講談社 穂村弘 著 「ぼくの短歌ノート」 感想の注意書きです。
慎ましい愛の歌 その1
ずっと「現代短歌」を読んできたので、こういう慎ましい相聞歌ってあまり触れたことがなく、逆にすごく新鮮な感じがしました。近代っていうと与謝野晶子とかそういう、当時の"新しい”歌が目立つのですが、こういう歌に今触れると心が温かくなる気がします。
春の夜のともしび消してねむるときひとりの名をば母に告げたり (土岐善麿)
は、解説文にあるように、結婚しようと思っている女性の名前を、夜電気を消して暗くなってから、眠る前に、躊躇いながらお母さんに告げる、っていう状況で、
その真摯さが伝わってくる。
って、分かります。一生に一度のこと、っていう、苦しいほどの決意が伝わってくるよな。
でもこういう状況、現代でもあると思うけどなー、やっぱり、結婚しようと思ってる、って親に告げる時ってそれなりに重みあるんじゃないのかなー、とも思ったのですが、ただ、何となくですけど、この男性にとってその「ひとり」の女性は本当に、生涯にたった一人の女性なんじゃないか、と感じさせる雰囲気があり、やっぱりその重みは現代とは違うような気もします。
やすやすと抱く(いだく)フランスの映画見て妹とおそく帰り来にけり (柴生田稔)
「フランス映画」は、確かに「やすやすと抱く」感じしますね…。いや、でもですけど、令和の現代であっても、私、海外ドラマとか見てると結構驚くよ(笑)?やすやすと抱きすぎですよみんな。身近な人間関係が男女問わず荒れまくりですよ。これはねー、やすやすと抱くかどうかはねー、人による!って気もしますね…。
だけどこの歌の主人公の純朴そうな感じとか、舶来の映画の男女を見てカルチャーショックを受ける感じとか、おそらくそんな内容とは想像せずに妹と見に行ってちょっと気まずいような感じとか、切々と伝わってきてなんだかぐっときます。確かに、現代でも驚く、とは書きましたけど、結婚もしてないのにそんな…!みたいな衝撃ってないですもんね。
くちづけをしたのはおまへだけだつたと その時は言つてほしいの、あなた (yuifall)