山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。
赤紙の父帰りくる野の列車ただしんしんと暑き夕ぐれ
ねむりうすき父の呑みつぐ錠剤のかがやくほとりわれも眠らな
辺見じゅん、というと、『男たちの大和』の作者としては知っていましたが、歌人としては知りませんでした。
解説にもあるのですが、家族の歌が多いです。特に父の歌が多く、実父は角川書店創業者・角川源義だそうです。
おとうとは母を知らねば六月の海に出でゆく鳥の翼よ
甲虫を死なせてゐたるおとうとの茜したたる夕暮れの耳
おとうとの歌も散見されます。おとうとは角川春樹・歴彦兄弟だそうで…。すごい一族ですね。歌に登場する戦争に行った父もおとうとも夭折のいもうとも実在する存在とのことです。Wikipediaで調べた限りではかなり波乱万丈な家族のようです。弟の角川春樹の欄には
大学3年の時には、渋谷ハチ公前で全学連相手200人に一人大立ち回りを演じ、新聞沙汰になったこともある。「俺の魂はスサノオノミコト」だと主張。毎日、祝詞とお経をあげ、「私は絶対だ。私は完全だ。私は神なのだ。」と唱えている。結婚歴は6回、離婚歴は5回である。
とあり、下の方にも数々の「伝説」が書かれていて笑えます。「夭折のいもうと」の母は父の後妻のようで、18歳で自殺しているとのことでした。辺見じゅんの母である前妻がどうなったのかはよく分かりません。解説には
限りなく日本的な「血族」というもののあり方の奇怪さ。しかしながらその唯一性ゆえに愛さざるをえない葛藤。辺見が自らの「血族」を切り出して作った世界は、日本中どこにでも存在していたようにすら思える異様なリアリティを放っている。
とあります。
少年の肝喰ふ村は春の日に息づきて人ら睦まじきかな
なんて歌あるけど、どういう意味なんだろう…。角川だし、横溝正史的な何かなんだろうか…。
ちなみに辺見じゅんのWikipediaの最後に『男たちの大和』の劇場版舞台挨拶に原作者が来たことについて書いてありますが、
春樹は当初から舞台挨拶に出席することが決まっていたが、辺見が出席する予定はなく、当日の朝になって急遽出席が決まっている。原作者が舞台挨拶に出席することは通常ほとんどなく、極めて異例なものであった(そうか?)。
と書いてあって笑いました。(そうか?)って。
なんかくだらない感想ばっかりですみません…。家族とか戦争とか、テーマが重すぎて消化が追いつきませんでした。。
わが病むは父の血ならむおとうとと長き不眠の夜を分かちて (yuifall)