山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。
松崎英司
ホテルの料理長だそうです。解説に、
2006年に「青の食單」で第52回角川短歌賞次席。本職は料理人であり、ホテルの料理長も務めている。「青の食單」はすべての歌に食材が詠み込まれているというユニークさから、小池光に高く評価された。
とあり、おおっ!って思った。こういうワンテーマで世界観作れる人って本当に憧れます。ここ毎回そんなこと書いてるけど(笑)。ちなみにこの第52回角川短歌賞の受賞者は誰だったのか調べたら、「黙秘の庭」の澤村斉美でした。やっぱり、角川短歌賞ってすごくレベル高いんですね。
すべての歌に食材が詠み込まれ、とありますが、ここに紹介されている歌だけでも「岩牡蠣」「海老」「メレンゲ」「セロリ」「黄身」「蓮」「大豆」「栗」「塩」「珈琲」と多彩です。これは読んでいて楽しそうですね。単なる部外者の好奇心ですが…。
一方で、
亦た海へ帰らむごとく鰭揺らす鯛を抑へて出刃を突くわれ
あらがへる蛸切り分けて炊くときに吸盤の跡腕に残れり
とか、するめ烏賊の肝を抜くとか、伊勢海老を生きたまま殻剥くとか、そういう「生物を殺す」ことに自覚的な歌も多く引用されています。日々そういうことと向き合って仕事をしているのだと感じますし、おそらく、感じていなくてはいけない、という戒めもあるのではないだろうか。解説に
料理人はつらい仕事であろうが、松崎はプロフェッショナルとしての意識を常に保っており、ある種の芸術家としての料理人像を描いている。労働者として、職場や仕事に不満を漏らしたり、あるいは同僚などとの人間関係を描いたりはほとんどしない。
とあり、作歌姿勢も歌もかっこいいなーと思いました。
都市詠も紹介されています。
窓越しに臨海都市を見おろせば光る昇降機がガラスを流る
生まれも育ちも横浜のようですが、職場はどこのホテルなのかなーってググったら「ホテルモントレ横浜 料理長」って出てきたのですが、現在は閉館しているようです。現在の職場は分かりませんが、歌はホテルモントレ時代のものなのかもしれません。
南蛮の歌作ったら前に作った茗荷の歌と似たような感じになっちゃったけどまあいいか。夏野菜刻むシリーズ。
ひたすらに刻む南蛮夏の庭より出でて我が腑にしづみゐつ (yuifall)