさなくても、海には魚がたくさんいるさ

(もしジョーイが駄目でも、他にも男はたくさんいるさ)

No, I'm stuck with him. Loved him since I was so high. That's the way it is.

ううん、私は彼がいいの。昔からずっと彼を愛してた。そういうものなのよ(運命なのね)

*since I was so highで、文脈によっては「子供の頃から」「若い頃から」みたいな意味になるんだそうです。

 

 本心を見せなかったけれど彼女に夢中だったのはかつての自分のことだよね。ここで「他にも男はいる」と言ったリースはどういう気持ちだったんだろう…。だって、ジェシカは他の男と結婚して殺されてしまったじゃないですか…。

 

 この会話の後で、リースは強盗団のことを通報すると決めます。恋人にも言えない“秘密の仕事”をジョーイが辞めて、彼女と生きる決意を固めるのをリースはぎりぎりまで待っていた。でも説得できないことを悟り、彼が死ぬよりは捕まった方がマシだ、仕方ない、と思う。そして「次のターゲットが分かり次第通報する」と言います。

 しかし、ターゲットが分かった時には通信手段を全て奪われてしまいました。そして同時にフィンチも、これが罠だと気づきます。強盗団の元締めラティマーは、この仕事が終わったら関わった全員を殺すつもりだった。リースに連絡が取れないことに気付いたフィンチは、自ら証拠保管所を訪れます。

 

 この証拠保管所のシーンとても好き…。フィンチに気付いたリースは目出し帽を被っているんですが、目だけで「なぜここにいるんだ」って言うのが分かる顔をします。フィンチはリースに罠だと伝えようと必死で彼の顔を見つめます(が、この行動が不自然だってカーターに疑われちゃうんだよねー。カーターさすがだし、でもリースから目を逸らせないフィンチ萌える…)。リースは「見るな」とフィンチの胸倉をつかみ、フィンチは「これは罠だ」と伝えます。強盗団はターゲットを確保して脱出するのですが、待っていたラティマーにリースとジョーイ以外の2人を撃ち殺されてしまう…。

 いや、これさあ。リースが最初から通報してれば、ラティマーも含めて全員死なずに済んだんじゃ…、って思ってしまうのですが…。ジョーイさえ助かればいいのかよ。一人番号が出ると周囲の人の番号出なくて巻き込まれて死ぬことはよくありますが、これに関しては全然納得いかないよね。この回は対象者を救った風ストーリーになってるけど、実際はリースが感情移入しすぎてミスったパターンかと思われる。実際「レイラ」の回とかでも2人は何度か判断ミスしてて、カーターに「警察を頼れよ!」ってキレられたりしてるからなぁ。最後リースはジョーイに「捜査の手は確実に伸びてくる。彼女を連れて逃げろ」と促しますが、フィンチにも「強盗を逃がしたのか」とか言われちゃってるし。

 結局ジョーイを逮捕させないために周囲の3人が死んだことになって、どーなの、って思いますけど、リースの気持ち的にはジョーイが恋人と一緒に逃げることの方が大事だったんだよね。。

 

 リースとカーターの会話。

 

Can you hear me? I think you can.

聞こえてる?聞いてるんでしょ

Guess you're out there, hiding in plain sight.

あなたはここにいる。平凡な光景の中に隠れて

I keep looking for you. I keep finding myself in some bad situations.

あたしはあなたを探し続ける。どんな悪い状況になっても

You could always stop looking for me.

俺を探すことはいつでもやめられる

Not an option.

そんな選択肢はない

Now I've got two more bodies. I don't think you killed those guys.

死人が2人も出たわ。あなたが殺したわけじゃないわね

But I think you know who did.

でも誰がやったか分かってるでしょ

I'll take care of it.

俺がどうにかする

Playing a dangerous game. And I'm not sure I understand why.

危険なゲームよ。どうしてそんなことをするの

I've got my reasons.

理由があるんだ

Maybe you do.

そうでしょうね

But every killer I locked up thought they had a good reason.

あたしが捕まえたどんな殺人犯も、自分には理由があると言ったわ

And that is how this ends. Sooner or later, I'll lock you up.

でもみんな捕まって終わるの。遅かれ早かれあなたもそうなる

Or find you bleeding out somewhere.

もしくは、どこかで血を流すあなたを見つけることになるわ

I will take my chances.

運試しといくか

 

 最後、ジョーイはピアを連れてNYから出て行き、リースはそれを見守ります。元凶であるラティマーを殺しに行ったリースは彼が死んでいるのを見つける。そして「イライアス」という名の人物が一連の出来事に絡んでいることが示唆されます。

 

 ラストシーンは再びフラッシュバック。「幸せになれ」と言ったリースに、ジェシカは「本心じゃないくせに」と返します。

 

You wanna be brave? Take a risk.

あなたは勇敢になりたいんでしょう?それなら、リスクを取ってよ

Tell me to wait for you and...

あなたを待てと言って。そしたら…

Say those words and I will.

あなたがそう言ってくれたら、私は待つわ

It would take real courage, wouldn't it?

それが本当に勇気があるってことじゃないの?

 

 ジェシカは、リースがまだ彼女を愛していることを分かってた。婚約者がいる彼女にここまで言わせたのに、リースは「待ってほしい」と言うことができなかった…。

 この時待ってほしいと言えなかった自分と、恋人と2人で生きる決意を固めたジョーイ。リースはどうしてもジョーイに幸せになってほしかったんだ。自分とジェシカの姿を重ねていたから。

 最後、去っていくジェシカの後ろ姿を見つめながらリースは呟きます。

 

Wait for me.

俺を待っていてくれ

Please.

頼む

 

 そして目に涙が浮かびます。

 この演技…。すごすぎん??リースはこの後カーラと仕事をすることになり、どんどん深みにはまって行ってしまいます。。ここが引き返す最後のチャンスだったよね…。S2ラストでマシンに関連する運命のもろもろが分かった後でリースがフィンチに「あんたのせいじゃない。あの時空港で待っていてほしいと言えなかった俺のせいだ」と言っていて、リースには悪いけど実際そうだよなーって思ってしまうわ…。

 このシーンで流れるのが Massive Attack の Live with me です。「一緒に生きてほしい」って歌詞が超切なくて…。

yuifall.hatenablog.com

 そういえばこの空港のシーンでもリースの顔認証は黄枠になってます。

 

 ちなみにジョーイはS5で今度は「人助け」側の人間として登場してリースを助けてくれるので、ここで無理して救っておいてよかったのか…?この回はリースの内面を描くという点では秀逸でしたが、仕事としてはそれでいいのかよ感が否めない結末でした。

 あとさあ、今回も亡くなったキャラは人種的マイノリティだし、S1E1のポープとかS1E5のクリスティーナとか他の回でも人種的マイノリティのキャラが巻き添えで死んでて、白人のPOIが助かれば他は死んでもいいわけ??ってすげー微妙な気持ちになった。これは2011年当時のポリコレが今より甘いからかもしれないけど…。

 

 全然関係ないですが、ジョーイの中の人はルートの中の人の旦那さんだそうですね。

 

POI:ジョーイ・ダーバン(被害者)

本編:2011年9月25日~

フラッシュバック:2006年2月12日、リース(ジェシカと空港)