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東京は夜の7時~The night is still young~ (PIZZICATO FIVE)

邦楽歌詞感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

東京は夜の7時~The night is still young~ (PIZZICATO FIVE) 1993年

作詞作曲:Yasuharu Konishi

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世界中でたったひとり私を愛してくれる?

待ち合わせのレストランはもうつぶれてなかった

バラの花をかかえたままあなたはひとり待ってる

夢で見たのと同じバラ

早くあなたに逢いたい

早くあなたに逢いたい

トーキョーは夜の七時

嘘みたいに輝く街

とても淋しいだから逢いたい

トーキョーは夜の七時

本当に愛してるのに

とても淋しいあなたに逢いたい

 

 タイトルは矢野顕子の1979年のライブアルバムからの引用だそうです。サブタイトルの The night is still young は「夜はまだこれから」という意味の慣用句ですが、ウィリアム・アイリッシュ稲葉明雄訳)『幻の女』の

 

夜は若く、彼も若かった。が、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。

 

を思い起こさせますね。こちらの原文は

 

The night was young, and so was he. But the night was sweet, and he was sour.

 

です。

 

 この曲は30年以上前にリリースされた古い歌ですが、めちゃくちゃカバーされてて広く有名ですよね。2016年にはリオパラリンピック閉会式で(次は東京という意味をこめて)椎名林檎作詞のアンサーソング『東京は夜の七時~リオは朝の七時~』が歌われています。

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「ひと晩中愛されたい」に対して「ひと晩中あいしていたい」、「待ち合わせのレストランはもうつぶれてなかった」に対して「待ち合わせは交叉点で もうまどわされないで」、「嘘みたいに輝く街」に対して「夢みたいに実在する都市」と歌っており、「世界中でたったひとり私を愛してくれる?」という問いかけに対しては「世界中いがみ合ってもあなたは一人生きている」と返しています。

 

 もとの歌は、すごい明るいメロディのシティポップなんですけど歌詞はあんまり明るくないです。ずっと夢の中にいるみたいな感じで、きっとあなたには逢えないんだろうという雰囲気がする。あなたはバラの花をかかえたままでどこかでひとりでずっと待っていて、わたしは少し遅刻して待ち合わせの場所に着くんだけどそのレストランはもうつぶれていてあなたはいない。時相がずれてるのかなという気がします。あなたは過去のどこかの東京の夜でずっと待っていて、私は今あなたに逢いに急いでいて、でも絶対に出会わない。

 一方で返歌の方は、Wikipediaによれば

 

この一連のパフォーマンスは、スーパーバイザーの椎名の頭に浮かんだ「枕草子」と「東京は夜の七時」にインスパイアされた「たとえ(バック・トゥ・ザ・フューチャーの)デロリアンがなくても目が見えなくても、あらゆる感覚を駆使した檜山は時空をワープできて、ずっと待ちぼうけだった女の子を迎えに行ける」というプロットに基づくもので、上述の詩や東京の映像などを駆使しながら、現代のリオの夜から23年前の東京の朝へ迎えに行くというストーリーが、原曲に対する23年越しの返詞として書かれた「東京は夜の七時-リオは朝の七時-」に乗せて演じられた。

 

ということだそうです。時相がずれていて会えなかった2人が、現代のテクノロジーを駆使し、「目的地へ一瞬で接続して僕ら自身が扉になったの」、ということで会えるのだと。最初の「両手で見晴らす」は「目が見えなくても触れれば見える」という意味なんですね。この歌の「あなた」は「ずっと待ちぼうけだった女の子」とありますが、特定の誰かではない気もします。男女の恋の歌ではなくて、「東京に来てね」って意味なんじゃないのかなぁ。「早くあなた(世界の皆さま)に会いたい」と。「枕草子」にインスパイアされたということは「夏は夜」という意味で、「あぁ僕ら夏になってしまう」というのは「夏の夜の東京は最高だよ」ってことなのかな。夏の夜の東京で待っていると。今から振り返るとオリンピック・パラリンピックあんなことになっちゃってかなり残念なのですが…。

 

 ちなみにですけど元ネタの矢野顕子『GOD'S LOYAL LOVE~東京は夜の7時』では

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東京は夜の7時

リオデジャネイロは朝の7時

アンカレッジはゆうべの12時

カイロは昼の12時

 

と歌っているので、『東京は夜の七時~リオは朝の七時~』はこの歌へのリスペクトも含んでいるのかもしれません。

 

 

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トーキョーは輝く七時 淋しいよあなたは今も待っているのに (yuifall)