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読書日記 2024年12月4-10日

2024年12月4-10日

春日武彦屋根裏に誰かいるんですよ。 都市伝説の精神病理』

春日武彦『不幸になりたがる人たち 自虐指向と破滅願望』

石井光太『近親殺人 家族が家族を殺すとき』

高橋ユキ『つけびの村 山口連続殺人放火事件を追う』

・澤村御影『准教授・高槻彰良の推察11 夏の終わりに呼ぶ声』

伊坂幸太郎『首折り男のための協奏曲』

・N・R・ウォーカー(冬斗亜紀訳)『好きだと言って、月まで行って』

楡周平『ラストワンマイル』

 

以下コメント・ネタバレあり

春日武彦屋根裏に誰かいるんですよ。 都市伝説の精神病理』

 なんか疲れて小説読めなくなってきたので小説じゃない本を。作者の別の本読みたかったのですが電子書籍になかったので電書で買えるやつを何冊か買ってみた。90年代に出版された本らしいのですが、2022年にTwitterでバズって文庫化したのだそうです。だから電書で読めるのか。ありがたい。

 まあ内容は散文的な感じで、小説読めなくなった私の頭にはだいぶ入ってきづらいというか眠くなりました。作者(精神科医)のあまりにも率直な感じがブラックでした。

 

春日武彦『不幸になりたがる人たち 自虐指向と破滅願望』

 前回作者のあまりにも率直な感じに若干引いていたのですが、続けて読んでたら面白くなってきました。不幸になりたがるのって人間の性質の一つに絶対含まれてるよね。この要素が全くない人は少ないのではないだろうか。そしてそのごく一部の人にとっては、「不幸になりたいとか意味分かんね」ってなるんだと思う。ホリエモンとかそんな感じする。

 個人的には精神疾患を持ちあげる風潮(主にフィクションの文脈においてオーバードーズをおしゃれ化したり、狂ってることを“他人と違う”というプラス要素として美化するなど)って厨二病としか思えないので、作者の言いたいことはとても分かります。狂っていることはとても類型的だし、全くクリエイティブではなく俗悪だと。まあそうだよなと思う。

 それにしてもほんと相変わらずコメントが笑えます。特に女性2人による誘拐事件についての記載で、

 

 この事件が話題となったのは、犯人像の意外さによる。小中学を同級生として過ごした二十歳と二十一歳の独身女性二人組の犯行だったからである。しかもデタラメな生活を送るこの二人の若い女たちは、男にそそのかされたり利用されたわけではなく、彼女たち自身で犯行を着想し実行したのであった。当時の新聞に載っていたコメントを引用しておく。八月九日付の毎日新聞朝刊に掲載されていた某女性作家による「識者の声」である。「誘拐事件と言えば、犯人は生活に困った中年男性というイメージがあった。若い女性二人の犯行というのは私のような団塊の世代には想像もつかない。身代金要求と言っても、場あたり的でズサン。劇画や漫画を見て育った世代だろうと思うが、現実と仮想現実とが分けられない世代が『ごっこ』的に起こした犯罪のような気がする」。

 こんな陳腐なコメントを語るような小説家なんぞ、さっさと現実から消え失せて仮想現実へ移住してもらいたいものだと願いたくなるが、少なくとも若い女二人の営利誘拐事件に対する素朴な驚きだけは伝わってくる。

 

とあって笑った。『火車』か何かで宮部みゆきが「バックに男がいない女の犯罪者もいる」みたいなこと書いてたから、当時は作家の中でも“事件の陰に男あり”みたいな認識が一般的でそれに対する反論だったのかなぁと思ったりもしました。

 

石井光太『近親殺人 家族が家族を殺すとき』

『鬼畜の家』の作者の人でしたか。これもめちゃくちゃ暗い気持ちになるノンフィクションでした。日本では殺人事件の件数が減っているにも関わらず家庭内殺人は増加し、従って割合も上昇しているという統計から始まり、一体どんな事件が起きているのかということが語られます。児童虐待なんかはセンセーショナルに報道されるし、例えば児童相談所が介入していたら…といった解決策もあるのかもしれませんが、これ読んでると一体どこがpoint of no returnだったのか分からない例も多く、またどうすれば助けることができたのか分からない例もあり、かなりつらかったです。家族(子供や兄弟姉妹)が突然統合失調症を発症したらどうするのか。親や配偶者が老いて老々介護になったらどうなるのか。そんなことを考えさせられました。

 

高橋ユキ『つけびの村 山口連続殺人放火事件を追う』

 これも結局犯人は統合失調症なのでは?取材は丁寧ですが話のまとまりがない印象で、一体何が言いたいのかよく分からなかった。面白かったのは本筋よりも集落の歴史についての記載ですかね。一つの集落が栄え、そして消えていく様が書かれていて、こういうことが日本全国で起きていて、じゃあそこにあった歴史や文化、農業や産業はどうなってしまうのか、と考えると暗澹とします。確かに地方の暗部としか言いようがないこともあるけど、みんながみんな都会に行って国が成り立つわけないじゃん、とは思うんだよな。

 

・澤村御影『准教授・高槻彰良の推察11 夏の終わりに呼ぶ声』

 本当は石牟礼道子苦海浄土』買っていたのですがほんと脳が疲れていてチャレンジできずラノベに逃げる。これはまあ、特に言うこともないです。ずっと続いてますがそれなりの面白さがキープされているのでそれで十分です。それはともかくこの主人公ずっと恋愛とかできないのだろうか。小説自体がニアBLテイストのラノベであるというメタな事情もありますけど、作中の主人公の特殊能力?によって人間関係が制限されてるからなぁ。でも恋をして傷ついて、そしてそれは決して自分だけの特殊な経験ではないということを学んでほしいという老婆心もあります。

 

伊坂幸太郎『首折り男のための協奏曲』

 伊坂幸太郎なので最後は伏線が全て回収される系の話かと思ってたのですが、短編集でそれぞれの話の間にはゆるい繋がりしかない感じでした。最後の「合コンの話」がめっちゃ好きで、こんな話書けたら人生楽しそう!と思ってしまった。「月曜日から逃げろ」はジェフリー・ディーヴァーの『オクトーバー・リスト』ですね。「僕の舟」はロマンチックだけど、そうであればあるほど浮気した夫が許せなくなるので複雑すぎる気持ちでした。こんな再会BLあるあるみたいなネタあります?いやBLじゃなくて夫婦ですけど。

 

・N・R・ウォーカー(冬斗亜紀訳)『好きだと言って、月まで行って』

 シドニーが舞台の子育てBLです。モノクローム・ロマンス文庫はとりあえず出たら全て読んでるんですが、これ、レーベル違ってたら絶対買わなかったなと思った。子育てBL好きじゃないし…。

 実際、面白いかって言われると全く面白くありません。シングルファーザーが雇った住み込みベビーシッターと恋に落ちる話で、これ、ベビーシッターが若い女だったらすごいありがちな昭和の後妻話じゃん…としか思えんかったよ…。男だから(あとリバだから)なんなん??後から実子が産まれないだけマシって感じですか?シングルファーザーは子供が生後6週間の時に元カレに捨てられてるんですが、勝手に妹の子供引き取って「カレが子育てにつきあってくれない…」とか馬鹿じゃねえのって感じですし。そんなん私でも無理だわ。周りは主人公と子供を捨てていった元カレをぼろくそ言うんですが、はっきり言って主人公の方が勝手すぎない?子育て舐めすぎだろ。実際それで限界になってシッター雇うわけですし。そんな見通しの甘すぎる男が高給稼げるとも思えず、設定そのものに無理がありすぎ。

 その後色々あってベビーシッターとデキてから彼の大家族のパーティーに一緒に行って、そこで赤ちゃんが年寄りにマンゴー食べさせられてて、ほのぼのエピソードみたいに書いてるけどドン引きだよ。マンゴーなんてアレルギー食品の筆頭じゃないですか。休日のパーティーで適当に食べさせて何かあったらどうするん??配偶者の親戚の年寄りに初めて食べるアレルギー物質勝手に与えられて…ってガチ喧嘩案件ですよね。。可愛がられてる♡じゃないって。父親は認識甘すぎるしベビーシッターはプロ意識ゼロとしか思えんし、日本人の神経質な感覚だとマジであり得ないんですが…。

 そんな感じでツッコミどころは満載だし、住み込みベビーシッターを雇えるような金持ちだけど天涯孤独なシングルファーザーと大家族に愛されて育ったベビーシッターの恋とかハーレクインロマンスかよって感じですし、最後安直に妹からまた子供引き取るのもあり得んよ…。妹どうなってんだ。泣きながら「もう堕ろせない」とか言えば兄貴が無限に子供引き取ってくれると思ってんのか?ちょっとあまりにも感覚が違いすぎて萌えも何もないです。頭からっぽで読むにもノイズが多すぎ。

 

楡周平『ラストワンマイル』

 まあ、一種のおっさんドリーム小説ですね。若い女と不倫しないだけマシレベルです。2006年の小説だから内容が古いのは仕方ないけど、全てのキャラクターがあまりにもステレオタイプだし600ページ以上あったけど数時間で読めるペラさでした。もちろん配送業者を蔑ろにするビジネスモデルが許せないってのは分かるし、そこからのざまあ系、スカッと小説なのも理解するけど、内容が甘すぎない??テレビとネットとかそのあたりの事情はまあ時代なんでいいとしても、個人で野菜育ててるその辺の家から収穫物持ってくるレベルのアイデアがコマーシャルベースに乗るわけないし(そもそもそんな量ないし、それ用に作ってないからめっちゃ虫とかついてるからね)、おばあちゃんが作った酢牛蒡が商売になるわけないし(そこまでの量作りたくないだろうし衛生面とかどうすんの?)、そんな適当な思いつきで地方が活性化したら苦労せんのよ。せいぜい道の駅の産直コーナーに持ち込むくらいが限界でしょ。現実知らなすぎ。だいたいこの義両親は林檎農家で林檎に関しては農協と契約してるんだろうから、農協通さないで勝手に商売したら違約金とかあるんじゃないの?それなのに「ネット分かんない」って言うお年寄りに「農協あたりの若いもんに手伝ってもらえば大丈夫」って適当すぎないか?あり得なさ過ぎて何言ってんのレベルでした。ビジネス立ち上げ時の著作権のあたりもだし、口コミアイデアのダサさもだし、こんなに甘い見通しでビジネスってできるわけですか?まーモデル企業も明らかだし現実こうなってないのを見るとこんなレベルじゃビジネスなんて成り立たないのは自明だよね。公務員やベンチャー社長へのヘイトも絵に描いたようなくだらなさだし、昭和のお茶汲みOLみたいな女出てきてひょんなことから大活躍!ってとりあえず戦隊モノのピンクみたいな女置いとくかみたいな女の使い方までもがあまりにもステレオタイプであらゆることが類型化されているのでおおよそ展開は読めます。読み終わってぽかーんってなったわ。一体何だったのこれ?ツッコミどころは多々あれど意外性や驚きは全くないんですけど。少なくとも2024年の今読むに堪える話ではなかったですが、とりあえず宅配業者の皆さまにはいつも大変感謝しております。