山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。
生沼義朗
ほとばしる水のちからに耐えかねてシャワーのノズルはのたうちまわる
〈中ピ連〉をネット検索せしときに「中年ピアノ愛好者連盟」が出る
こういう歌を見ていて、「ただごと歌」の系統なのかなって思ったのですが
生沼の短歌を読んでいて感じるのは「美学の歪み」である。耽美的な歌もあればスタイリッシュな都市詠もあり、はたまたギャグのような歌もある。おそらく生沼は一つの統制のとれた世界観を築き上げることに美学を感じるのではなく、歪みのかかったさまざまな要素が複雑に絡みあっている世界を志向しているのだろう。
と解説にあります。ちなみに〈中ピ連〉というのは「中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合」だそうです。そうかー、そう考えるとちょっとシニカルというかブラックな笑いですね。
この人のことはこのコーナーで知ったのですが、その後色々なところで名前を目にするので、有名な人なんだなと思いました。ほんとに今でも歌人のことよく知らなくて…。こうやって少しずつ色々な人の作品に触れられるのとてもありがたいです。もっと知りたくなります。
寒小春突風するどく吹くときに思うはリリエンタールの墜死
赤銅の色した鳩が天を飛ぶ 日暮れか夜明けか見分けがつかぬ
みたいな歌、とてもかっこいいなぁと思いました。
似合わないコスプレばかり多いのは虚構に生きているからこそで
「自宅へと帰りつくまでがコミケです」そう、遠足の延長だから
こんなコミケの歌もあります。コミケスタッフだったんだって。そうなんだ…。長年オタクしてますが、絵も描けないしオン専だしオタ友もいないし行ったことないんですよね。。「似合わないコスプレ」の身も蓋もなさが楽しいな。
この人の歌の世界観に統一感がないと書いてあってちょっとほっとした(笑)。その時の気分で短歌作ってると全然統一された世界観にならないんだもん…。だけど多分、この人は「美学の歪み」によってわざとそうしてるんだろうけど、私はそもそも統一した世界観で歌を詠めないっていうのがあります。。そういう、その時々の気分から言葉をこねくり回す段階から、連作みたいに何かテーマを決めて詠むっていう段階に進んでようやく一人前なのかもしれませんね。
気道上皮よりも思考に寄生して言葉が人を殺していくよ (yuifall)