いろいろ感想を書いてみるブログ

短歌と洋楽和訳メインのブログで、海外ドラマ感想もあります

現代歌人ファイル その96-甲村秀雄 感想

山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

甲村秀雄 

bokutachi.hatenadiary.jp

白の貝悲の部屋の外落下する 遠景のわが世界は燃ゆる

 

わたくしの左手にある白の貝 開かれしとき海に音なし

 

 解説に、

 

 歌集にたびたび出てくる「貝」に込められている意味は古い記憶であろうか。青春の先にあるものは断崖、そして果て。「明日がない」というひりひりするような感傷に満ちている。

 

とあります。なんかここまで「現代歌人ファイル」の感想書いてきて、歌人ももちろんなのですが、このサイトやってる山田航がすごすぎてやばいと思いました(語彙が死んでる)。

 この人(甲村秀雄)は1941年生まれで、背景に学生運動、左翼活動がある人らしいのですが、学生運動関係の歌人って本当に読みが難しくて登場するたび何を書けばいいのか分かんなくなってしまうのですけど、山田航はこれ全部歌集読んで解説までしてくれてるんだよなぁと…。読みやすい系の歌人と読みにくい系の歌人っていないんでしょうか。この人はちょっと解説書くの無理だな…、とかなかったんだろうか…。私は学生運動関係は圧倒的に読みにくいです。自分を重ねるのも難しいし。

 

血によりて描かれたるは国の旗 慕ひよる者に誓ひはなくて

 

 こんな歌とか一生かかっても読み切れる気がしない…。「血」「国の旗」という言葉から、「アカ(左翼)」と読めばいいのか「国粋主義」と読めばいいのかもよく分からないし…。

 

そのやうに日記に綴れ。青春の斜面を滑る橇による罪

 

 これはなんだかとめどない感じですね。滑り始めたらもう転ぶか衝突するかしないと止まれないみたいな。「青春」「黒板」「学連の旗」とあるのでやっぱり大学時代なのかな。解説には

 

燃えるような政治の季節や甘やかな青春の季節を越えて、その先にある自分の姿を模索しようとする必死な叫び。

 

とありますが、この人の政治の季節と青春の季節はオーバーラップしているような気がします。学生運動家ってやっぱりその先どうなったのか、どういう思想、どういう生き方へ向かっていくのか、ということが気になります。なんか2000年代以降の青春よりも切実に、堕落する前に死ねみたいな感じするもん…。

 

 今は短歌結社「ナイル」の代表とのことですので、革命に命を懸けてはいないようで安心しました(笑)。第1歌集「棘よ、憎まれてなほ」は1978年に出版、とあり、それ以降の情報が載っていないので、いずれの歌も78年の第一歌集からの引用なのかもしれません。

 

 

我が持たぬ自由平等博愛をアメーバはみな持つと思へり (yuifall)