2024年4月24-30日
・マイケル・ルイス(渡会圭子訳)『後悔の経済学 世界を変えた苦い友情』
・米澤穂信『米澤屋書店』
・都甲幸治など10人『きっとあなたは、あの本が好き。 連想でつながる読書ガイド』
・桜庭一樹『少年になり、本を買うのだ』
・桜庭一樹『お好みの本、入荷しました』
・都甲幸治『今を生きる人のための世界文学案内』
・商業BL小説と漫画合計5冊
以下コメント・ネタバレあり
これもずっと積んでた本。笑えて好きだったのは『連瑣』(蒲松齢)と『シャングリラ』(張系国)で、しみじみ好きだったのは『いっぷう変わった人々』(レーナ・クルーン)と『黄泉から』(久生十蘭)でした。米澤穂信のイヤミスの読後感に近いと思ったのは『石の葬式』(パノス・カルネジス)と『破滅の種子』(ジェラルド・カーシュ)、『墓を愛した少年』(フィッツ=ジェイムズ・オブライエン)かな。
『連瑣』と『いっぷう変わった人々』は巻末の米澤穂信による解説も面白かったです。『昔の借りを返す話』(シュテファン・ツヴァイク)の解説も面白かった。米澤穂信は『源氏の君の最後の恋』(マルグリット・ユルスナール)や『ロンジュモーの囚人たち』(レオン・ブロワ)、『トーランド家の長老』(ヒュー・ウォルポール)について「気の毒で見ていられない」みたいに言うくせに、なんであんな小説書けるんでしょうね。私は米澤穂信の小説の登場人物が気の毒で見ていられないよ(*褒めてます)。
ここに挙げなかった小説も面白かったです。今まで中華系の作者の本ってあまり読んでこなかったのですが、『連瑣』(蒲松齢)と『シャングリラ』(張系国)が面白かったのでもっと読んでみたくなりました。最近中華SFや中華BLも熱いみたいですよね。
・マイケル・ルイス(渡会圭子訳)『後悔の経済学 世界を変えた苦い友情』
最後に訳者あとがきで、
ルイスはインタビューで「これはラブストーリーだ。多くの実りをもたらした濃密なブロマンスだ。アイデアが彼らの子どもで、その子どもたちは永遠に生きる」と答えている。
とあるのですが、そんな感じの話でした。
「彼と一緒にいるだけでよかった」と、ダニエルは言う。「他の人に対してはそんなふうに感じたことはない。人は恋するとか、そういうときがあるだろう。しかし私は心を奪われていた。わたしたちはそんな感じだった。本当に異例なことだった」
しかし、何とかして二人で一緒にいようと一生懸命になっていたのはエイモスのほうだった。「わたしは自制していた」とダニエルは言う。「近づきすぎないようにしたのは、彼なしでは自分がだめになるのではないかと怖かったからだ」
読んでてまじかーってなった。行動経済学の基礎理論を樹立して2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンの言葉ですよ、これ。カーネマンもエイモス・トヴェルスキーも妻帯者で、恋人同士ではありません。これは天才2人のものすごく濃い友情が生んだ学問と友情の終わりについてのドキュメンタリーです。
マイケル・ルイスのドキュメンタリーが好きでかなり読んでますが(全部ではない)、どれも膨大な人物描写と精密な取材に圧倒されます。その分読むの結構大変なのでこれは買ってからずっと積んでたのですが、今回読んでやっぱ圧倒された。行動経済学そのものはダン・アリエリーの著書で知っていたのですが(『予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』、『不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」』、『ずる―嘘とごまかしの行動経済学』など)アリエリーはカーネマンに師事していたんですね。みんなイスラエル人かぁ…。やはりこの本でも指摘されているように、お金という観点からではなく戦争という観点からものごとを見た時に生まれる心理学・経済学があるのかもしれないと思いました。
・米澤穂信『米澤屋書店』
米澤穂信の読書記録みたいな本。自分は読書家ではない、と謙遜してますが、膨大な読書量です。こういう、本好きな人の読書記録本みたいなのとても好き…。米原万里『打ちのめされるようなすごい本』、立花隆『ぼくはこんな本を読んできた』、桜庭一樹『少年になり、本を買うのだ』『お好みの本、入荷しました』、有栖川有栖『有栖の乱読』、森博嗣『森 博嗣のミステリィ工作室』、岡野宏文・豊崎由美『百年の誤読』『百年の誤読海外文学篇』などなど。瀬戸夏子『白手紙紀行』も読書記録本かな。紹介されてる中からいいかもって思った本をピックアップして読んでいくのが楽しいんですよね。
それにしても米澤穂信はお勧め文がとてもうまくて、あれもこれも読みたいー!!という気持ちになります。以前に『百年の誤読』で「本格ミステリは子供のための文学」って書かれてて確かにその面もあるなぁと思いましたが、米澤穂信と有栖川有栖の対談で「本格ミステリは大人の楽しみ」って書かれててやっぱりその側面もあるよな、とちょっと嬉しくなりました。
あと、昔本当に好きだった高畑京一郎『タイム・リープ あしたはきのう』がおすすめ本として取り上げられててこっちはとても嬉しかった。この本、もともと電撃文庫(ラノベレーベル)から出たせいかミステリとして読まれてる感じしなくて(ラノベか恋愛小説みたいな?)、でも昔夢中になって何度も読んだので、面白いですよね!!!ってなった。一昨年新装版出たみたいですね。電書で買い直そうかなぁ。
有栖川有栖だけじゃなく柚木裕子や朝井リョウとも対談してて、それだけで買う価値ありです。てか西崎憲(フラワーしげる)とも対談してたんだ…。この『ほんのよもやま話 作家対談集』とても面白そうです。欲しい。
・都甲幸治など10人『きっとあなたは、あの本が好き。 連想でつながる読書ガイド』
こちらはどちらかというと純文学寄りのおすすめガイドです。読みが深いので読み方ガイドみたいにもなってます。カズオ・イシグロ『日の名残り』の読み方がとても面白かった。なんか薄々思っててもそこまでは書けなかったことをずばっと書いてくれたというか…。書けなかった理由は自分でもはっきり分かっていて、自分にもそういうとこあるからだと分かってるからです。自分の気持ちや過去を改竄して自分に都合よく記憶してるとこ。なのでそこが抉られるような部分はあんま感想書けなかった。『日の名残り』の感想を書くにあたって、私自身が“信用できない語り手”だったわけです。そういうのを突きつけられた感じがしました。
逆にうーんって思ったのは、伊坂幸太郎について「大学生と話していても「他のは全然読めないけど、伊坂幸太郎はどんどん読めるから好き」って人がけっこういる。」と書いていて、エンタメ作家としてちょっと下に見てる雰囲気が気になったなー。伊坂幸太郎、そんな読みやすくないよ。私はちょっとしんどいです。その前章でファンタジーについて語っていた時の、「現代もそうだと思うんですけど、「悪」ってなんだとなったときに、具体的に作り出したいんだけど、それはとんでもなく大きくて、実は自分もその一部であったということがあったりする。」っていうのをむしろ伊坂作品に感じるんですよね。私は。で、それでも悪と戦おうとする一種のファンタジーなんだと思う。あとファンタジー作品について「中世ヨーロッパ的な舞台のものが多い」と書いていたのですが、私はファンタジーあんまり詳しくないので世界的名作をピックアップしたらそうなるのかもしれないとは思うんですが、でもアラビアンナイトや西遊記もファンタジーですよね?あと日本だったら荻原紀子の『空色勾玉』シリーズは日本神話ファンタジーだし、小野不由美『十二国記』は中華風世界観です。こういうのも“中世ヨーロッパ以外の例”として取り上げてくれたらなぁと思った。
でも全体的にはとても面白かったです。特に太宰治の章では『人間失格』や又吉直樹の『火花』を絶賛してて読んでいて楽しかった。あと『恐るべき子供たち』(ジャン・コクトー)について語ってるあたりで、
早稲田の文学部なんかもそういう感じがある。ずっと子どものままでいようねっていう、文系テーマパークというかネバーランドみたいな(笑)。
と書いてあってとても憧れました。早稲田の文学部って短歌有名だし(俵万智も瀬戸夏子もですよね)、行ってみたかったなぁ。でもガチ文系の人には全然太刀打ちできないなっていつも本読んでて思う。私レベルだとそんな人たちと交わって苦しむのは不毛なので本とはこのまま楽しい距離感でいたいと思います。
ちなみにこの本ではミステリについて「ミステリーってペダンティックな作品が多くて、知に憧れがある人が読むものという一面もある気がします」と書いてます。色んな受け止め方があるんですね。
・桜庭一樹『少年になり、本を買うのだ』
・桜庭一樹『お好みの本、入荷しました』
再読。軽いノリの読書日記です。すごく楽しそうです。他の読書本と違って、純文学からエンタメ本まで大量かつ雑多に登場するので乱読感がとても面白かったです。『デスノート』(大場つぐみ、小畑健)とか『敗者復活』(サンドウィッチマン)とか出てきますからね。『敗者復活』については「同じ一日の出来事を、コンビの二人が交互に一人称で語ることによって、同じシーンでも見え方がまったくちがい、サスペンスフルな面白さもある一冊。」とまで書いてます。すごく読みたくなった。
授賞式やサイン会などでの作家同士の交流についても書いていて、米澤穂信のことを「米澤君」って書いてたりしてちょっとときめきました。あと編集者の人と、米澤穂信の本のタイトルをもじって遊んでたのが笑った。『さよなら傭兵』とか『狛犬はどこだ』とか…。
それから、「ファッション好きな女の人が「生まれ変わったら伊勢丹になりたい」と言っていた」「えー?紀伊國屋書店の方がいい」っていう会話が載っていて、
そのときに付き合ってた子が今のJR奈良駅なんですけどね (伊舎堂仁)
を思い出しました。そっか、そのとき付き合ってた子はJR奈良駅の何かが好きすぎてJR奈良駅に生まれ変わってしまったのか。出会ってから4年の時を経てとても腑に落ちました。
それにしても、編集者や友達との会話は面白いのに、途中で結婚して夫とのやり取りが出てきたら急にはぁ…ってなった。なぜ家庭の中の会話見せられるのってこんなに萎えるんだろう。これは分かりません。編集者や友達との会話だって内輪ネタ感なんですけどね。身内自慢かよってなっちゃうから?これ作者が外国人なら気にならないのかもしれないし、100%受け手(私)の問題なんだろうと思う。いやでも『監督不行届』(安野モヨコ)は全然萎えないしむしろ面白いな。これは2人とも知ってる人だからかもしれない。対談的なものとして読めるのかも。
・都甲幸治『今を生きる人のための世界文学案内』
『米澤屋書店』がきっかけで読書本が気になり次々買ってみたけど、そのうち3冊が都甲幸治の本でした。意識してたわけじゃないんですが、その道の専門家の方なんですね、きっと。最初は高尚な雰囲気にちょっと気圧されていたのですが(というか若干引いてた)、偏見を取り払って読み進めてみるととても面白いです。やはり何事もエキスパートに教えを乞うのはいいものだなぁと思いました。
色々気になった本はあるんですが、『米澤屋書店』と『きっとあなたは、あの本が好き。 連想でつながる読書ガイド』で紹介されているものをすでに30冊くらい買ってしまったので(積読消化月間どうなったって感じですけど…)しばらくやめときます。でも米澤穂信の新刊出てるのでそれは買います。
・商業BL小説と漫画合計5冊
・楠田雅紀『ご主人さまと謎解きを』
楠田雅紀の本は受がポジティブで攻大好きな話が多いので明るいBL読みたいときにいいと思います。ドタバタコメディみたいな内容が多いんですが、今回はそうでもないかな。でも途中で生霊化して、「情報量が多いな…」とか言われてたシーン笑った。
・秋平しろ『トワイライト・アンダーグラウンド』1,2巻
陰キャゲイ×陽キャノンケもの。後半のインコのお面被ったやつがヤバい当て馬かと思いきや全然な展開で笑った。受が不自然にモテて友達だと思ってた人に横恋慕されてたりするような話好きじゃないので、これは友達や関係者たくさん出てきながら特にモテてない(逆に言うと、普通の人間関係が築けてる)とこも好感が持てました。
・丸木戸マキ『僕らのミクロな終末』上下
丸木戸マキはわりと作家買いしてますが、『オメガ・メガエラ』だけは途中で脱落した。これもかなり長い事積んでたのですが、ドラマ化してるんですね。攻のクズっぷりが面白かったし受がモテてなくて普通に友達いたりしてたのはよかった。世界が終わるとしたら自分はどうするかなぁって考えるよね。多分食糧があるうちは普通の生活するな…。普通に仕事行くな…。最後ハッピーエンド風でしたけど普通に世界終わっちゃった方が面白かったなーとか思ったり…。結局遊馬の謎はなんだった??あとめぐるは女の子だった方がよかったなぁ…。総ホモ化反対派なんで…。LGBTQしか出てこないじゃん。橋本くんまでホモじゃないこと祈るわ…。続編?おまけ?出てるらしいですがそっちはまだ買ってないです。
商業BLの積読はだいぶ消化した!少年漫画が山になってるけどそれはしばらく置いておく…。
何も予定なくて読書に集中できる日が1日でもあればなぁ…。欲を言えば1週間くらい…。絶対無理だけど。