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04x07 - Honor Among Thieves 感想

 POI感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

 タイトルはno honor among thieves (盗人に仁義はない)から。実際、トマスは6年組んだチームにあっさり裏切られてます。おそらくタイトルの意味合いとしては、トマスだったら金を積まれてもウイルスは盗まなかったはずだ、という展開からでしょうか。

 

 前回「ショウの一時降板は仕方ない」と書いたし実際そう思ってはいるのですが、今回ショウ離脱の前触れとなるエピソードで、もうリース&フィンチの回がずっとないのでまたかあ…、って思っちゃったよ。S4になってから、E1E2くらいじゃない?リースとフィンチが一緒に仕事したの。あとはE4でちょっとくらいか。

 

 まあ、今回はルート&ショウメイン回です。S1S2でリースとフィンチがやってきたことをルートとショウがなぞってるようなシーンが何度かありました。

 対象者のトマスが好みのタイプだったようでテンション上がっていくショウと、イヤホン越しにちょっかいかけるルート。トマスとショウの距離が近づいていくとルートがいちいち介入するシーンはS1E18のフィンチとジョーダン(偽)に割り込むリースみたいだったし、トマスとの会話中ルートの通信を遮断するショウに、S2E5でリースがマキシンを口説いてたシーン思い出した(まあ、あの時はフィンチはサポートしようとしてたので意味合いが違いますが…)。

 

 それにしてもショウの肉食女子っぷり面白かったです。トマスの下半身を激写しながら、「あたしが興味あるのは、彼の…、そう、“人格”ね」って(笑)。フィンチは「そうだろうね」と返しますが、写真はリアルタイムで共有されているのでしょうか??リースが若干引き気味なのも笑った。

 トマスが強盗団の一員だったことが分かり、ショウはロミオの推薦を装って内部に侵入します。強盗団の身分は時々役に立ってるが、化粧品のカウンターの方はよく分からんな。

 ショウがトマスと接触するシーンの会話、色っぽくて好き。

 

But I'm not the kind of man who likes to rush.

でも俺は急ぐのが好きなタイプの男じゃないんだ

A perfectly planned job is a kind of seduction.

完璧に計画された仕事は誘惑に似ている

Hours looking, wanting, turning your target around in your mind.

何時間も見つめ、望み、心の中でターゲットを振り向かせる

And then... you move closer, brushing past, making contact just to see what will happen.

そしてそれから…、近づき、すれ違い、何が起こるのかを確かめるためだけに接触する

And when everything's ready and when everything is right, all of that preparation pays off in one sudden, intense, crashing moment.

そして全ての準備が整い、全てが正しくなったら、全ての準備は報われる…、ある一つの、突然で、強烈で完璧な瞬間に

 

 こんなセリフで美男美女がバーで見つめ合っているのでときめきましたが、気が気でないルートも面白かった。「あなたを傷つける奴は許さない…、あ、私以外ね♡」「彼って素敵だけど…」とかごちゃごちゃ話しかけて電話切られちゃう(笑)。ルートのショウへの愛は報われなさも萌えなんで…。ルートごめんね!

 

 強盗団になりすまして一緒に強盗をするのですが、盗み出したものは宝石ではなくてウイルスでした…。「デートはどう、ショウ?」と聞くルートを無視して、

 

Something's wrong here, Finch.

何かがおかしいよ、フィンチ

Something's wrong indeed.

実際、おかしいようだ

 

という2人の会話が好きです。で中身がウイルスだと分かった時のフィンチの台詞が、

Oh, dear, this is bad. This is very, very bad.

と、普段の語彙が消失しているのも笑える。

 

 この後の状況は複雑です。トマスはそうと知らずにウイルスを盗み出す役割をさせられ、仲間に殺されそうになりますがショウが助けます。でも、その後、トマスを裏切った仲間は全員殺されていた。元々の依頼主を探すうち、かつての仲間で死んだと思われていたマルコが黒幕であることが分かる(ただしマルコがなぜウイルスを欲しがっていたのかはよく分からない)。それを追う間に、危険なウイルスを持つマルコがテロリストとしてサマリタンに検知され、「有用」側のエージェントが動き出します。

 フィンチは、「有用側のエージェントがウイルスを片付けてくれるなら任せた方がいいのでは」と言いますが、ショウは反対します。「あたしはあいつらのやり方が分かってる。マルコの後は関わった全員が殺されるよ。あとはトマスだけだ。それに、ウイルスが政府かサマリタンの手に渡る」。ショウの説得で、トマスを助けるためにウイルスを保管している金庫室に侵入することになり、そこで全員が激突します。

 リースの援護もあり、ウイルスを確保してトマスを助け、離脱しようとするショウ。そこで政府側のエージェント、クリムゾン6アルファ(グライス)に見つかります。彼はかつてショウが育てたエージェントだった。彼はサマリタンの一方的なやり方に不満を募らせており、マシンの時代とショウを懐かしく思っている。彼女がウイルスを確保しているのを見た彼は、ショウを見逃してくれます。でもこの時「ショウ?」と呼びかけたこと、サマリタンの監視下にある政府側のエージェントが犯人ごとウイルスを見逃したこと、その映像を消そうとしたこと、全てが怪しまれ、サマリタンによってショウが発見されるきっかけを作ってしまう――、というストーリーでした。

 

 ショウとトマスの最後の会話を見て、色々考えてしまった。

 

You, me, Barcelona.

君と俺、バルセロナ

Score worth 1.6 mil.

160万ドルの仕事

You sure you won't come?

本当に来ないのか?

You, me, here, no pay.

あんたとあたし、ここで、無報酬で

We both eventually wind up dead.

二人とも最後には死んで終わる

Are you sure you won't stay?

本当に残らないの?

 

 ショウが彼に言ったのは、かつてフィンチがリースに言った言葉です。

「残ったら?」「遅かれ早かれ、二人とも死んで終わるだろう」

 これをこのタイミングで言うのは、ショウは一体誰に語り掛けているんだろう、って思った。まさかトマスに言ってるわけじゃないだろうし。Youは相手が一人でも複数でも使える表現ですが、We bothっていう言い方からすると、私とあなたの「2人」です。誰か、一人の相手に向かって呼びかけている言葉だと思う。

 この台詞の後アップになるのはフィンチですが、フィンチに言っているのかなあ。ここでのフィンチは、「ショウさんとコロアさんが離脱する、ジョン」とリースに呼びかけます。内容的にも、リースとフィンチの2人のことを重ねているのは間違いないと思う。この台詞は最初にフィンチがリースに言った台詞であると同時に、「無報酬で」っていう状況になったのはS4だから、S4の冒頭でリースがフィンチと一緒に仕事を再開したくて熱心に誘ってた状況にも重なります。

 

 ここでショウがこれを口にした相手はやっぱりルートだったんじゃないかな、って思う。

 

 ルートはショウとトマスが会話している間、割り込んでこんな風に言います。

 

He is hot. I mean, not "hood and zip ties in a CIA safe house with ten hours to kill" hot, but...

彼ってセクシーよね。つまり、「CIAのセーフハウスで目隠しと結束バンドをつけて、10時間以内に殺す」ってほどはセクシーじゃないけど、でも…

 

 つまり、今まで私と一緒にしてきたことの方が楽しかったでしょ?ってショウに呼びかけてる。最後にショウはこう返します。

 

He gave me a pretty hard sell, trying to get me to go with him, and for a hot second, I almost did.

彼に、一緒に行こうってすっごく強く引き留められたし、あんなホットな状況だったし、ほとんどそうしそうになったよ

I guess there are things I care about here.

でも大切なものがここにあるから

 

 好みの男に「バルセロナへ行こう、俺と君とで160万ドルの仕事」と誘われたけど、「あたしはここで大切な人と、いつか死ぬ危険な仕事を無報酬でする」と、ルートがイヤホンの先にいること知ってて言ったんじゃないかなーって思った。このエピソードではかつてのリース&フィンチのやり取りがルート&ショウで繰り返されてるから、そういう意味でもショウが語りかけた相手はルートだと私は思います。

 それにしても「いつか必ず2人とも死ぬ。残る?」って聞いた側(フィンチとショウ)が生き残って、相手(リースとルート)が死ぬのって皮肉な展開だと言わざるを得ないのですが…。

 

 本筋の一方で、フィンチはルートともう一件犯罪行為してます。E05でサマリタンによって繰り上げ当選させられた州知事が、あるプロジェクトに多額の予算をつけたことが分かる。調べるうちに、それは「児童一人にタブレット端末一台」の計画であることが判明します。サマリタンによる全児童の監視と、端末にインストールされている教育用アプリによる洗脳がその目的だと考えた2人は、この事業所に侵入して電子機器をショートさせて火災を起こし、計画を頓挫させます。でもフィンチには後悔しか残らなかった。

 

While I was sabotaging the printers, I took a quick look at the tablet's OS.

私が3Dプリンターを破壊している間、タブレットのOSを少しだけ垣間見た

There was maybe one suspicious line of code, and I'm not even sure it had any nefarious purpose.

一つだけ怪しいコードの行があったが、本当に悪い目的だったのか確信がない

Harold, you really think Samaritan was building those things out of the goodness of its own heart?

ハロルド、あなたは本当に、サマリタンが心の底からよい事をしようとしてこうしたと思ってるの?

When Castro was coming to power in Cuba, the first thing he did was build schools, good schools, so that the people would love him.

カストロキューバで力を持ち始めた時、彼が最初にしたことは学校を作ることだった。よい学校を。人々が彼を愛するように

I know that Samaritan's motives are amoral at best, but the thing that Mr. Wilkins was trying to do was an absolute good, and we destroyed it.

サマリタンの動機は不道徳かもしれないが、ウィルキンスさんがしようとしていたことは間違いなく善行だ、そして我々はそれを破壊した

I'm not sure what we're becoming, Ms. Groves, and it does make me wonder...

我々が一体何になろうとしているのか自信がないよ、グローブスさん、そして考える…

How much wrong are we willing to do in the name of right?

正義の名のもとに、我々はどこまで間違ったことをしようとしているのだろうと

 

 そうなんだよねー。ウィルキンスさん、めっちゃいい人っぽかったから本当にやるせなかった。この人幼い息子を抱えたシングルファーザーで、仕事をやめてこのプロジェクトに専念してて、かなり一生懸命やってたのに、ほんとかわいそうでさぁ…。

 しかもこれに関しては、ここで一つの企業を潰したところでどうなるの?って感はありますし…。実際、今や児童一人に一端末は日本ですら常識になってるし、ここでこの人の事業を潰しても時代の流れには逆らえないような…。しかももっと残念なのは、もしS3までのフィンチだったらウィルキンスさんを自ら雇って、きちんと自分でコードをチェックしたOSを入れて、新たに計画を実行させてあげることだってできたはず。でももうサマリタンの世界ではそれはできません。お金もないし、どちらにせよそれをやってしまえばサマリタンがタブレットを通じて児童を監視することを止められないから。

 自分のやっていることは本当に正しいのか、って思ってしまうの分かるよ。実際、前回は女性を騙してPCにトラップを仕込み、今回は一企業に侵入して火災を起こし、ですからね…。言い逃れようもなく犯罪者です。

 

 今回はフィンチが犯罪に関与しまくることを苦しんでいるシーンがつらかったです。ショウがホテルから宝石だと思ってウイルスを盗み出してきたシーンでは、

 

Well, we have yet to prevent a murder, but we can add another grand larceny to our list of accomplishments.

ああ、私たちは殺人は防がなくてはならないが、我々の業績リストにもう一つ重窃盗を加えることができたな

 

と言っていて、さらに金庫室に忍び込むシーンでは

 

Fine, we'll commit your felony.

分かった、君の重罪に手を貸そう

But unfortunately, I have another criminal act to attend to first.

だた不運なことに、私もまずはもう一つ実行しなくてはならない犯罪行為がある

 

と言ってます。

 S3後半から閉塞的状況が続いてるので、もっと明るいネタないんかな。前回の「スーツの男」パロディネタがそれだった??いや、もっとフィンチの精神的苦悩が少ない回はないの??サマリタン編にシフトしたS3E11 Lethe以降だと、S3E14の窃盗回、E15の“声の男”回とS4E04のギャング回くらいじゃない?

 フィンチとルートの会話で面白かったの、これくらい。

 

I don't want to rush you, Harold, but I think Samaritan's onto us.

あなたに急いでほしいわけじゃないんだけど、ハロルド、サマリタンが私たちに気付いたみたい

Surprisingly, Ms. Groves, that does not help me concentrate.

驚くべきことに、グローブスさん、それは私の集中を助けてはくれないようだ

Harold, I'm about to do something you're not gonna like.

ハロルド、私はあなたが好きじゃないようなことをしようとしてるわ

No need. I'm done.

その必要はない。終わった

 

 凄腕ハッカーのフィンチが好きだけど、ずっとスカッとしない話が続いてて辛気臭いです。「人助けはうまくいったけど、デシマ/サマリタンに出し抜かれた」ってパターンがもうS3後半からずっと続いてて、しかもリース&フィンチのバディ体制も見られないし、ストーリーとしてつまらないわけではないのですが、萌えが…。足りないよ…。

 

POI:トマス・コロア(被害者)

本編:2014年11月11日前後(金庫を盗んだ時の花火が「退役軍人の日」だったので)

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