講談社 穂村弘 著 「ぼくの短歌ノート」 感想の注意書きです。
動植物に呼びかける歌
最初の猫の歌を見て、あー、ペット可愛い系?とか思ってたら
あかねさす昼の光に恥思へや(はぢもへや)蝙蝠よなんぢの顔はみにくし (前川佐美雄)
が超弩級のインパクトでした。そんなこと言っちゃうのかい。蝙蝠、けっこう顔かわいいよ(笑)。ねずみっぽくて。お前は暗闇の中にいろや的な意味合いなのか?
しゃぼん玉五月の空を高々と行きにけり蚯蚓よ君も行き給え (佐佐木幸綱)
もインパクト強いですね…。しゃぼん玉から蚯蚓に…。みんな色んなものに呼びかけてるんだなぁ。
この中でも一番どきっとしたのは
お軽、小春、お初、お半と呼んでみる ちひさいちひさい顔の白梅 (米川千嘉子)
これでしょうか。「お軽、小春、お初、お半」はみんな浄瑠璃の心中物の女主人公みたいです。「夜桜お七」みたいな感じか。白梅というと
ひとまおきてをりをりもれし君が息 その夜白梅抱くと夢みし (与謝野晶子)
を思い出します。白梅を見ていて、儚い運命の女性の顔を思い浮かべるだろうか。こういう歌を読むと、この感性には敵わないなぁ、って感じ入ります。
愛しえぬことの痛みを知るまいと番ふ蛙を憎みつつ見る (yuifall)