山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。
中津昌子
たったいま人が笑っていた席に冬の陽光だけが落ちてる
何となくパステル画の質感を連想させる歌が多い感じがします。「しんねり」「ふうわり」「とろりと」といった擬音の使い方が優しくて、でも明るいだけじゃない、子供時代の傷みたいなイメージがあります。解説に
口語まじりのやわらかな歌の中に、独特の世界観がある。栗木京子は「欠落へ怖れとの親和性」と評しているが、欠落に対する不安が歌の基本を支えているのである。そして、その先に見ているのはとてつもなく大きな何かへの畏怖なのかもしれない。
とあります。
自転車のうしろに乗せし子がくくと笑えり虹をくぐりゆくとき
こんな歌、すごく好きです。
一時期アメリカに住んでいたようです。アメリカで詠んだと思われる歌がいくつか紹介されているのですが、
少なくともナガサキは必要なかつたといふ声を聞く 芝生が光る
という歌、一読して、何というか、頭を殴られたみたいな感じがしました。おそらくアメリカ人の言葉なんだと思うんですけど…。どんなに戦況を冷静に分析したとしても、日本に生まれ育って日本で暮らしていたら言葉には出せないことなのではないだろうか。この人もこの言葉を聞いてショックだったから歌にしたんじゃないかと思います。
この記事書いていた当時8月だったこともあり…。「少なくともナガサキは必要なかつた」ってどういうこと、って頭がぐらぐらした。そんなことで多くの人が命を奪われ、今も苦しんでいるのか、そしてヒロシマは必要だったのか、とか色々考えて、辛いですね…。日本人としてはここでさらに真珠湾攻撃まで思いを馳せるべきなのかもしれませんが…。
竜眼のあまき実を呑む喉(のみど)にて思ふをんなを愛さざるひと
この歌もちょっとびっくりしました。「をんなを愛さざるひと」っていうのはゲイ男性ってことなのかな?それともミソジニー的な意味合いなんでしょうか。何で竜眼を食べながら思ったんだろう。精巣っぽいから?
春雷の重くとどろく朝明けて何度でも空は新しくなる
多分色んな世界を見て来たんだと思うんですが、それが柔らかい言葉で淡々と描かれていて好きです。
Justiceが住めないウォール街の赤、S&P500を映すプリズム (yuifall)