山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。
目黒哲朗
ファインダーにたとへばきみの唇をうばふがごとく絞り開放
めっちゃかっこいいなー。写真を題材にした歌がいくつか引用されてます。写真によって一瞬を「奪う」ことと、「射撃」を重ね合わせたような
水鳥のつばさを奪ふ シャッターを切りて時空の網を放てり
や、ネガフィルムの「陰」と性欲が重ね合わされた
性欲にこころ傾げてくろぐろと戦ぐ尾花を陰画(ネガ)に見てをり
など。こういったイメージの使い方はなんとなく男性的ですね。解説には
「つばさを奪ふ」は学生時代にしていた写真を題材とした連作である。「一瞬を切り取る」という点で短歌との類似性があり、実際そのことを意識した歌が多いように思う。
とありますが、私は短歌も写真もどちらかといえば「永続性」というか、「そこにずっとあるもの」という目で見ていたので、ああ、そうか、と思いました。この感覚の違いは「詠う」「撮る」人と、「読む」「見る」人の違いなのかもしれません。
青春の歌もかっこいいです。
パレットで火薬を溶いてゐることに少年はいつ気づくのだらう
夏ごとに翼の生えてくるやうな痛み負ひゐき十代のこと
こういう、少年だったことのある人にしか詠めない歌に心惹かれます。「CANNABIS」は2000年に出た歌集で、この人は1971年生まれだそうなので、引用されているのは主に20代の頃の作品でしょうか。
繊細さの中にワイルドさを隠し持つ目黒の鋭い視線は、ときに毒と暴力の予感も垣間見せてくれる。大麻を意味する「CANNABIS」を歌集の題としていることからしてもそれはわかる。(中略)目黒が描く少年像・青年像は決して危険な香りを強烈に放つものではなく、むしろ繊細で内向的ですらある。しかしそんな繊細さの中にこそ、破壊と退廃に憧れる気持ちは育まれるのである。
と解説されており、なんとなくですけど、爆弾作るエリートみたいな人(藤原伊織の『テロリストのパラソル』ですね…)を連想してしまいました。
若い頃に読んでいたらすっごいハマっていたかもなぁって思いました。かっこいいので。
見たいものだけを見せてよPhotoshop痣も記憶も消してあげるわ (yuifall)