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短歌タイムカプセル-光森裕樹 感想

書肆侃侃房 出版 東直子佐藤弓生・千葉聡編著 「短歌タイムカプセル」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

 光森裕樹

 

眸ふかく映してやりし遠花火に教へてゐない色ばかりある

 

 これは、前後の歌を見るに、お子さんのようです。子供を抱っこしながら花火を見せていて、花火ではなくて子供の瞳を見ていて、その目に映る花火の色がこの子に教えていない色で、この子にはどう見えているんだろう、といった情景が頭に浮かびました。これって、花火の色そのものが子供に教えていない色だってことなんだろうか。それとも、子供の目に映ったものの色を見て、これは知らない色だと思ってるってことなんだろうか。人の瞳に映ったものって不思議な色をしてるよなぁ、って思いながら読みました。教えていない色っていうのはどういう意味なんだろう。色って教えるものなんだろうか。「色の名前」という意味なんだろうか。情景はまざまざと思い浮かぶのに、心情が重なっているか分からなくて、でもその分からない感じがいいです。

 

 この人の、子供を詠んだ歌がどれもなんだかちょっと切ない感じで好きです。

 

雨よりもさきに教へるあまがさのあなたが生まれてから苦しいよ

 

なんて、降り注ぐ痛みから守ってあげたいっていう痛いほどの愛情なのかなって思いました。「あなたが生まれてから苦しいよ」ってすごくナマでまっすぐな言葉で、読んでいて私も苦しくなって、すごく切なかった。子供を守りたいけど、親は子供を守れないことも同時に知ってるんだもんね。親に愛されてきたことを知っていても自分だって傷ついて生きてきた以上、どんなに愛していても、我が子も傷ついて生きていくことは避けられないわけだから。

 

 そして子供とは全然関係のない歌ですが、

 

オリオンを繋げてみせる指先のくるしきまでに親友なりき

 

これちょっとどきっとしますよね。相手は男の子かなあって。親友だし。勝手に「新世紀エヴァンゲリオン」のシンジ君とカヲル君のビジュアルで想像した自分が若干キモい(笑。あーでもこの2人にBL萌えはないですね。てか中学生やん…。無理や…)。でも、あくまでプラトニックというか、その指には触れなかったからくるしいんだろうなと。相手が誰であれ。

 

 

親指の付け根の味を教えてよ あなたの足首を掴んだ手 (yuifall)

「男なら好きになってた」 (きみがもし男だったら恋しなかった) (yuifall)

 

 

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