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現代歌人ファイル その74-小黒世茂 感想

山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

小黒世茂 

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綿飴かい うんにや、ひとだま 石垣をふはり越ゆるはほんに美味さう

 

 すごく独特な歌です。こういう独自世界ある人ってすごいな!和歌山出身で紀州熊野を舞台とした歌が多いそうで、民話っぽいです。江戸の怪談とか妖怪とかいうよりも、昭和初期の感じですね。となりのトトロ的な…。自然の中で暮らしてて、人もあやかしも隣り合ってるみたいな感じです。「綿飴かい うんにゃ、ひとだま」ってかわいい♡まっくろくろすけみたいな感じだろうか。まあ、黒くはないでしょうが(笑)。

 

すんまへんなあ 片手拝みに鯨肉をひときれつまむ見知らぬ輪のなか

 

 「すんまへんなあ」っていいですね。海岸に打ち上げられた鯨を解体しているところにたまたま通りかかって、全然知らない漁師さんの集団に「一切れどうだ」とか言われて「すんまへんなあ」ってつまんでいくシーンを想像しました。解説には

 

 ほかに特徴的なのは、軽やかな関西弁の導入である。定型に方言という究極の口語を用いること自体は昔からしばしば試されている。しかし小黒が歌に方言を用いるときは、人間どうしの会話というよりむしろ人間と神との会話のようである。特に括弧書きにされている部分は、いずれも神や自然が声なき声で人間の内側に直接語りかけているかのように思える。

 

とあります。てことはこの「すんまへんなあ」の相手も神なのかなぁ?見知らぬ輪、なんだから、そういうこともあるのかもしれません。

 

鮮しき猪首ささげ手をふれば〈おうよ〉と山の神はうなづく

 

なんて歌もあり、これは八百万の神々の感覚ですよね。神様も近くにいるの。ジブリっぽい世界観でしょうか。猪を獲って山から下りて振り向いたときに、神様に「いいよ、持ってきな」って言われたように感じた、ってことかな。

 

潮風にもまれる樫の葉裏にはゐるゐる越冬亀虫ゐるゐる

 

 ううー、これはトライポフォビアの人には辛い歌ですね(笑)。「ゐるゐる」のカメムシっぽさすごい!

 

牛飼ひさんの胸に睫毛をすりよせる雌牛タキさん野あがりのとき

 

 雌牛のタキさんが主人公です。こんな歌今まであまりなかったような。乳牛なんだろうなー。これは『遠野物語』の世界かな。牛とか馬とかと家族なの。

 それにしてもこの人も塚本邦雄に師事していたそうで…。塚本邦雄が短歌界に与えた影響を考えずにはいられませんね。

 

 

おしら様んとこさもひどづ、附馬牛の伯母のきりせんしょの甘かりき (yuifall)